このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.10.24
07228819.jpg美森青「シーイズマイン」(1)


友達いっぱいできたらうれしいけど
でも
あたしのままじゃなきゃイミないじゃん?



■10年来の幼なじみである、ハルと遼太郎。性格も女の子の好みもまるでバラバラだけど、何故かいつも一緒につるんでいる腐れ縁の仲。同じ高校に進学することになった2人は、そこで美少女・中川美礼と出会う。その容姿におもわずハルは釘付けになるが、その外見とは裏腹に、彼女の性格は超がつくほどの天然…「処女じゃありませんけど、よろしくおねがいします」「人類の歴史はね、セックスの歴史なんだよ」そんな言葉を、微塵も恥ずかしがる事無く言い放つ彼女に、2人はなぜか好かれてしまい、気がつけば振り回されっぱなし!?

 「B.O.D.Y.」(→レビュー)の連載を終了後、新たに始まったのがこちらの作品。今度のヒロインは、何を考えているのか全く分からない、不思議系ド天然娘です。お話の主人公になるのが、幼なじみの男の子2人組、ハルと遼太郎。至って真面目で押しに弱い遼太郎に対して、ハルは明るく活発で要領のいいちゃっかり者という、正反対の性格の持ち主。女の子の好みもまるでバラバラで、遼太郎は真面目な雰囲気の子を好むのに対し、ハルは見ため重視で惚れっぽい気質。そんな2人が高校で出会ったのが、ハルの好みど真ん中の美少女・中川美礼。早速興味を示すハルでしたが、その見ためとは裏腹に、一挙手一投足ごとに周囲を困惑させるド天然娘だということが判明。さらにあろうことか美礼が2人に興味を持ってしまい、美礼の言動に散々振りまわされることになります。


シーイズマイン
天然というか、見たこと聞いたことを素直に受け取ってしまい、そのまま外に出すみたいな、極端なイノセンスさを持っている。そのためか、恥とか外聞を気にするとか、そういう方向には全く注意が働かない。

 
 これはどういった需要を予測してのことなのでしょうか。いや、個人的にはもの凄く興味がひかれたのですが…。まずヒロインである美礼が、対人スキルに難アリの天然少女で、感情移入を許しません。一応やや暗そうな背景を用意して、今後感情移入の余地を作っていくであろうことは予測されるのですが、現時点では「なんなんだ…この人…」の域を出ず、感情移入の受け皿としての役目は男キャラ2人に託されることになります。少女漫画で男キャラを主人公に据えるというのは、かなり勇気が要ると聞いたことがあるのですが、さらに女キャラに感情移入の余地を用意しないという、思い切った設定。男の子2人組も、どちらかというとハルは少女漫画の相手役的なキャラを地でいっており、感情移入するならば遼太郎一択になるのかなぁ、という印象。果たしてここからどう各キャラを描いていくのか、非常に楽しみです。とりあえずは、美礼の人格をもっと紐解いていって…というキャラ形成的な流れと、ハルが美礼に惚れてしまい、その気持ちを美礼と遼太郎はどう受けとめるかという恋愛方面での流れがあり、どちらも2巻以降でギアが上がってきそうな気配。ここで「何これ…」と見きっちゃダメ、答えを出すのはまだ先でも遅くないです。というか1巻時点でも十分気を惹く作りにはなっていますけどね。
 
 この雰囲気、なんとなく真崎総子先生の作品っぽいイメージ。あちらはデザートということでかなり下世話な雰囲気が強いのですが、こちらはそれを別マにフィットするようにややお上品にした印象。まぁ、何を言いたいかというと、不思議な面白さがあるということです。どう着地するかはわからないですけど。案外三角関係でぎゃーぎゃーみたいなところに落ち着いてしまうかもしれないですし。とりあえずは追いかけてみようと思います。


【男性へのガイド】
→男の子視点はプラスか。ただこのヒロインをどれだけ受け入れられるかで、この作品の評価はかなり変わってきそう。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→1巻は様子見という感じ?なんてことない所に着地しそうな気もするものの、特異なキャラ設定で展開させる物語に、強く興味を惹かれたことも事実。追いかけます、はい。てかなんだかんだで美森先生好きなんだろうな、私。


作品DATA
■著者:美森青
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット(平成21年5月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「別冊マーガレット」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。