
今はただ祈り
待とうじゃありませんか
■2巻発売しました。
かつてこの国には四匹の凶神と、八百万の神が存在していた。しかしその悪神が二つの山を沈め他国へと逃げて以来、八百万の神もまた消え去り、そのあとは偉人たちが神の代わりとしてこの国を守り続けてきたという。しかしそれも限界が近づいていた。失われた神を取り戻さなければ、やがてそう遠くない日に、この国を支える山がすべて崩れ落ちる…。神話のなくなったこの国で、失われた神々を取り戻すため、人々は歌士官にその命運を託す
「あまつき」(→レビュー)をZERO-SUMで連載中の高山しのぶ先生ですが、こちらはZERO-SUM増刊WARDでの連載作品になります。「あまつき」は、異世界(バーチャル?)と現実世界を繫ぐ物語ですが、こちらも異世界と現実世界が繋がっている舞台設定となっています。主人公の住む世界には、神様がいません。正確には、いたけれど逃げ出してしまった。神がいなくなり、人間だけで国を保ってきましたが、その雲行きが怪しくなってきた。そこで逃げ出した神々を連れ戻すために、歌士官という職業をつくり、異世界へと送り込んでいます。そんな歌士官の一人が、主人公である一葉。歌士官のなかでもとりわけ強い力を持つ(だけど使いどころが難しい)一葉は、外からの神が集まり定着しやすいとされる日本に送り込まれます。

普段は「できそこない」と揶揄されている。昼行灯とかいうわけではなく、それにはとある理由があるからなのだが、普通の仕事を満足にこなせないのはまぎれもない事実。
神様をつかまえるといっても、歌士官は戦闘を行いません。主に戦闘を行うのはひき従えている神で、歌士官は舞や唄で神様を捕まえます(というか交渉する)。そんな一葉は、その力が強すぎるため、一度力を発すれば力のない神は一瞬で吹き飛んでしまいます。そこで任ぜられたのが、最も捕まえたい神である、逃げ出した凶神。言ってみれば彼は、大物専用のハンターというわけで、普段はできそこないと揶揄されています。しかし本人はそんなことはまったく意に介していない様子で、あくまで自分のペースで仕事にあたります。そんな一葉と一緒に行動するのが、中級神の滇紅と花果。どちらも普段は頼りない姿(気の弱い少年,幼女)をしているが、一度力を発すれば、途端に力の強い神としての姿を現します。どちらも扱う神としては上位に位置するようで、他の歌士官とは一線を画します。
「あまつき」はかなり様々な要素を盛り込んで、長期化していますが、こちらはキャラ設定・舞台設定などに多少の作り込みは見られるものの、目的は至ってシンプル。要は神様を見つけ出し、国に連れて帰ればOK。さらに、土着の神様が出雲に向かっている神無月の間がチャンスで、そこを狙って送り込まれるなど、期限付きだったりと、おあつらえむき。ただそういった明快さはあるものの、キャラクターや舞台背景はかなり難解で、簡単に理解するのは難しいです。また物語に引き込む強さも、「あまつき」に比べるとやや劣るかな、という印象。
【男性へのガイド】
→これはどうなのだろうか。ジャンルで言えば男性も超OKなのでしょうが、やっぱりなんだかんだで女性向けの感が強いかな。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→どうしても「あまつき」と比べてしまうのですが、そうするとやっぱりトーンダウンした感は否めないです。ちゃんと作られてて読み応えもあるんですけどね。
作品DATA
■著者:高山しのぶ
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM WARD(平成20年No.1~連載中)
■既刊2巻
■価格:各552円+税
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