このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2009.10.27
07228963.jpg心あゆみ「危険地帯男子」(1)


こわいのか
やさしいのかわからないこの人に
どうしようもなく惹かれるの



■高校生になって3か月。恋のウワサの一つや二つあってもおかしくない年頃なのに、学校→スーパー→自宅の3カ所にだけ決められたように通う彩月は、そんな事とはとことん無縁。ごくごく平凡で、堅実な毎日を過ごしていた。ところがある日、危険な男子高「黒帝」と「白羽」の緩衝地帯にウッカリ入り込んでしまい、襲われそうになる。そんな大ピンチの彩月を助けてくれたのは、一人の見知らぬ男の子。怖いのか優しいのかわからない彼に、どうしようもなく惹かれる彩月だったけど、実は彼の正体は、不良校・黒帝のリーダーで…!?

 不良が集う危険な高校「黒帝」、そして軟派なインテリが揃うこれまた危険な「白羽」。その両校には、それぞれ「黒の王」「白の王」と呼ばれ君臨するリーダーが存在する。おっして偶然にも黒の王と出会い、恋に落ちてしまったヒロイン・彩月と、それを見て彩月に興味惹かれる白の王…。という感じのお話。簡単に言えば犬猿の仲の高校のリーダーに好かれてしまい、どうしようという三角関係ものです。とにもかくにも少コミの中二病的な側面を強く押し出したようなキャラ設定にストーリー。考える恋愛の対極としての“感じる恋愛”が少コミのスタイルだと思うのですが、これはまさにそんな感じる恋愛を極限まで特化したような作りになっています。


危険地帯男子
ヒロインはとにかく自分の気持ちに正直。このへんも少コミのヒロインスタンダードという感じ。


 まず驚くべきは、心あゆみ先生のデビュー時期。デビュー作掲載が、Sho-Comi増刊号の2008年12月15日号。デビューしてまだそれほど経っていないにもかかわらず、もう巻数付きの作品ですよ。Sho-Comiはサイクルが早いとはいえ、これは異例とも言える早さでは。人気があると言うことなのか、はたまた編集サイドが猛プッシュしているのか。とりあえずレギュラー定着は早そうですね。

 不良の黒の王と、インテリの白の王。その間で揺れる、ごく普通のヒロイン…という構図を狙っていると思うのですが、現時点では圧倒的に黒の王優勢。不良でかつ黒を謳っておきながら、その内面は実にピュア、ある意味ではステレオタイプな番長設定とも言えますが、なんだかんだでこういうキャラは好感が持てます(たぶん)。それに対し、白の王はその外面とはちがい、黒いものを内面に持っているという設定。それぞれのこのギャップに萌えろ、と。ただ白の王に関しては、まだまだ描写不足。対等な関係から、本当に好きな方を選び出すほうが俄然盛り上がると思うのですが、その辺は2巻にて描かれるのでしょう。しかしながらジェットコースターのような物語展開ですね。目まぐるしく人と心が動き回ります。それが持ち味とも言えなくもないですが、少々唐突すぎる気も。個人的に、今ひとつ物語展開が飲み込めないままに流れていってしまいました。たぶんこの辺は、詰め込みすぎや設定ミスというよりも、作者さんのスキル的な問題が大きいのかも。これからです。


【男性へのガイド】
→これは厳しいのではなかろうか。男性が嫌う少コミライクな物語をまさに体現しているわけで。
【私的お薦め度:☆    】
→感じる恋愛を地で行く少コミ作品はやっぱり苦手でして。物語に引き込む新しさや上手さもまだまだという感じが。


作品DATA
■著者:心あゆみ
■出版社:小学館
■レーベル:Sho-Comiフラワーコミックス
■掲載誌:Sho-Cimi('09年第13号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「Sho-Comi」コメント (1)トラックバック(0)TOP▲
コメント

すごく、おもしろい本です。
From: カテ * 2010/04/25 13:42 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。