
あたし やっぱり
あの人が好きだ
あの人に 好きになってもらいたい
■高校の入学式の日、気分が悪くなった私・新奈を助けてくれた、特進クラスの古閑くん。普通クラスの自分にも、対等に優しく接してくれる彼に、すっかり夢中になってしまった私は、思い切って告白をすることに。ところが想いを伝える前に「誰かとつき合うって事に興味ない」と牽制されてしまいます。それでも諦めきれなくて、「お試しで」と提案したところ、「おもしろそう」とOKをもらえて、今に至るのですが…。ちょっぴりSな古閑くんに、翻弄されっぱなしの毎日で…!?
最初に言っておきましょう。読切りの名手・うさみん、ついに覚醒いたしました!といっても大変身したとかではなく、読切りで見せるクオリティの高さを、長編連載でも再現してきたという意味です。これまで何度か連載をしたものの、読切りで見せるポテンシャルを発揮できずにいたうさみんですが、ここにきて原点回帰の等身大の恋愛を描き、本来の持ち味を発揮。やっぱりうさみんは、普通の男女を描いてこそ輝くと思うのです、はい。
さて、お話の主人公になるのは、ごく普通の高校生・新奈。入学式で気分が悪くなったところを、保健室まで連れて行ってくれた特進科の男の子・古閑くんに、なんとなく好意を覚えます。その後も何度か会話をするのですが、その度に優しく親切に接してくれる彼に、気持ちは加速するばかり。ついに告白に向かうのですが、伝える前に牽制され、言えず終い。しかしそれでも諦めきれない彼女は、「お試しで」と提案することで、なんとかつき合ってもらうことに成功。これから不器用ながらも徐々に距離を…と思っていたら、古閑くん、その優しげな見ためとは裏腹にSっ気のある男の子で…!?というお話。とにかく無垢なヒロインが、Sっ気のある彼に翻弄される様子に、ニヤニヤが止まりません。

ああああああぁぁぁぁ、なんて甘い…。初恋の喜びや切なさを、余すこと無く届けます。
Sと言っても、オレ様男子のような単純ワガママなキャラではなく、優しく相手の困るような提案・行動をとって、彼女の慌てふためく様を見て楽しむという、やや高等なラインでSっ気を発揮する類いの男の子。笑って許せる程度のイジワルなので、見ていて不快感を感じるなんて事は全く無いのでご安心を。この「手のひらの上で彼女を翻弄…」というキャラ、見覚えがあると思ったら、先生のオムニバス集「春行きバス」(→レビュー)の「エモーショナル・エンジン」に登場した本宮くんですね。彼もまた、成績優秀・眉目秀麗な好青年で、Sっ気ありという。そんな本宮君の相手だったのは、恋愛経験豊富そうに見せてその実まったくの恋愛初心者という女の子。その空回りっぷりがなかなか面白かったのですが、今度のヒロインはまったくのウブな普通のヒロイン。そのためヒロインサイドでの笑いでは若干見劣りするものの、その分感情移入がしやすなっており、またSっ気男子・古閑くんの魅力も存分に発揮させることに成功しています。
S系男子に翻弄される楽しさと、お試しではなく、本当の彼氏彼女になる…という2本軸での展開。その二つは要素としてセパレートされているわけではなく、実に自然に物語の中に溶け込んでいます。とにかく初恋の初々しさと、その有り余る程の甘さで爆発しそうです。普通だからこそ、この甘さが効いてくるわけで、ニヤニヤが止まらない。S系男子に翻弄されるヒロインに心重ねて楽しむもよし、無垢な彼女を翻弄する相手役に心重ねて楽しむもよし、またなんだかんだでイチャイチャしまくりの二人を俯瞰で見てニヤニヤするのもよし。ピュアで甘い恋物語が好きな方に、全力でオススメ。
【男性へのガイド】
→このスタンダードさは、ある意味男性向きと言えるかも。イチャイチャラブが好きな方など、いかがでしょう?
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→相変わらずインパクトにはやや欠けるものの、先生に求められてるのはそういう話ではないわけで、これで十分。高クオリティで安定感のある、甘さに溢れたラブストーリー。オススメですよ~。
■作者他作品レビュー
【名作ライブラリ】宇佐美真紀「春行きバス」
宇佐美真紀「恋*音」
作品DATA
■著者:宇佐美真紀
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ('09年6月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon