このエントリーをはてなブックマークに追加
2009.11.01
31925522_20091101020335.jpg片桐美亜「胡鶴捕物帳」(1)


ヒーロー気取り?
はっ!別に気どっちゃいねェよ
ヒーローだもん



■6巻発売。
 派手な着回しの侍・胡鶴は、唐辛子が大好物の藩主の息子。形にとらわれない破天荒な性格の持ち主で、もっぱらの趣味は悪者退治。父親から悪党の情報を仕入れては、腕の立つ仲間を引き連れて現場に潜入。そして華麗な手さばきで悪党を退治!「侍の刀は人を守る道具」を信条に、今日も唐辛子をくわえながら胡鶴が暴れ回る!
 
 ビーンズエースの人気連載、6巻の登場です。お話の舞台となるのは、江戸時代のとある藩。そこの藩主の息子・胡鶴が主人公。藩主の息子という身分でありながら、そこに固執しない破天荒な性格の持ち主である彼は、唐辛子と悪党退治に目がありません。忍者の錆、クールなメガネ侍苑兎、そして紅一点の藍。それぞれ腕の立つ仲間と共に、父親から伝え聞いた悪党を懲らしめます。基本的に「侍の刀は人を守るためにある」と考えている胡鶴は、懲らしめるだけで、命を取ったりはしません。それに対し、「刀は人の命をとるためにある」と考える旗本が登場したりと、人物は様々。


胡鶴捕物帳
主人公自身も強い。正義は勝つという、わかりやすい明快なお話です。


 スタイリッシュ江戸時代勧善懲悪活劇とでも言いましょうか。時代物とはいってもリアリティを求めているわけではなく、普通にメガネは登場しますし、主人公もロザリオしてたりします。こういう演出は角川や一迅などでしばしば見かけられるので、気にしないように。さて、このお話ですが、例えるならば「水戸黄門」でしょうか。巨大な敵がいて、それを討伐する…という話ではなく、あくまでその時その時で敵を倒し、スッキリするという方向。主人公を始はじめ、討伐仲間はみな腕が立ちますし、危機に陥ることはあまりありません。また藩主の息子ですので、自由に行動できるという特権が。そのため物語に重みはないものの、その軽さが奔放なキャラたちに上手くマッチし、いい意味でライトに楽しめる、爽やかな作品に仕上がっています。
 
 主人公は自分のしていることを頑に「正義だ」と信じ、自分のことを「ヒーローだ」などと言ってしまうわけですが、個人的にそういうキャラが苦手だったり。いや、物語の性質を考えると、こういう設定で致し方ないですし、そういうのが魅力なんですけど、このあまりにはっきりした「正義対悪」という構図が、どうにも。水戸黄門は爺さんだから納得だけど、こっちは16の少年。その青臭さがさ…。ハリー・ポッターとかも、正直見てて苛ついたりするんですよね。いや、これはもう個人の好みの問題。これを素直に認められない私は、きっとどこか歪んでしまっているのでしょう。


【男性へのガイド】
→角川にはこういう男女向け限らずこういう作品結構ある気がします。したがって読みやすいはず。ライトなぶん取っつきやいのでは。
【私的お薦め度:☆☆   】
→いい意味でライト、悪く言えば薄味な、水戸黄門的スタイリッシュ活劇。ホームランはないけれど、コツコツ単打で…というイメージ。個人的な好みは置いておいて、素直に評価してこのくらい。


作品DATA
■著者:片桐美亜
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKA COMICS DX
■掲載誌:ビーンスエース(2006年Vol.3~)
■既刊6巻

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「ビーンズエース」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。