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Tag [オススメ] 2009.11.02
07103682_20091102001134.jpg小畑友紀「僕等がいた」(1)


彼はその時 まだたったの15歳で
そして今 まだほんの16歳で
支えなければならない現実は
いつも彼の体より大きい



■13巻発売しました。
 「友達たくさんできるといいな…」そんな期待と不安を胸に、高校生活をスタートさせた高橋七美。なんとかクラスメイトの女子たちと仲良くなると、今度は彼女たちが口々に噂する、同じクラスの一人の男子の存在が明らかになってくる。矢野元晴ーー女の子の3分の2は必ず恋に落ちるという、モテモテの男の子。その存在感から、すぐに矢野のことがわかった七美だったけど、ふざけてイジワルしてくる彼に、どちらかというと苦手意識を持ってしまい…
 
 待ちに待ったよ、この時を。12巻の発売から、実に2年以上のブランクを経て、13巻の発売。休載が長引いたときは、もう再開しないまま終わるのではないかとさえ思ったこの作品を、こうしてレビューできるだけで私は幸せです。
 
 ベツコミの顔ともいえる、人気青春ラブストーリー。ヒロインは、ごくごく普通の高校1年生・高橋七美。高校生活を、期待と不安に包まれながらスタートさせた七美は、女の子の3分の2は必ず恋に落ちるという超絶モテ男の矢野元晴と同じクラスになります。最初は特に意識する事無く接しようとする七美でしたが、こちらが真面目に対応しているのに、ふざけてイジワルばかりする矢野に、苦手意識を持つように。しかしその想いは、彼のふとしたときに見せる優しさを垣間見る度に、真逆の「気になる」という想いに変わっていきます。そして…という流れ。こうやって書くとなんてことない物語ですが、そこは作者さんの筆力の違い。とにかく切なく色鮮やかに、物語を描いてきます。


僕等がいた
絵が上手いというわけではない。間の取り方、話運び、そして気持ちを浮き立たせるモノローグで、どこまでも物語を魅力的に彩る。


 物語のメインを構成するのが、4人の登場人物たち。さきほどのヒロイン・七美。そしてモテモテの矢野。そんな矢野の親友である、竹内くん。そして七美のと矢野のクラスメイトである山本さん。この作品の肝はどこにあるのかというと、矢野の元カノの存在といえるのではないでしょうか。矢野が中学のときにつき合っていた彼女は、交通事故によって亡くなっており、そのことが今も矢野の心に影を落としています。さらに元カノは、同級生の山本さんの姉という設定で、さらに物語をねじれさせていきます。そこにヒロインである七美が関わっていくわけですが、やはり話は重苦しい方向へ。この作品の一番の魅力は、その切なさにあると思うのですが、それが時に過剰な重苦しさを招いてしまうことも。ただそれを吹き飛ばすだけの感動があります。言ってみれば不幸を上手く活用しているわけで、その手のお話が好きな方には、もうもってこいではないでしょうか。Sho-Comi作品を感じる恋愛とするならば、こちらはベツコミライクな考える恋愛を非常に強く押し出したような作品。まぁ完全に私好みということですよ、はい。
 
 さて、何がスゴいって、ここまで書いておきながら、この作品の魅力を1ミリも引き出していない気がするという(笑)でも説明するの難しいんですよ、ホントに。もう丸投げでキーワード提示するなら、「重い」けど「切ない」。社会人編に突入して、それにますます拍車がかかってますが、とりあえず高校生編は良い分量でそれらがミックスされているのではないかと。そんな私は、高校生編で見事に切なさマックスで完結したアニメ「僕等がいた」が大好きだったりします。アニメの七美はかわいさ2割増。かなりキレイなまとめ方をしていると思うので、気になる方はそちらもチェックしてみてはいかがでしょうか?
 
 この作品についてはネタバレしながらもいろいろ書きたいことがあるので、後々記事をアップするかもしれません。とりあえず竹内くんの不遇っぷりに関しての記事を書きたい所存でございます。竹内君好きなんですよ。矢野はいうなれば天才型で、竹内君は努力型の人。男的には、少しでも近い竹内君に肩入れしたくなるんですよね。また山本さんの嫌われっぷりについても書こうかな、と思ってます。既読の方は、もしアップされた際「しょうがないわね…」なんて感じで読んでいただければ幸いです。あれ、なんだこの終わり方。


【男性へのガイド】
→男女というよりも、個々人の恋愛観が大きく関わってくるように思います。これ大好きな男友達もいますし、これが大嫌いな女友達もいたりするので、かなり触れ幅が大きそう。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→これをレビューしたくてこのブログを始めたきらいもあるのですが、まったく良い記事が書けなかった…orz 作品が持つ力は、テーマが恋愛一本の少女漫画でも随一。不幸せな切なさと、報われた時の感動、相手を想う気持ちに溺れたいという方に、全力でオススメ。


■作者他作品レビュー
小畑友紀「きみの勝ち」
小畑友紀「スミレはブルー」
小畑友紀「スミレはブルー」レビュー続編(既読者向け)


作品DATA
■著者:小畑友紀
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ(2002年5月号~連載中)
■既刊13巻

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「ベツコミ」コメント (4)トラックバック(0)TOP▲
コメント

まぢで竹内君かわいそう・・・

ここの登場人物はみんな人のこと考えすぎだよねw

From: ぼー * 2009/11/03 09:57 * URL * [Edit] *  top↑
ただ竹内くんは可哀想だからこそ素敵でもあるわけで(笑)

考えて我慢するからこそ、この作品の切なさが増すんでしょうね。だから自重しない山本さん(妹)は、必要以上に嫌われがちという。
From: いづき * 2009/11/03 12:41 * URL * [Edit] *  top↑
はじめましてm(__)m


私も13巻即買いしました~竹内君悲しい!!とにかく悲しいですゞでもホント竹内君頑張ってるのに…


それに空港でのあの矢野の第一声…準備してましたみたいなかんじで(涙)矢野も苦しんでますねゞ


14巻発売まで長いですね~でも楽しみです
From: ユメユメ * 2009/11/03 23:01 * URL * [Edit] *  top↑
13巻の竹内君は可哀想でしたね~。結ばれないであろうことは容易に想像できたのですが、まさかあんなに手ひどく切られるとは思ってもなかったので、驚きました。

矢野の本心からでないテンプレ台詞は鍵括弧で括られていたのでわかりやすかったですね。
本格的に動き出すであろう14巻が楽しみです。ただ夏まで待たなくてはいけないというのは…(笑)

コメントありがとうございました!
From: いづき * 2009/11/04 20:48 * URL * [Edit] *  top↑

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