
今度のは助けてやるよ
■その古き山には、美しい人の顔と恐ろしい蛇身を持つ気高い男神・夜長彦という神がいた。そしてもう一人、「鉄壱智」という小さな少年のような姿の神もいた。「お前は命がなく、生き物じゃない」「外には出られない」夜長彦にそう教えられてきた鉄壱智だったが、どうにも実感が湧かない。とにかく挑戦することが好きな鉄壱智は、物は試しと、出られないといわれた外界に続く滝に身を投げるが…?
なんて説明が難しいのでしょう。なるしまゆり先生の神話的なファンタジー作品になります。主人公は、小さな神様・鉄壱智。夜長彦という神様が君臨する山で、その息子というか弟のような存在として、毎日元気に山を駆け回っています。彼自身は、自分が神様であるという感覚は希薄。また出れないといわれている外の世界に興味津々で、いつも想いを馳せています。そんな中、夜長彦から告げられた「君は生き物ではない」という言葉。そのことに落ち込む鉄壱智でしたが、その言葉を逆手に取り、死なないってことは外に出ようと挑戦してみてもいいのでは?という考えに至ります。そして外界とを繫ぐ滝に飛び込むのですが、予想とは異なりアッサリと外に出れてしまいます。初めて見る外の世界、そして初めて出会う人間。気持ちのよいことばかりではないものの、どうしても外に興味を持ってしまう鉄壱智は、そこからめくるめく物語にひきこまれていきます。

少年らしく、未知のものへの興味が非常に強い。
時代は正確にはどのへんなのでしょうか?歴史には明るくないのですが、飛鳥時代、奈良時代、恐らくその辺。外に興味を持つ鉄壱智と、神を殺そうと目論む人間たち。それぞれに、単純でない想いを抱えており、それぞれが交錯するとき、物語はゆっくりと加速していきます。というか説明難しすぎます。いや、確かに私は説明下手ではありますが、それにしてもですよ。ストーリーとしては、様々な理由で神を求める人間に出会い、やがて鉄壱智は彼らについて旅に出るという流れなのですが、これはあくまで“流れ”にすぎず、物語が最終的にどんな形で終演するのか、わからないという。しかも鉄壱智が旅に出るまで2巻を要しますし、話の流れはもの凄くスロー。
よくも悪くもなるしまゆり先生らしい作品。物語の壮大さはいうことなく、その紐解き方も、我慢できる人にとってはたまらないものになっているのでしょう。万人受けというよりは、玄人受けしそうな作品。だからこそオススメはしづらいものの、読んではもらいたいとは思います。ただ薦めるなら、完結した上でまとめ読みを推奨したいですけどね。
【男性へのガイド】
→男女というよりは、マンガ歴ないしその人の好みに起因する部分が大きそう。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→どこまでも壮大で、どこまでも不親切な、神と人が織り成す冒険譚。それゆえに完成時の読み応えは抜群であろうものの、続いている中でオススメするのは難しい。
作品DATA
■著者:なるしまゆり
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUM
■掲載誌:ZER-SUM(平成16年11月号~連載中)
■既刊6巻
■各552円+税
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