
一番気になることなんて
占わなくてもわかってるの
胸が高鳴るのはあたしだけ
■暗君が三代も続き、国民たちは皆飢えに苦しむ晶王朝。香蘭もまた、そんな貧困にあえぐ村で生まれ育った村娘のひとり。苦しむ村のために宝を盗み出そうと、無計画に王宮に忍び込んだ香蘭は、そこで一人の美しい青年に出会う。結局何も盗れずに村に戻り、一夜明けると、国内は皇子暗殺の報せで持ち切りだった。昨夜出会った青年が、その暗殺者なのでは?そう想いを廻らせてると、村の近くで傷つき倒れるその青年を発見、思わず手当をし、見つからない場所に匿ってしまう。志季と名乗るその青年を、傷が癒え次第、村のためにと役人の元へ突き出そうするが…!?
仲野えみこ先生はこれが初コミックス。おめでとうございます。さてこの作品、「真夜中の王宮で出会った秘密を持った2人の、最高キュートな中国ファンタジーロマンス」とありますが、もう…その秘密を打ち明けても…いいよね?というか、そうでなくては話が進まないという。その秘密とは、暗殺容疑のある青年・志季が、実は暗殺されたとされる皇子だというもの。密かに帝の座を狙う弟に命を狙われ、それを察知した志季はとっさに王宮を脱出、その際に香蘭と出会います。弟は兄に逃げられたものの、代理の死体を用意して王権を獲得。しかしそれも三日天下で、香蘭の看病によって回復した志季が王宮に舞い戻り、帝の座に就くことになります。

この優しい関係が、実に素敵。
それがきっかけとなり、自由に王宮を出入りできるようになるヒロイン・香蘭。彼女の持っている秘密…というか意外な事実は、彼女がこう見えて18歳であるということ。そのことはヒロイン自身もちろん自覚しており、愛されるポイントとなると同時に、なかなか年頃の娘として見てもらえないというジレンマを抱えています。いってみれば、身分を越えて、さらに見ための釣り合わなさを越えて、想いが通じるのか、というところがひとつのテーマに。とはいえお互いまだまだ恋愛感情を自覚するには至らず、想いが通じ合うのはまだまだかかりそう。そのやきもき感もまた良し。
王子様とのラブロマンスというと、白泉社では数多く見られますが、中でもシチュエーションが似ていると感じるのが、あきづき空太先生の「赤髪の白雪姫」(→レビュー)。身分の違いがあったり、見ためで色々なジレンマを抱えていたり、薬草に精通している(白雪は薬剤師で、香蘭は村医者の元で面倒を見てもらっている)など共通点が多いのですが、ヒロイン自身が醸し出す魅力は、まったくの正反対。白雪はその聡明さと心の強さから、容易には近寄らせないような美しさを放っているのですが、香蘭はその愛くるしい姿と頑なまでに人を信じる無垢さで、どちらかというと抱きしめてあげたくなるような魅力を放っています。それが結果的に作品の雰囲気を異ならせるものにしており、ちゃんと別の作品として楽しむことができます。もうね、こんなに抱っこがしっくりくるヒロインが、今までいたでしょうか?それだけで、私は満足ですよ、はい。
【男性へのガイド】
→どうなんでしょうね、ヒロインはカワイイけども、男性に敢えてお薦めするような作品ではないんじゃないでしょうか。ただ微笑ましく、読みやすい作品ではあります。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→明るく非常にいい雰囲気を持った作品。2人というか、常に懸命なヒロインの姿がなんとも愛くるしく、そして微笑ましい。恋愛模様もゆっくりながら着実に進展しており、だらだらと引き延ばすってこともないでしょう。2~3巻でサクッと完結すると予想して、オススメで。
作品DATA
■著者:仲野えみこ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCIMICS
■掲載誌:LaLaDX
■既刊1巻
■価格:400円+税
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