作品紹介はこちら→麻生みこと「そこをなんとか」
麻生みこと「そこをなんとか」(3)
今日もお茶が旨いですねぇ
久保田さん
■3巻発売です。
相変わらずの下っ端生活を続ける楽子は、同期会で弁護士200人越えの大事務所に入った赤星と再会する。楽子の月給分の家賃の部屋に住む赤星の話を聞き、格差に愕然とするも、赤星はなにやら楽子が気になるようで…。しかし当の楽子は東海林の御用聞きに大忙し。ご近所ペットトラブルに始まり、不倫相手との婚約不履行に怒りを爆発させる依頼者に頭を悩ませ、さらには事務員の久保田さんにもトラブルが…!?
案件を脱力しつつも解決していく様子は、1~2巻から相変わらず。いいですね、面倒くさそうな案件が来た際は、「私が解決してあげなくちゃ!」とはならず、正直に「うわー」と思ったり。でも受けたら受けたで段々と本気になり、気がつけば感動と笑いを…という構図が。そんな相変わらずの軽妙さを保ったまま、3巻では人間関係に深みと広がりが出てきました。
~新キャラ・赤星~
まずは楽子の同期で、大手事務所に所属するエリート・赤星。常にエリートであった彼は、なぜか楽子に辛口。ムカつく…けど気になる。そんなラインから、一気に口説きの対象になっていきます。しかしやや鈍感で、赤星にまったく興味のない楽子は、赤星からのアプローチをことごとくスルー。楽子の興味は、もっぱら東海林さんに向いております。そうなってくると俄然気になるのが、東海林さんの同期で大手事務所(赤星と同じところ)に所属する美人弁護士・中道さんとの関係。何かありそうで、なかなかわからない。とりあえず気になることはチェックしておこうと、赤星を使って探りを入れるのですが、わからない。またそうやっていいように使われている赤星がまたカワイイのなんの。そんな4人が一堂に会する9話目は、それぞれの思惑が交錯し、ものすごく面白い展開になってます。やっぱりこの中だと東海林さんが一枚上手なんだよなぁ。
~3巻は菅原さんがスゴかった~
さて、そんな素敵な新キャラ・赤星が登場した3巻ですが、3巻で一番輝きを放ったのは、新キャラでもヒロインでも東海林さんでもなく、古参の脇役・菅原さんでした。
まずは12話目、不倫相手の婚約不履行に怒り心頭の女性からの案件を扱ったお話。不倫相手の、「妻と別れ結婚する」という言葉を信じたその女性は、妊娠したものの認知もしてくれず「堕ろしてくれ」という相手に怒り爆発。感情に任せ「どうにか訴えられないか」と事務所に駆け込んできます。紆余曲折ありつつも、楽子の奮闘で最終的に「こどもを認知してもらう」というラインに落ち着いたこの案件。しかしそこで菅原さんが依頼人に、一見穏やかで、しかしとても重たい言葉をかけます。
「責任を持って育ててください」
「胎児認知が受理されると
妊娠12週目以降はもし胎児が死産した場合
葬儀をしなくてはなりません」

それに対し過剰に反応する依頼人。図星でした。子供が大事だったのではなく、好きな相手に向き合ってもらえない悲しさからの行動。そのことを、菅原さんは見抜いていたのです。それは数多くの案件をこなしてきたから…ではなく、とある人間との過去があったからでした。
~久保田さんとの関係~
それが明らかになるのは、続く13話目、事務所の唯一の事務員でシングルマザーの久保田さんが、子供の親権を子供の父親争うというお話にて。彼女は学生時代、名家の息子と付き合っていました。やがて妊娠が発覚するも、釣り合いの取れない2人ということで、向こうの両親が大反対。その反動からか、久保田さんは生むことを決意。今に至ります。言ってみれば、不倫ではないものの先の案件の女性と状況は似ています。そんな彼女を救ったのは、久保田さんの当時の先生…菅原さんでした。
教え子のピンチに、さも当然のように助けに入り、全力でサポート。久保田さんは経済的に理由で大学を辞めるものの、菅原さんは今の事務所立ち上げの際に彼女を呼び、その後も様々な面でサポートし続けます。勢いで生んだことの大変さも嬉しさも、身を以て体験している。だからこそのあの発言ですよ。知識でなく、経験から裏打ちされた重みのある言葉…最高です。そして今の久保田さんとの関係を見ても、男女とか師弟とか上司と部下とか、そんな関係は越えた部分で通じ合っていおり、そんなものにはとらわれない、すべてを包み込むような包容力を感じることができます。加えて今は妻に先立たれ独り身という辺も、ポイントアップでございますよ。この色々な意味での安心感と、若干の哀愁。これぞジジイの魅力だ!弁護士コメディではありますが、この「そこをなんとか」の3巻は、間違いなく極上の枯れセン漫画だったと言えます。あー、私もこんなおじさんになりたいなぁー。
■購入する→Amazon
/
bk1

今日もお茶が旨いですねぇ
久保田さん
■3巻発売です。
相変わらずの下っ端生活を続ける楽子は、同期会で弁護士200人越えの大事務所に入った赤星と再会する。楽子の月給分の家賃の部屋に住む赤星の話を聞き、格差に愕然とするも、赤星はなにやら楽子が気になるようで…。しかし当の楽子は東海林の御用聞きに大忙し。ご近所ペットトラブルに始まり、不倫相手との婚約不履行に怒りを爆発させる依頼者に頭を悩ませ、さらには事務員の久保田さんにもトラブルが…!?
案件を脱力しつつも解決していく様子は、1~2巻から相変わらず。いいですね、面倒くさそうな案件が来た際は、「私が解決してあげなくちゃ!」とはならず、正直に「うわー」と思ったり。でも受けたら受けたで段々と本気になり、気がつけば感動と笑いを…という構図が。そんな相変わらずの軽妙さを保ったまま、3巻では人間関係に深みと広がりが出てきました。
~新キャラ・赤星~
まずは楽子の同期で、大手事務所に所属するエリート・赤星。常にエリートであった彼は、なぜか楽子に辛口。ムカつく…けど気になる。そんなラインから、一気に口説きの対象になっていきます。しかしやや鈍感で、赤星にまったく興味のない楽子は、赤星からのアプローチをことごとくスルー。楽子の興味は、もっぱら東海林さんに向いております。そうなってくると俄然気になるのが、東海林さんの同期で大手事務所(赤星と同じところ)に所属する美人弁護士・中道さんとの関係。何かありそうで、なかなかわからない。とりあえず気になることはチェックしておこうと、赤星を使って探りを入れるのですが、わからない。またそうやっていいように使われている赤星がまたカワイイのなんの。そんな4人が一堂に会する9話目は、それぞれの思惑が交錯し、ものすごく面白い展開になってます。やっぱりこの中だと東海林さんが一枚上手なんだよなぁ。
~3巻は菅原さんがスゴかった~
さて、そんな素敵な新キャラ・赤星が登場した3巻ですが、3巻で一番輝きを放ったのは、新キャラでもヒロインでも東海林さんでもなく、古参の脇役・菅原さんでした。
まずは12話目、不倫相手の婚約不履行に怒り心頭の女性からの案件を扱ったお話。不倫相手の、「妻と別れ結婚する」という言葉を信じたその女性は、妊娠したものの認知もしてくれず「堕ろしてくれ」という相手に怒り爆発。感情に任せ「どうにか訴えられないか」と事務所に駆け込んできます。紆余曲折ありつつも、楽子の奮闘で最終的に「こどもを認知してもらう」というラインに落ち着いたこの案件。しかしそこで菅原さんが依頼人に、一見穏やかで、しかしとても重たい言葉をかけます。
「責任を持って育ててください」
「胎児認知が受理されると
妊娠12週目以降はもし胎児が死産した場合
葬儀をしなくてはなりません」

それに対し過剰に反応する依頼人。図星でした。子供が大事だったのではなく、好きな相手に向き合ってもらえない悲しさからの行動。そのことを、菅原さんは見抜いていたのです。それは数多くの案件をこなしてきたから…ではなく、とある人間との過去があったからでした。
~久保田さんとの関係~
それが明らかになるのは、続く13話目、事務所の唯一の事務員でシングルマザーの久保田さんが、子供の親権を子供の父親争うというお話にて。彼女は学生時代、名家の息子と付き合っていました。やがて妊娠が発覚するも、釣り合いの取れない2人ということで、向こうの両親が大反対。その反動からか、久保田さんは生むことを決意。今に至ります。言ってみれば、不倫ではないものの先の案件の女性と状況は似ています。そんな彼女を救ったのは、久保田さんの当時の先生…菅原さんでした。
教え子のピンチに、さも当然のように助けに入り、全力でサポート。久保田さんは経済的に理由で大学を辞めるものの、菅原さんは今の事務所立ち上げの際に彼女を呼び、その後も様々な面でサポートし続けます。勢いで生んだことの大変さも嬉しさも、身を以て体験している。だからこそのあの発言ですよ。知識でなく、経験から裏打ちされた重みのある言葉…最高です。そして今の久保田さんとの関係を見ても、男女とか師弟とか上司と部下とか、そんな関係は越えた部分で通じ合っていおり、そんなものにはとらわれない、すべてを包み込むような包容力を感じることができます。加えて今は妻に先立たれ独り身という辺も、ポイントアップでございますよ。この色々な意味での安心感と、若干の哀愁。これぞジジイの魅力だ!弁護士コメディではありますが、この「そこをなんとか」の3巻は、間違いなく極上の枯れセン漫画だったと言えます。あー、私もこんなおじさんになりたいなぁー。
■購入する→Amazon