作品紹介はこちら→*新作レビュー* 天乃忍「片恋トライアングル」
天乃忍「片恋トライアングル」(2)
誰かを好きになることが
悪いことのはずないじゃないですか
■2巻発売、完結しました。
結城くんに片想いの関谷さん。一方、葛西くんは関谷さんが気になっている様子。しかし関谷さんは葛西くんが苦手。そしてもう一人の当事者・結城くんは、葛西くんの気持ちに気づいて彼を応援するという、不毛な三角関係を形成することに。結城くんにとって、関谷さんが友達としてしか見ていないことに、彼女自身も気づきつつあるけれど…。そんな中、葛西くんに想いを寄せる孤高のお嬢様・姫宮さんが参戦。何かにつけて葛西くんと一緒にいる関谷さんが、姫宮さんは気に入らないらしくて…!?
~新キャラ・姫宮さん~
完結しました。いやぁ、良かったです。新キャラの登場で、片恋トライアングルが、片恋スクウェアになった2巻。この新キャラ・姫宮さんが、この物語を素晴らしい作品に昇華してくれました。

新キャラ・姫宮さん。気の強いお嬢様を絵に描いたような彼女は、そのキャラの強さが裏目に出て友達がいないという状況。しかし葛西くんは、そんな彼女にも優しく接してくれました。その優しさにノックアウトされてしまった彼女は、中学の時から彼を想い続け、今に至ります。ところが最近になって、何かと葛西くんと行動を共にする女の子が出現。そのことに焦りを感じた彼女は、いてもたってもいられず、関谷さんをイジメにかかります。といっても単独行動しかできない彼女のやることなんてカワイイもの。彼女の嫌がらせに耐えかねた関谷さんがブチ切れると、逆に彼女が泣いてしまうという…。そんなこんなで2人は和解。気がつけば、二人は友達になっていました。
~姫宮さん投入の効果~
この4人の恋のベクトルは、姫宮さん→葛西くん→関谷さん→結城くん。一見四角関係のように見えるものの、姫宮さんは実はいてもいなくてもあまり関係がないポジションだったりします。姫宮さん以外の3人は、それぞれに想われているものの、それに気がつかない鈍感っぷりを発揮。結城くんは天然で、そして残りの二人は、好きな人にしか目がいかないから。どうしてこう片想いキャラってのは、ナイーヴで鈍感なのかしら。この辺が身につまされるって人も多そうですね。
なんて若干話が逸れましたが、そんな傍観者ポジションの姫宮さんは、だからこそ状況を把握して、精一杯黒子的役割を発揮することになりました。
まずは葛西くんを相手に、自分の想いが叶わないと確認した際に…「私諦めませんから!たとえ葛西くんが関谷かすみを好きでも!」と言い放ち、葛西くんの無自覚な恋を、ハッキリと自覚させます。それによって葛西くんはオーバーヒート気味にダッシュ。動かなかった三角関係を動かします。
またとある出来事によって、関谷さんとの雰囲気が悪くなってしまったことに落ち込む葛西くんに、「誰かを好きになることは悪いことじゃない。だからそんな悲しいこと言わないで」と励まし、あろうことか彼の背中を押すことに。そのときの涙は本当に切なく、同時に本当に素敵でした。

好きな人が悲しい顔をしているのは嫌。
そこから状況はどんどんと進み、その勢いを保ったままにラストへ。いわば物語を動かすトリガーの役目を負っていた姫宮さん。傍観者だからこそ、できることがある。彼女がいなかったらホントにこの作品完結してなかったんじゃね?というひいき目。いやね、でもホントにそう言ってもいいくらい、彼女は頑張ったと思います。
~姫宮さんに幸あれ!~
他の3人と違い、鈍感さをまったく出すことがなかった彼女は、人一倍センシティブに映りこみ、他のどのキャラよりも切なさを感じさせてくれました。同じ報われないでも、彼女のそれは一味違ったのですよ。また作品で、姫宮さんが一番“変化”を感じやすかったというのも、個人的にはプラス要素というか。最初は自分のことしか考えず、事情も察することなく関谷さんにちょっかいを出していた彼女。しかしやがて人付き合いをするようになり、恥ずかしがりながら「ありがと…」と言うようになり、ラスト近くでは関谷さんを気遣う言動。さらには自然に「ごめんなさい」と言い、最後の最後はこれですよ。

ありがと。
登場時、一番の色モノだった彼女は、最終的に一番普通の人になってました。あら不思議。そんな彼女を変えたのは、友達付き合いからの気苦労ってやつじゃないでしょうか。そんな苦労性の姫宮さんに、幸あれ!
基本的に報われない子が好きなんですよ。だからこの作品で一番報われなかった彼女に私のアンテナが反応するのは当然のこと。とはいえ片恋を描いたこの作品は、彼女以外にも報われない切なさを抱えたキャラが複数いたわけで、もうアンテナ反応しまくりでした。そんな中唯一反応しなかったのが、結城くん。多分それは、片想いの3人が自分の抱える想いと向き合って、本当に苦しんでいたのに、結城くんはそれほど苦しんでなかったというところに起因しているのかも。頑張る恋愛というか、苦しい恋物語が好きなんです、はい。ってあれ、姫宮さんの話しかしてねぇ…!
~思いっきりネタバレになりますが~
最終的には片想いしている3人が、全員告白をする形になりました。片想いを描く際は、「告白できずに終わる」というオプションもあるのですが、それを選択することはありませんでした。まず結城くんが最後まで恋愛に目覚めずにいってしまうので、結ばれてハッピーエンドという選択はできなくなります。そうするとゴールとして設定されるのは、「両思い」ではなく「告白」。また作者さんとしては、告白してこそだぞ!みたいなメッセージを入れたかったのかも。告白できずに鬱々と…という展開も好きですが、全員が告白したからこそ出せる切なさと爽やかさというものがある。片想いを描く作品としては、これが最高のハッピーエンドだったのかもしれませんね。
また最後のオマケ漫画では思わぬ展開が。ほう、そう持ってきますか。その辺は逆にリアルな感じがするなぁ、と。だって少女漫画は、これと決めた相手は最後まで貫き通さなくてはいけないわけですから。でも実際は、そんなことはホントに稀なわけで、この微妙なさじ加減がまた良いなぁ、と。どう思うかは人によって違うとは思いますが、私はスゴく良いと思いましたよ?一方は告白でしっかり決着をつけ、一方は告白後も引きづり続ける。どちらもあって然るべきその後なわけですから。
というわけで、この作品は「片想い」というワードに反応するような方は確実に「買い」だと思いますよ。白泉社にしては、恋愛1本でしかもかなりナイーヴなキャラ達ですが、このレーベルが持っているプラトニックさと明るさが旨い具合にマッチして、なんとも初々しく切ない物語が展開されています。1巻の時はそこまで印象的でなかったので、2巻でここまで心に来たことには正直驚き。今一度強くお薦めしたい作品です。
■購入する→Amazon
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誰かを好きになることが
悪いことのはずないじゃないですか
■2巻発売、完結しました。
結城くんに片想いの関谷さん。一方、葛西くんは関谷さんが気になっている様子。しかし関谷さんは葛西くんが苦手。そしてもう一人の当事者・結城くんは、葛西くんの気持ちに気づいて彼を応援するという、不毛な三角関係を形成することに。結城くんにとって、関谷さんが友達としてしか見ていないことに、彼女自身も気づきつつあるけれど…。そんな中、葛西くんに想いを寄せる孤高のお嬢様・姫宮さんが参戦。何かにつけて葛西くんと一緒にいる関谷さんが、姫宮さんは気に入らないらしくて…!?
~新キャラ・姫宮さん~
完結しました。いやぁ、良かったです。新キャラの登場で、片恋トライアングルが、片恋スクウェアになった2巻。この新キャラ・姫宮さんが、この物語を素晴らしい作品に昇華してくれました。

新キャラ・姫宮さん。気の強いお嬢様を絵に描いたような彼女は、そのキャラの強さが裏目に出て友達がいないという状況。しかし葛西くんは、そんな彼女にも優しく接してくれました。その優しさにノックアウトされてしまった彼女は、中学の時から彼を想い続け、今に至ります。ところが最近になって、何かと葛西くんと行動を共にする女の子が出現。そのことに焦りを感じた彼女は、いてもたってもいられず、関谷さんをイジメにかかります。といっても単独行動しかできない彼女のやることなんてカワイイもの。彼女の嫌がらせに耐えかねた関谷さんがブチ切れると、逆に彼女が泣いてしまうという…。そんなこんなで2人は和解。気がつけば、二人は友達になっていました。
~姫宮さん投入の効果~
この4人の恋のベクトルは、姫宮さん→葛西くん→関谷さん→結城くん。一見四角関係のように見えるものの、姫宮さんは実はいてもいなくてもあまり関係がないポジションだったりします。姫宮さん以外の3人は、それぞれに想われているものの、それに気がつかない鈍感っぷりを発揮。結城くんは天然で、そして残りの二人は、好きな人にしか目がいかないから。どうしてこう片想いキャラってのは、ナイーヴで鈍感なのかしら。この辺が身につまされるって人も多そうですね。
なんて若干話が逸れましたが、そんな傍観者ポジションの姫宮さんは、だからこそ状況を把握して、精一杯黒子的役割を発揮することになりました。
まずは葛西くんを相手に、自分の想いが叶わないと確認した際に…「私諦めませんから!たとえ葛西くんが関谷かすみを好きでも!」と言い放ち、葛西くんの無自覚な恋を、ハッキリと自覚させます。それによって葛西くんはオーバーヒート気味にダッシュ。動かなかった三角関係を動かします。
またとある出来事によって、関谷さんとの雰囲気が悪くなってしまったことに落ち込む葛西くんに、「誰かを好きになることは悪いことじゃない。だからそんな悲しいこと言わないで」と励まし、あろうことか彼の背中を押すことに。そのときの涙は本当に切なく、同時に本当に素敵でした。

好きな人が悲しい顔をしているのは嫌。
そこから状況はどんどんと進み、その勢いを保ったままにラストへ。いわば物語を動かすトリガーの役目を負っていた姫宮さん。傍観者だからこそ、できることがある。彼女がいなかったらホントにこの作品完結してなかったんじゃね?というひいき目。いやね、でもホントにそう言ってもいいくらい、彼女は頑張ったと思います。
~姫宮さんに幸あれ!~
他の3人と違い、鈍感さをまったく出すことがなかった彼女は、人一倍センシティブに映りこみ、他のどのキャラよりも切なさを感じさせてくれました。同じ報われないでも、彼女のそれは一味違ったのですよ。また作品で、姫宮さんが一番“変化”を感じやすかったというのも、個人的にはプラス要素というか。最初は自分のことしか考えず、事情も察することなく関谷さんにちょっかいを出していた彼女。しかしやがて人付き合いをするようになり、恥ずかしがりながら「ありがと…」と言うようになり、ラスト近くでは関谷さんを気遣う言動。さらには自然に「ごめんなさい」と言い、最後の最後はこれですよ。

ありがと。
登場時、一番の色モノだった彼女は、最終的に一番普通の人になってました。あら不思議。そんな彼女を変えたのは、友達付き合いからの気苦労ってやつじゃないでしょうか。そんな苦労性の姫宮さんに、幸あれ!
基本的に報われない子が好きなんですよ。だからこの作品で一番報われなかった彼女に私のアンテナが反応するのは当然のこと。とはいえ片恋を描いたこの作品は、彼女以外にも報われない切なさを抱えたキャラが複数いたわけで、もうアンテナ反応しまくりでした。そんな中唯一反応しなかったのが、結城くん。多分それは、片想いの3人が自分の抱える想いと向き合って、本当に苦しんでいたのに、結城くんはそれほど苦しんでなかったというところに起因しているのかも。頑張る恋愛というか、苦しい恋物語が好きなんです、はい。ってあれ、姫宮さんの話しかしてねぇ…!
~思いっきりネタバレになりますが~
最終的には片想いしている3人が、全員告白をする形になりました。片想いを描く際は、「告白できずに終わる」というオプションもあるのですが、それを選択することはありませんでした。まず結城くんが最後まで恋愛に目覚めずにいってしまうので、結ばれてハッピーエンドという選択はできなくなります。そうするとゴールとして設定されるのは、「両思い」ではなく「告白」。また作者さんとしては、告白してこそだぞ!みたいなメッセージを入れたかったのかも。告白できずに鬱々と…という展開も好きですが、全員が告白したからこそ出せる切なさと爽やかさというものがある。片想いを描く作品としては、これが最高のハッピーエンドだったのかもしれませんね。
また最後のオマケ漫画では思わぬ展開が。ほう、そう持ってきますか。その辺は逆にリアルな感じがするなぁ、と。だって少女漫画は、これと決めた相手は最後まで貫き通さなくてはいけないわけですから。でも実際は、そんなことはホントに稀なわけで、この微妙なさじ加減がまた良いなぁ、と。どう思うかは人によって違うとは思いますが、私はスゴく良いと思いましたよ?一方は告白でしっかり決着をつけ、一方は告白後も引きづり続ける。どちらもあって然るべきその後なわけですから。
というわけで、この作品は「片想い」というワードに反応するような方は確実に「買い」だと思いますよ。白泉社にしては、恋愛1本でしかもかなりナイーヴなキャラ達ですが、このレーベルが持っているプラトニックさと明るさが旨い具合にマッチして、なんとも初々しく切ない物語が展開されています。1巻の時はそこまで印象的でなかったので、2巻でここまで心に来たことには正直驚き。今一度強くお薦めしたい作品です。
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