このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.11.10
07230562.jpg宮川匡代「バニティ・リーグ」(1)


かわりのきかない女になりな
仕事も
恋愛も



■内定ゲット&大学も卒業…4月から憧れのOL生活をスタートさせるはずだったチヨだけど、なんとまさかの内定取り消し。卒業旅行で海外に行ったせいで、貯金がないどころか、ローンがあるという始末。あっという間に、無一文の家なき子になってしまった…。そんな中、彼女に声をかけてきたのが小学校時代の知り合い・霞ちゃん。もうココに頼るしかないと、彼女の話すハウスメーカーのモニター(家賃タダ!)に参加させてもらうことになったチヨだけど、同居人たちはみな個性派揃いの男女で…!?

 「林檎と蜂蜜」の宮川先生の新作でございます。今度のお話は、男2×女3の共同生活物語。ヒロインは、内定取り消しによって無一文&家なしになってしまった大井チヨ。茫然自失の中、たまたま声をかけてきた小学生時代の知り合い・霞ちゃんからハウスメーカーのモニターの話を聞き、参加させてもらうことに。同居人は男女4人。同い年でキャバ嬢風味のナース・糸織,影の薄い声優の卵・霞,遊び人風味の警察官・ジョージ,そして社会人ランナー・萩原。無職無特技のチヨと違い、皆がスペシャリスト揃い。しかし持ち前の図々しさと、住人たちの気配りにより、あっという間に溶け込むように。男女混合の共同生活という特殊な環境から、社会人として、そして女として新たな一歩を踏み出していく様子を描いていきます。


バニティ・リーグ
早くから打ち解けて、雰囲気は非常に明るい。もうひとりかすみちゃんがいるのですが、このときは透明になっているのですよ。


 男女で共同生活というと、近年ドラマなどでトレンドになっていたシェアリング形式を想像しますが、こちらはハウスメーカーのモニターという設定。とはいえ大きな違いは殆どなく、最低限のルール(金銭,家事,恋愛等)が設定され、その中で共同生活を送っていきます。住人たちはそれぞれ個性的で、同時に過去については殆ど描かれず、いやが応にも興味をひくように描かれています。特に警察官のジョージには、何やらただならぬ過去がありそうで、これからの物語展開に大きく関わってきそう。また声優の霞ちゃんは、存在感の薄さがそのまま姿に現れ、時に透明に描かれ住人に気づかれないという描かれ方をします。ファンタジーとして描こうとはしていないと思われるので、これは一つのギミックなのでしょうが、果たして必要だったのだろうか。それに限らずこの設定必要か?という要素はチラホラ見られるものの(女の子全員処女とか)、それほど気にする必要もないのですね。これが作風といえば作風だし、それによって重くなりすぎないという効果もあるのかと。
 
 1話目で「してもらいますよ、大恋愛」と宣言されており、これから大きく話が展開していくであろうことは明白。ただしフィールドはあくまで家で、登場人物も限られてくるとなれば、自然と方向はメインキャラの掘り下げにいくわけで、多少のドロドロ感は出てくるかもしれません。まだ1巻ではそこまでストーリーに動きは出ていませんが、それでも続きの面白さを予感させるような内容にはなっています。この辺はさすがベテランというところか。
 
 宮川さんの作品のヒロインは、時に身勝手さが鼻につくことがあるのですが、このヒロインも若干そっち寄り。まぁ、はい、苦手なキャラなんですよね。ただこの場合長期作品でしょうし、ヒロインも確実に成長はしている…というかそれがテーマのひとつでもあると思うので、読み進めればまた印象も変わってくるのでしょう。ちなみに序盤でチヨが話す憧れのOLって、多分「Kiss and Fight」の優のことかと思われます。一応繋がりがあるって設定なのかな。


【男性へのガイド】
→女性に嬉しい設定多めな気が。それでも上手いから読む分には苦にならないでしょう。あとは好き嫌いの問題。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→あまり好きな系統の作品ではないのですが、やっぱり上手い。自分は続き買うかわからないですが、オススメにしないのはあまりにもったいないので。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー*宮川匡代「天使契約」
宮川匡代「ヘヴンリー・キス」


作品DATA
■著者:宮川匡代
■出版社:白泉社
■レーベル:
■掲載誌:シルキー(2009年4月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:457円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「シルキー」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。