三原ミツカズ「死化粧師」(1)
死者に対して誰もが口にする優しい嘘
それはこの世で一番美しい詭弁■6巻発売です。
エンバーミング…遺体のやつれや損傷を生前の姿に復元し、防腐処理を施す技術。一度処理された体は、安らかな姿を保ち続けるという。土葬が中心の欧米では比較的ポピュラーな技術だが、火葬が原則の日本では、倫理観や宗教観などのしがらみもありなかなか浸透していない。間宮心十郎は、そんなエンバーミングを行う数少ない日本人の一人。飄々とした性格で、女にだらしない。しかし仕事に関しては驚くほど真面目。そして今日も、彼の元にエンバーミングの依頼が舞い込んでくる…
テレビ東京にてドラマ化もされました、「死化粧師」のご紹介です。主人公は、日本でも数少ないエンバーマーの一人・間宮心十郎。私生活はどちらかというとだらしない彼は、いつも大家の孫娘であるアズキに世話を焼かれています。彼女曰く、B型とインド人を足して2で割ったくらいアバウトな心十郎ですが、仕事に関してはとかく真面目で真摯な姿勢で臨んでいます。それに関しては彼女も高く評価しており、そのギャップに時折戸惑うという感じ。そんな死化粧師の仕事ぶりを通して、様々ある人の死と生について、感動的に描いていきます。

お仕事の知識も入るので、そちらも楽しむことが出来る。そしてこのキャラ。聞き慣れない職業に加え、つかみどころのない性格の主人公ということで、ミステリアスさはアップする。
一つの仕事で一つの話が消化される、1話完結形式の構成になっています。それ故に、人死にすぎじゃね?なんて思うかもしれませんが、まぁそれはお仕事ですし、某少年探偵漫画に比べたら全然自然に人の死や依頼が持ち込まれます(その表現はどうだろうか)。人の死を扱うので、当然路線は感動系に。しかし死化粧師という職業を通しての視点だからでしょうか、“死”を扱う作品にありがちな重さはそれほどなく、むしろ(物語としての)美しさが強調されたような形に。主人公がややくだけた性格なのも、キレイになりすぎないための措置なのかな、という気がしなくもありません。
同時にアズキと心十郎の関係も、物語の進行と共に変化が見られてきます。元々相手のことは想いあっていたのですが、心十郎はなにせ女にだらしないので、なかなか距離が近づくことはありません。しかし女にだらしないというのにも理由があり、非常に強く死を感じる仕事をしている彼は、その反動で人の温もりを求めようとしてしまうのです。お互いにそういった悩みを抱えつつ、物語が進行されるので、単発ネタでお終いという単調さはなく、読み進める面白さもしっかりと兼ね備えておりますよ。
【男性へのガイド】→職業ものとしてみれば、それなり読める内容かも知れません。キレイすぎるのが、男性的にどうかという。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】→物語を展開する上手さはありますが、読み手をグッと引き入れるだけのインパクトには若干欠けるか。それでも完成度は高いと思いますけど。
作品DATA■著者:三原ミツカズ
■出版社:祥伝社
■レーベル:FEEL コミックス
■掲載誌:フィールヤング(2002年6月号~)
■既刊6巻
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