
だから
いっぱい話しながら
帰ろう
■親の上下関係がそのまま子供の上下関係となっているこの社宅。そんな社宅から通う小学生が、同じクラスに7人も集まり、その子達から伝染していくように、いつの間にか親の職業でランク付けがされ、格差クラスが出来上がっていた。そんな6年2組に通う百花は、低層にランク付けされ、セレブをはじめとした上層の子たちにこき使われる毎日。そんなクラスの状況を見て、これはいけないと、担任の先生が打開策に打って出るも、それが思わぬ火種になって…!?
現在別冊マーガレットにて「少女少年学級団」(→レビュー)を連載中の藤村真理先生。その「少女少年学級団」の基礎にもなったと言えるのが、この「学級×ヒエラルキー」でした。長編読切りということですが、その完成度には驚くばかり。小学校を舞台にした物語の醍醐味が、ギュッと詰まったような作品になっています。
物語の舞台となるのは、親の格差がそのまま学校にまで持ち込まれ、階層が出来上がってしまったクラス。セレブを中心に、上層階級の子供達が下層階級の子供達を蔑みこき使うという状況。そんなクラスを何とかしようと、担任の先生は打開策を見出します。それが、春フェスでの劇の役柄を、くじ引きによって決めるというもの。普段であれば上層階級が良い役に就くのですが、今回はそうはいきません。上手く階級がばらけ、万事上手くいったかと思いきや、今度は思わぬ問題が起きて…という感じ。その状況が、下層階級に属する女の子・百花の視点から展開されていきます。

このころは、女の子のほうが大人です。だからいつも女の子に気づかれないように掌握されてしまうのですが、それを破るほどに、勇気を出して行動してくる男の子ってのは、それ故にキュンとしてしまうというか…。
学校カーストというのは常に存在していて、特にその形成は小学生のときから顕著になってくるように思います。しかしその価値観と言うのは常に曖昧で、きっかけひとつでいくらでも変化する。移り気な少年少女たちの様子が、如実に現れた物語展開となっているのですが、その幅のふれかたがいかにも小学生という感じで面白い。今時の子供達はここまで素直というか、出たがりではないのでしょうが、藤村先生の作品は、大人になった人が過去を懐かしみつつ、微笑ましく子供達を見守る形で楽しむものだと思っているので、これでOK。またこの年頃ってのは、男の子よりも女の子のほうが一歩成長が早いため、いつも一枚上手。力関係というか、女の子のほうがどちらかというと素直に現金にたち振る舞うあたりも、リアルだなぁ、と。
同時収録の2話連載のお話は、打って変わって高校生が主人公。彼氏と結婚の約束をしてみたものの、ちょっと不満な部分が見えてきて…というストーリー。このお話の特徴は、今の彼氏とカッコいい女の子の間で揺れるという、ちょっと百合要素の入った展開があるというところ。しかしまとめ方はしっかり少女漫画なので、百合好きとかの方には少々もの足りないかもしれないですね。
【男性へのガイド】
→表題作のほうは万人にお勧めできるような作品だと思います。ただ同時収録の「こんな事あんな事」は、少女漫画色が強く出ているので、ダメな人はいるかもしれません。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→「学級×ヒエラルキー」だけを目当てに買ってもお得なのか、それがポイントなのですが、難しい…。ただ「少女少年学級団」が好きな方は、絶対買っておいたほうがいいです。
作品DATA
■著者:藤村真理
■出版社:集英社
■レーベル:マーガレットコミックス
■掲載誌:別冊マーガレット(平成19年5月号特別付録),デラックスマーガレット(平成18年1月号,5月号)
■全1巻
■価格:390円+税
■購入する→Amazon