山田也「203号室の尽子さん」(1)
私にはなんの力もないけど
出来る範囲で力になりたいの■3巻発売、完結しました。
203号室に住む尽子さんは、一見普通の美少女高校生。しかし実際は、幽霊とお話が出来る霊感少女だったのです。しかもやってくる霊の話を懇切丁寧に聞き答えてしまうものだから、その評判は瞬く間に幽霊の間に広がり、今では3日とあけずに霊が訪ねてきます。そして横には彼女のファンの幽霊の姿も…。そんな尽子さん、幽霊と話すとお腹が減るらしく、常に何かを食べている大食い少女でもあるのです。恋より霊力、恋より食欲…そして今日も彼女の元には…
大食いの霊感少女と、幽霊をめぐるホラーというかコメディというか感動というか…みたいなお話でございます。ヒロインは美少女霊感女子高生・尽子さん。若干天然の入った彼女は、幽霊相手でも物怖じせずに受け答え。それが好評を博し、気がつけば彼女のファンの幽霊ができ、迷える幽霊たちが3日をあけず彼女の元を訪ねてくるように。そんな彼女が霊感少女であると知っているのはごく僅か。母親や幼なじみの男の子など。彼女自身、周りに不気味がられないようにと、一応の気遣いはしているようです。しかし隠しているからといって幽霊騒ぎがなくなるわけでもなく、なにか起こる度に彼女は首を突っ込んでしまうのです。

よく食べる尽子さん。そんでもって「乗りかかった舟」と、何かにつけて手助けしてしまう心の広さを持っている。基本的にはおおらかな方です。
幽霊の定義などは結構曖昧ですが、雰囲気でも十分納得できる範疇なので、さして問題はなし。例えば「ゴーストハント」(→
レビュー)や「GS美神」などがこれ系統の作品ということになるのでしょうが、ヒロインの尽子さんが独特のキャラ(霊に対するスタンスも極力平和路線だったり)をしていらっしゃるので、それらの作品とは一線を画す印象を受けます。とにかく尽子さんのキャラがいい!色気より食い気なところとか、頼まれたら断れないへんとか、だからといって正義感を振りかざすようなこともしないし、なによりマイペースで和むのです。ヒロインの感情の触れ幅が大きいほど、ドラマティックな演出がしやすくなるのですが、こちらは逆。尽子さんが安定した感情の揺れ動きを見せるので、必要以上に気持ち悪くなったり怖くなったりしないで、どこか笑える要素を残しつつ話が展開されます。結構周囲でも人が死ぬんですけどね、悲壮感があまりなかったりと、なんだか不思議な感覚。
物語が進むにつれ、尽子さんの食事シーンが少なくなっていくのですが、それがちょっと残念。女性が勢いよくご飯を食べる姿って、素敵じゃないですか?基本的にはお行儀の良い尽子さんが、食事となると買い食い歩き食いは当たり前に食べまくるという姿がもう…。女性の食事シーンがお好きな方にもお薦めできる一品となっております。
【男性へのガイド】→恋愛要素は薄めで、単発形式で話が進むので、読みやすい作品なのではないでしょうか。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】→作品独特の色があり、読みやすさもあります。オススメにしようか迷ったのですが、作品全体としての勢いには若干欠けたかなという印象も。
作品DATA■著者:山田也
■出版社:秋田書店
■レーベル:ボニータコミックス
■掲載誌:ミステリーボニータ(2007年8月号~)
■全3巻
■購入する→
Amazon
/
bk1