
あたしのカウンセリングは
荒療治だぜ
■Vシネ女優の姉を持ち、当の本人は定職に就くこともなく日々貧乏と空腹に苦しむ女・早乙女煌。性格はガサツで破天荒。自分に惚れている幼なじみを上手くあしらい、なんとか食いつないでいる。そこだけ見ると穀潰し以下のダメ人間だが、実は彼女には裏の顔があった。“獏”の通り名で、記憶解師としてあがめられる潜りの精神科医。一度彼女の手にかかれば、他の医者が匙を投げた患者すらも、悪夢から解放される。
東山むつき先生のミステリーボニータ連載作。これももう長いですね、1巻刊行は2003年ですか。お話は、潜りの精神科医・早乙女煌の姿を描いたもの。「炎人」というタイトルから、どんなファンタジーアクションなのだろうと想像する方がいらっしゃるかもしれませんが、ファンタジックな要素はほぼナシ。あると言っても残留思念が乗り移るとか、どちらかというとオカルティックなもので、それすらも激しい精神世界での攻防を目に見える形で描いたという手法に思えないこともありません。雰囲気だけならば、90年代アニメのようなスタイリッシュさを持った、痛快な作品になっています。

“獏”の通り名が示す通り、夢を通しての治療がメイン。
精神科医のお話(もぐりだけど)なので、扱う病気や症状などは重く暗いものが多いのですが、ヒロインをはじめ登場するキャラ達がみな明るく、コミカルに描かれるので、そういった(痛快)印象になるのかも。幼なじみの救や、メインの雇い主となるイケてるオジさん・陣内虎之助などは、煌に振り回されつつもその中でかなりいい味出してます。品はないですが、男キャラが軒並み魅力的。
この作品の軸となるのは、当然のことながらヒロインの煌。とにかくカッコいいです。がさつでだらしないものの、一度患者を前にすれば、正義感溢れるヒーローに大変身。この飾らないカッコよさが、80~90年代アニメのヒーローチックで妙にツボに入ります。秋田書店は「KEY JACK」(→レビュー)といい、妙な懐かしさを持ったヒーローものがあって、良いんですよねぇ。ヒーローヒーロー言ってますけど、女性です、はい。しかし東山先生は色モノヒロインを描くのが上手いですね。「ヒステリックラバーズ」(→レビュー)といい。加えて男の子視点が加わるのが、個人的に読みやすい要因のひとつになっているのかも。
【男性へのガイド】
→読みやすいと思いますよー。それだけ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→二桁刊行は面白さの証。続けて読む楽しさもあり、どこから読んでもある程度楽しめる軽さもあり。こういう作品は好きです。
作品DATA
■著者:東山むつき
■出版社:秋田書店
■レーベル:ボニータコミックス
■掲載誌:ボニータCUBE,ミステリーボニータ
■既刊11巻
■購入する→Amazon