
低いささやきの外国語が
子守唄みたいだった
■借金を作り返済できなくなった貧乏美大生・鈴木圭一。怖い人達に捕まったと思ったら、舟に揺られ、気がつけば砂漠の国の奴隷オークション会場に。強欲な第一王子の手に落ちようとしたその時、代わって彼を買い受けたのは、その弟であるハリードであった。ハリードの奴隷として日々を過ごすことになった鈴木は、幾度も逃亡を企てるがなかなか上手くいかない。そしてそんな鈴木を見ても、まったく咎めようとせず、優しく真摯な対応をするハリード王子に、、彼は少しずつ心を溶かしていき…
初めてBLタグというものを使用してみました。はい、というわけでBL作品のご紹介でございます。BL関連銘柄といえば、以前びっけ先生の「真空融接」(→レビュー)をご紹介しましたが、あちらはBL風味だったのに対し、こちらはしっかりとしたBL作品になっています。ちなみに私は腐男子ではございませんので、「こういう作品は基本読まない人」目線でのレビューになりますので、予めご了承くださいませませ。
さてこちら、以前ご紹介した「森文大学男子寮物語」(→レビュー)を描いた、山中ヒコ先生の作品になります。ストーリーは、借金のカタに砂漠の国に奴隷として売り飛ばされてしまった青年・鈴木圭一が、向こうの王子様に買われ、寵愛されるというもの。奴隷ではあるものの、扱いは普通の付き人のような感じ。しかし言葉も通じない中、微妙な距離を保ち続けるハリードと共に過ごすのはやはり苦痛で、彼は何度も逃げ出そうとします。そんな圭一を愛してしまったのが、第2王子のハリード。傍若無人な兄の下、抑圧された育った彼は、非常に大人しく誠実な性格。奴隷である圭一に対しても、どうアプローチして良いのかわからず、ただただ優しく一定の距離を保って接していきます。

奴隷として行動が制限されているというのは、逆に言えば自分で考えなくていいので楽でもあるのです。この作品のひとつの核となっているのは、王子・ハリードの、自らの身の振る舞いへの苦悩。
圭一はストレートですが、ハリードは恐らく元々そっちの気あり。しかし言葉が通じない、お互いに草食系ということで、その歩み寄りは優しさに満ちています。いわゆる雰囲気漫画といわれる系統の作品で、そのことは「森文大学~」からも感じることはできましたが、こちらそれにも増して雰囲気系。とにかく説明がなく、シーンが飛びがち。それがいい意味で場所&時代的なリアリティを抑え、雰囲気の良さを際立たせることに繋がっているのですが、素人としてはもう少し説明しても良かったんじゃないかなぁ、と。あと少しモノローグを加えるだけで、それだけでだいぶわかりやすくなるはず。BL作品をよく読んでいらっしゃるような方であれば、ある程度の補完が可能なのでしょう。というか、そういう人達こそが楽しむべき作品とも言えなくもないのかも。
また絡みシーンはラストに少し出てくるだけで、実に自然に読み進めることができました。どうにもキレイな印象のある2人だから大丈夫だったのかもしれないですが、流れ的にも納得できるはず。しかし男同士の絡みをよく知らない私は、一部「これ何やってるの?」というコマがあるというまさかの状況。そういう意味でも、まだまだ読み込み不足だなぁということを痛感させられました。
今回はTwitterにてお薦めしていただいたことがきっかけでレビューをしたのですが、もし何か読ませたいBL作品などございましたら、コメントやメールなどで気軽にお申し付けくださいませ。そんな要望絶対ないと思いますが(笑)ちなみにセックスシーンががっつり出てくるような作品はたぶん無理です。そうでないのなら大丈夫なはず。
【男性へのガイド】
→あくまでBL基準ですが、読みやすさは保証。ただ楽しめるのは読んでる人だと思うので、難しいところでございます。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→雰囲気の良さは折り紙付き。お薦めにならないのは、単に私のBL消費量の問題って気が。
作品DATA
■著者:山中ヒコ
■出版社:芳文社
■レーベル:花音コミックス
■掲載誌:CitaCita(2008年12月号~2009年8月号)
■全1巻
■価格:619円+税
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