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Tag [オススメ] 2009.11.24
32190959.jpgわたなべあじあ「ひめごとははなぞの」(1)


決めたんだ!
俺 女頑張って
そんで
立派なレディースになる!!



■2巻発売です。
 田中家6人兄弟の末っ子・愛は、中学入学を目前に控えた男の子。将来の夢は日本一のヤンキーという、ちょっとお馬鹿なやんちゃ坊主。ところがその夢は、思わぬ事情によって打ち崩されることになる。なんとある朝目覚めてびっくり、女の子の体になっていたのだ…!しかしそんな愛を見ても、兄たちはいたって冷静沈着。どうやら田中家の男たちは、思春期になると女体化するというのだ。その日から、女の子・愛の苦難の日々が始まった…!

 ヤンキーに憧れる中学生が、ある日突然女体化してしまって…というコメディ。主人公は突然の事態に驚きまくるものの、兄たちはそろいも揃って冷静。というのも田中家の男たちは皆思春期になると女体化し、数年経つともとに戻るという特異体質の持ち主なのです。それゆえにサポートは完璧。女性化することを見越して中学は新設の私立中へ。学内でのサポートは諸事情で同居している幼なじみの男の子と、双子の弟が担当します。その甲斐あってか、本人も意外とすんなり女性化に対応。ヤンキーになるという夢も、レディースに置き換えることで納得させます。そして気がつけば、小さくてやんちゃな俺っ子キャラとして仲良しも何人かできるように。しかし個性的な子の周りには、自然と個性的な子が集まってくるもので、何かと騒動が…という感じ。


ひめごとははなぞの
個性派揃いの中でも特に好きなのが、クラスメイトの豪腕長身少女・蝶子。話が進むごとに色モノキャラになっていくのですが、その様子がたまらなく滑稽でかわいい。


 のっけからレギュラー登場人物が10人オーバーと、かなりのごった煮状態。しかも各人がそれぞれに個性を放っているものだから、物語としての統率は取れていません。だがしかし、それこそがこの作品の面白さ。女体化した本人の、心情の変化を描き出すのが常套手段なのですが、こちらは逆で、深く考えずに奔放に行動する主人公・愛に、周囲の人物たちが振り回されるというもの。その際に各キャラの個性を出す形なので、それぞれの差は登場人物数の割にはわかりやすく、面白いです。
 
 ストーリーとしても、「どこに向かうか」ということはさほど重視されず、ありものでとりあえず進めたらこんなんになりましたみたいな雰囲気。それがハイテンションで濃密に描かれるから、読んでいて飽きることはありません。こういう感じはなんとなくゴツボ×リュウジ作品っぽいような…。こういう作品は、すぐお腹いっぱいになりそうで、なかなかならないんですよ。ごちゃごちゃしたのは苦手…という人には向かないかもしれませんが、そうでないのであれば、一読の価値はあるかもしれません。何気に女体化した愛、カワイイしね。


【男性へのガイド】
→一応「少女マンガ」を謳ってますが、そっち系統ではない気が。当然男性にも読みやすいと思うわけで。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ごった煮だけど、それがイイ。好き放題詰め込んで、好き放題展開する、その自由さに感服。しかも無駄遣い感はあまりないし、おすすめしておこうかな。


作品DATA
■著者:わたなべあじあ
■出版社:アスキーメディアワークス
■レーベル:シルフコミックス
■掲載誌:シルフ(Vol.1~)
■既刊1巻
■価格:各580円+税

■購入する→Amazonbk1

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コメント

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From:  * 2011/04/04 19:45 *  * [Edit] *  top↑
コメントありがとうございます。
「ひめごとははなぞの」を良いと言ってくださる方がいるなんて!
すごく嬉しいです(笑)
わたなべ先生をはじめ、シルフはBL畑で活躍されている方が多いですー
本当に、オリジナルでももっと描いて欲しいですよね。
From: いづき@管理人 * 2011/04/23 21:57 * URL * [Edit] *  top↑

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