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Tag [新作レビュー] [読み切り/短編] 2009.11.30
07230530.jpg吉永ゆう「初恋白書」


どうして人は
報われない恋をするんだろう



■読切り4編を収録。ということで1話目をご紹介。
 金髪でいつも傷だらけの問題児、内海。中学のときクラス委員だった茉莉は、問題ばかり起こす彼をいつも注意する立場にいた。人一倍手がかかるため、ちょっと迷惑であると同時に、いつも友達から慕われているところが、ちょっと羨ましくもあった。そして迎えた卒業の日、彼は茉莉の卒業アルバムに意味深なメッセージを残す   「俺お前のこと結構好きだった」。お互い別々の高校に進学しばらく会うことはなかったが、そのメッセージだけはいつまでも心に残る。そして2年ぶりにクラス会で彼に再会すると…

 期待の新人吉永ゆう先生、早くも3冊目でございますよー。ということで今回も短編集。今回は計4編の読切りが収録されています。中学時代、クラス委員長と問題児だった二人のその後を描いた「夏色メモリアル」。自分の親友に片想いしている男の子に片想いしてしまった女の子を描いた「君と私の片想い」。大嫌いだった生意気な後輩からの、不意打ちのキスに揺れる「スキよりもキライ」。受験を前に、遠くの大学へ進もうとしている彼を好きになってしまった「雪に願いを」。どれも高校生がヒロインで、彼女たちの揺れる想いをベツコミ的にセンシティブに描き出していきます。


初恋白書
誰にでもありそうなシチュエーションを描いた方が、より輝く気がします。


 ベツコミはお試しの短期連載って少ないんですかね?3冊目も読切り集ということなのですが、相変わらず高いレベルで安定しています。ただ全体的に地味な印象は未だ拭えず、そうなると読切りだけで展開するのは、つまらなくはなくとも飽きが来てしまう気も…なんて思ったら連載決定ですってよ!これは楽しみです。何やらデビューほやほやで読者アンケ1位だったとか。やっぱりハマりましたか。

 作品の感想を書くと、どれもヒロイン自身の想いのたけを少ない動きで表現する、考える恋愛を地でいくような作風が相変わらず心地よいです。新人として見てもレベルが高いと思うのですが、それ以上に連載誌にフィットしたというのが大きいのかな。たぶん話の引き出しはそんなに多くないと思うのですが、それでもしっかりと読める作品に仕上げるあたりはさすが。この辺は数勝負の読切りから、連載に移行することで多少は解消されるでしょうし、要するに連載楽しみだってことです。


【男性へのガイド】
→1対1の恋愛作品がスキな人には良いかもしれません。基本的には女性が読んでこそだと思いますけど、男の子のキャラが鼻にかからない辺とかはプラスに働くのかな。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→一定のクオリティを保ち続けたまま連載へ。楽しみですね~。ってあんまりこの作品の感想書いてねぇや。。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー* 吉永ゆう「罪恋」
*新作レビュー*吉永ゆう「片想いの向こう側」


作品DATA
■著者:吉永ゆう
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:ベツコミ,デラックスベツコミ
■全1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
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稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
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2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




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売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




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高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。