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Tag [続刊レビュー] 2009.12.01
作品紹介はこちら→*新作レビュー* びっけ「あめのちはれ」



32347131.jpgびっけ「あめのちはれ」(2)


好きな子とかできた?
さぁ?



■2巻発売です。
 雨が降り、女子化している間は隣の雨谷「女子」校に通うことになった葉月たち。そこで仲良くなった女の子・明日美と、葉月は映画を一緒に観に行くが、なんと上映中に女子化が解けてしまう。どうすることもできない葉月は、同じく女子化の異変を抱える仲間たちに助けてもらい、その場はなんとかことなきを得る。せっかくいい雰囲気だったのに…。なんとなく明日美に心惹かれる葉月だったけど、あくまであれは自分が女の子だから。男のときには、話すことさえままならない…。男子のこころに、女子のからだ。ふくざつな恋心が芽生え始める、ちょっぴり変わった思春期群像劇、第2巻!


 やっぱり1巻は、この先飛躍するための準備段階でしかなかった。2巻は1巻で整えた舞台をしっかりと使いつつ、さらに話を展開させる要素を組み込み、実に独特で、だけど心地よい物語を紡ぎ出しています。


~基本は雰囲気の良い学園モノ~
 女子化して、学校を行ったり来たりという部分以外は至って普通の学園モノです。ほんとに普通の。ただ舞台が名門高校ということと、雨がキーとして使われているところから、勝手に鎌倉とかその辺を想像して、やけに雰囲気を楽しんでいる自分がいるという。「青い花」(→レビュー)の舞台みたいな。そんな心地よい雰囲気のなか送られるこの物語、どうやら彼らのホームベースとなるのは男子寮みたいですね。2巻では主に男子寮での描写が中心なのですが、そのイベントや人間関係の描写がやけにリアル(自分、男子寮出身ですから…)。特に葉月の気になるお相手・明日美ちゃんのお兄さんが、寮長を務めているというその微妙な人間関係、どうなるのか楽しみですねー。


~二つの制約を与える女子化~
 女子化の使い方が上手いんですよね。葉月は女子化しないと、堂々と明日美ちゃんと付き合うことができないのですが、その仲の良さはあくまで女の子同士のガールズトーク的仲の良さ。だからって男子になっても、メールのやり取りができる程度。どちらになっても距離が縮まらない、そのやきもき感がたまらないです。性別的な制約と、時間的な制約を一挙に楽しむことができて、とっても楽しい。


~これは狙ってますよね~
 そういえば朝の教室で、明日美ちゃんが百合の花粉(おしべ)を取っているのを葉月が手伝うというシーンがあるのですが、なにそのあからさまな表現(笑)男の子から女の子になり、言ってみればおしべを失っている状態の子に、おしべを取らせるだなんて、なんてエロティックな…!どう考えても興奮するでしょ、このシーンは。


あめのちはれ2
どう考えてもエロイシーンです。ごちそうさまでした。


 女子化したことが目的となっているのではなく、女子化してしまったなりに、学園生活を楽しもうというベクトルの話なので、ある程度話に広がりが出て巻を重ねるごとに味わいが増していくはずです。1巻では下準備、2巻ではそれぞれが自分の進みたい方向に歩み始めた感じ、そして3巻では…?今から待ち遠しいですね。


■作者他作品レビュー
びっけ「貘-BAKU-」
びっけ「真空融接」


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