
…それね
ずっと妃でいれば
夕鈴の物 だよ
■「知人の紹介なんだが、高賃金ですごく割のいい仕事があるらしい!」下級役人である父の話を聞き、王宮へやってきた娘・夕鈴。しかし仕事内容を聞かされてびっくり。それは冷酷非情で『狼陛下』として恐れられる若き王子・珀黎翔の妃として生活するというものだった。いつまでも妃がいないことが、国内に不安定さをもたらす要因になりかねない。そこで体面上だけでも、妃を雇うことになったらしい。肉食系で怖ーい王子の相手ということで、心配ばかりが募る夕鈴。しかし「狼陛下」、怖ーいのは表の顔で、実はほにゃっと和み系の子犬陛下で…!?
可歌まと先生の新作でございます。前作「ひみつの姫君 うわさの王子」(→レビュー)はヨーロッパ風のお話でしたが、今度は中国風の舞台。ヒロインは、下級役人の娘・夕鈴。父親から聞いた割の良いバイトの話にホイホイついていったらなんとその仕事は王子の妃役をするというものだというから驚き。しかもその王子というのは、冷酷非情で『狼陛下』として恐れられる王子。こんな話聞いてない!と早々に逃げ出そうとする夕鈴でしたが、その際に王子の本性を目撃してしまい、逃げられなくなることに。その本性とは、世に知れ渡る『狼陛下』とは程遠い、ほんわか和み系の子犬陛下で…というお話。

ヒロイン・夕鈴も、なんだかんだで言いたいことは言う。ウジウジしていないので、見ていて気持ちいいです。
王子がわざわざ狼系を装っているのは、ずる賢い役人たちにナメられないようにするため。普段のほんわか子犬キャラと、公のときに見せる狼キャラ。そのギャップを楽しむ作品…と思いきや、実はどちらも王子の本性であるという設定で、王子の全てを見るのは非常に困難。ただどちらにせよ、人心を掌握する術には長けており、ヒロインもまんまとそれにハマってしまいます。読切りメインであれば、王子の性格をそこまで難解にしないほうがわかりやすくて良かったのでは、とも思ったのですが、めでたく集中連載が決まったようで。そうなるともう、これといってひっかかるようなところはなく、後は作者さんの腕次第という感じになるのでしょうか。
シチュエーションとしては前作と似ていて、誤解されている王子が相手でしたが、そのタイプは全く逆。前作王子は、ただただ実直勤勉で不器用の典型みたいな人間でしたが、今度の王子は性格チェンジはお手の物で、人心を掌握する術に長ける超器用な人間。相手役がその作品の雰囲気を決定付けることが多い少女漫画では、例えシチュエーションが似たようなものであっても、相手役の性格が異なれば大分違った雰囲気の作品に仕上がります。この変化のさせ方は上手いなぁ、とただただ感心。話運びもかなり安定しており、安心して読み進めることが出来る作品になっています。
【男性へのガイド】
→王子の性格を考えると前作の方が向いていたかもしれません。トキメキならばこちらの方が上ですが。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→オススメにしても良い水準だとは思うのですが、少しだけ華が足りない。その分ずば抜けて安定しているので、派手さを求めない方であれば十分楽しめるはずです。
作品DATA
■著者:可歌まと
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:Lala(平成21年4月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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