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Tag [オススメ] [新作レビュー] [読み切り/短編] 2009.02.07
曲がり角のボクら中村明日美子「曲がり角のボクら」


同じじゃないよ
同じじゃない
同じ恋なんてない
恋っていうのは…



■中村明日美子さんの短編集2作目です。計5編に書き下ろし1編を収録。
「阿部くんと黒羽さん」…少し冷めた女子高生が、クラスメイトと先生の恋愛修羅場を目撃することから始まる、青春まるだしの恋物語。
「となりの吸血鬼」…吸血鬼に関する著書を書いた大学教授のもとに、本物の吸血鬼であると名乗る男が現れる、異色ファンタジー。
「みんなきらきら」…愛娘とそのお父さん、そして愛娘の通う幼稚園で人気の保父さんの、ハートフルコメディ。
「さくらふぶきに咲く背中」…幼稚園生のときキスをした女の子同士が、高校生になって偶然再会。女子高生の、友情と愛情、自我に揺れる様をセンシティブに描きます。
「曲がり角のボクら」…学園祭を前に、勢いに乗って気になる女の子に告白したことから始まる、男2人、女2人、あわせて4人の青春グラフィティ。

 「このマンガがすごい! 2009」で、BL系作品「同級生」をオンナ編第18位にくい込ませた気鋭の作家・中村明日美子さんの、白泉社進出2作目の短編集です。BL作品の特徴のひとつとして、そのセンシティブや、リアリティというものが挙げられます(もちろん該当しないものもあるけれど)が、そこからBL要素さえ取り除いてしまえば、男性にも実に読みやすい作品の出来上がり。この作品も、BL臭さは一切なし。それどころか、百合要素を一部盛り込んできております。
 
 収録作品全てテイストが異なっていて、しかもクオリティが全く落ちない。すごいです。しかもしっかり捻るとこは捻ってきて、終始飽きさせることなく読ませてきます。そのため、短編なのにがっつり読んだ気分に。中村明日美子さんの魅力がギュッとつまった一冊になっているんじゃないでしょうか?なかなか上手く表現できませんが、とにかくこの作家さんは抑えておいて絶対損はないです!強力にオススメしたい1冊。

 個人的にキたのは「さくらふぶきに咲く背中」。百合要素を含んだ、女子高生2人のお話なんですが、ヨウちゃん反則やろ、と。そしてまりちゃん、素敵すぎるやろ、と。なんだろう、言葉では言い表しにくいのですが、空気感がすごくいい。もともと女の子同士の友情モノに弱いんですが(「対岸の彼女」でボロボロ泣いたりとか…)、久々にビビっときたお話でした。明日美子さんの描く女の子って、どうしてこんなにもかわいかったり、かっこよかったりするのでしょうか。あー、もう大好きです!


【オトコ向け度:☆☆☆☆☆】
→少女漫画独特の甘さや、激しい動きというのはありません。加えて男性メインの話もあり、読みやすい作りになっていると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→今月の1位はコレで決まった!って言うのは言い過ぎかもしれませんが、それぐらい良い作品でした。中村明日美子さんは今後絶対にくるはず。知らない方はぜひチェックしてみてください。1作目「片恋の日記少女」もオススメです。


作品DATA
■著者:中村明日美子 作者サイト→「明日美子ビヨリ。
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICSスペシャル
■掲載誌:メロディ(2006年1月号,2007年2月号,12月号,2008年6月号)
■全1巻
■定価:619円+税

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