
いつか将来のどこかで
この夏の事を思い返したとして
その時の自分に
もったいないとは言わせない
■神山高校2年・伊勢崎は、ある日隣りの女子高の窓辺に佇む女子生徒に心奪われる。登校の度に手を振ったり、振りかえされたり…気がつけばすっかり彼女(通学路のマドンナ!)の虜に。そして2月、3年の彼女の卒業の日が近づくと、ぱったりとその姿を現さなくなってしまい…!?笑ってケンカして恋してバカして走り出す、泣けるほどアツい17歳の春から夏、神山男子高4人組が繰り広げる、青春全力疾走DAYS!!
「赤髪の白雪姫」(→レビュー)で話題を集めるあきづき空太先生が贈る、男子高校生の青春の日々を綴った新作。舞台となるのは、私立の男子高校・神山高校。物語は、そんな男子高校に通う一人の生徒・伊勢崎くんが、隣接する女子高の生徒に恋をするところから始まります。恋をしたと言っても、話をしたことはなく、手を振ったり文字で会話したりという程度。相手の学校は全寮制で、彼女は外に出てくることはありません。そして近づく彼女の卒業の日…神山高校は定期考査…でもどうにかして彼女に会いたい…!伊勢崎のその思いの強さを感じとった彼の友達たちは、卒業式の日にとある一大作戦を決行することに。以来今まで以上に頻繁につるむようになった4人。そんな4人の青春の日々を、少しだけ切り取ってあなたにお届けしていきます。

こんな情景すら懐かしい。実際に経験していなくとも、青春を感じてしまう。そんなシーンが盛りだくさんです。
メンバー構成は、人懐っこくて人気者の伊勢崎を中心に、成績優秀でピアノまで弾ける秀才・倉田、蕎麦屋の娘に片想い中のお調子者・上村、そして常にクールでマイペースな野上の4人。タイプとしては、社交的で適当な3人と、真面目で遠慮しがちな倉田という感じに分かれ、その倉田が勢いに流されがちな3人を上手いこと制止するブレーキの役割を果たします。それによって、常に一定のスピードで流すのではなく、溜めた上での爆発に繋げられるので、話に一層メリハリをつけることに成功。そんなどこかアンバランス彼らの青春の1ページを、各話一人ずつクローズアップする形でめくっていきます。とにかく悔いを残さないように全力疾走。やたらと敏感で、やたらと向こう見ずな彼らの姿は、とにかく爽やかの一言につきます。
タイトルの「青春攻略本」が示すように、彼らはなんだかんだで自分たちがやり残してしまったことを、しっかりとやっていくんですよね。その完璧なまでの回収は、まさに「攻略本」という感じ。ただ青春というのは、どちらかというと常に後悔や失敗と共にあり、そこから生まれる歪みや凹みこそが、青春への愛おしさを生むという側面があると個人的には思っています。それゆえに、この青春は若干キレイすぎる気もしなくもない。ただそれが良くないと言っているのではなく、そもそもそこを狙って作られた作品なのだから、それを楽しむべきで。自分ができなかったことや、やりたいと思っていたこととの物語での実現や、対比を楽しむも良し。また物語の裏にある、見えてこない傷や凹みを探して楽しむもよし。とにもかくにも、この気持ち良さというのはなかなか描けるものではないと思います。「赤髪の白雪姫」と同じくキレイではある、けれど薄くはない。誰にもある青春の思いでと憧れに、この作品を通して浸ってみませんか?
【男性へのガイド】
→主人公たちは男の子。当然読みやすいと思われ。多少は女子用(というか腐女子?)に作られているはずですが、まったく気になりません。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→あきづき先生の作品はもう雰囲気からして大好き。やや薄味になりつつある赤髪の白雪姫とは異なり、こちらはある程度の濃度を保って進行しそうなので、期待したいです。2巻が楽しみ。
作品DATA
■著者:あきづき空太
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:Lala(平成21年3月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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