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Tag [新作レビュー] 2009.12.05
07232374.jpgなかじ有紀「純愛ラビリンス」(1)


まだ
誰のものにもならないで



■ごくごく平凡な女子高生・荻原羽美には、一つだけ平凡ではないことがある。それは、兄の美斗が芸能人であること。幼い頃から兄のことが大好きな羽美は、彼のファン第一号を自負している。事あるごとに兄のベッドに忍び込み、街中で兄のポスターを見つければついつい見とれてしまう…。そんなある日、たまたま駆けつけた撮影現場で、兄のラブシーンを目撃してしまい、大きなショックを受ける。この秘密の思いの向かう先は…?

 なかじ有紀先生の新連載でございます。今度は芸能もの&兄弟もの。ヒロインは、小さい頃から兄のことが大好きな女子高生・羽美。そんな大好きなお兄ちゃんは、現在売り出し中の若手俳優・荻原美斗。かなり多忙ではあるものの、家族と一緒に生活していて、羽美との関係も良好。そんな中現れたのが、同じく現在売り出し中のアーティスト・レイラ。人一倍ナルシシズムが強い彼が、あろうことか荻原家の隣に引越してきて、さらには羽美と同じ高校に入ったものだから大変。元々あった妹愛は、羽美からのそれすらも上回る勢いで発露していくようになります。


純愛ラビリンス
この距離感。白泉社の兄妹ものってやけに距離感が近いような気がします。


 美斗とレイラとの関係から芸能界について描きつつ、最後は羽美と美斗の恋愛模様について描いていくのかな、という感じ。羽美は兄を独占したいというか、誰かのモノにならないで欲しいという想いは抱えているものの、具体的な恋愛感情としては表れていません。それに対し表には出さないものの、兄妹以上の感情を妹に抱く兄・美斗。そのことは、彼が家族の中でただ一人血が繋がっていないということと共に明らかになり、今後の話を展開していく上での大きな布石となっていきます。

 なかじ先生ですから、こういった設定がありつつもしっかりと明るく軽快な話に仕上げてきます。芸能人設定、兄妹設定、どれをとってもどこか古臭いのですが、それでもしっかり読ませてしまうのは、ベテランだからこそなせる技か。メリハリを持たせて感動を…という要素が薄めなぶん、話に身をまかせて一定のテンポで物語を楽しむことができるようになっており、ハマるかどうかは別として、非常に読みやすい作品であると言えるのではないでしょうか。良くも悪くもキャリアの長さを感じます。


【男性へのガイド】
→今後レイラがどう変化していくか。彼が一つのハードルになると思うので。現状だとやや厳しいか。兄妹および、クラス関係に絞れば非常に読みやすいを思うけど。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→どうなのこれはと思わせつつも、しっかりと読み込ませてしまう手腕。あえてオススメするような作品ではないと思いますが、気になる方は買ってもよいのでは。そもそも気になる人って、なかじ先生のファンだと思うので。


■作者他作品レビュー
*新作レビュー*なかじ有紀「HEAVENカンパニー」


作品DATA
■著者:なかじ有紀
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLa(平成21年6月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「LaLa」コメント (1)トラックバック(0)TOP▲
コメント

やっと最新刊が出てとっても嬉しいです。

じれったいけど、それも仕方ないかなと思ってます。

今風のエロマンガと違って、なかじ先生のはいつまでたってもいいもんです。

昔ほどマンガを読まなくなったけど、なかじ先生の本はほとんど持っていますよ。
From: ワット * 2012/06/11 22:17 * URL * [Edit] *  top↑

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