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Tag [新作レビュー] 2009.12.10
bi-nasuniarazu.jpg吉原由起「ヴィーナスにあらず」(1)


ウェルカム俺んち
さあ脱いで!



■華やかなモデルを夢見ながら、上京してきた与志子。けれどモデルの道は厳しい。雑誌やファッションショーのオファーなどそうそうゲットできるものでもなく、あるといえばせいぜい美大のデッサンモデルのアルバイト。ところがある日、彫刻界の寵児と言われる講師・中条からセクハラを受けた与志子は、思わず抵抗して手をあげ、そのままクビになってしまう。まさかこんな形で、バイト先どころか事務所までクビになるなんて…。途方に暮れる与志子だったが、そんな彼女を救ったのは、なんと首の原因を作った中条だった。日給3倍という言葉につられ、彼の彫刻のモデルとなった与志子だったが…!?

 「蝶よ花よ」(→レビュー)の連載を終了させて、新たにスタートさせたのがこちら。今度のヒロインは、モデル志望の女の子でございます。相手役との出会いは衝撃の一言。美大の一室で、ごくごく普通にデッサンモデルをこなしていたところ、彫刻家の講師が近づいてきたと思ったら、いきなり服をひんむいておっぱい丸出しに。そりゃあ彼女も拳を振りかざします。しかしそのことが騒動となり、仕事どころか事務所との契約まで破棄されてしまい、あっという間に無職に。そんな彼女に救いの手を差し伸べたのが、彫刻家の講師・中条でした。天才芸術家だからでしょうか、どこか普通の人とは違った感覚を持っている彼は、与志子の体にべた惚れ(あくまで芸術的な観点から)。彼女を専属のモデルとして雇うのですが、やたらと体をベタベタ触り(芸術家の性)、何かにつけて服を脱がそうとする(あくまで芸術家の性)彼に、与志子はとまどってばかりという…


ヴィーナスにあらず
天然というか馬鹿というか…。どちらにせよ真剣に対峙すればするほど大変という厄介なタイプ。


 プチコミはエロが入っていた方がポイントが高いわけですが、同時にヒロインは処女設定の方がどちらかというと好まれるというアンバランスさを内包しており、その擦り合わせがひとつの課題になります(どちらかを完全に捨て去るという選択肢もあるけれど)。そんな中こちらは、芸術家のモデルの仕事という設定を通して、無理なくエロシチュを再現。加えてそういったシチュエーションから生まれる、ガチンコでないがゆえの軽さが、先生の売りであるギャグによーくフィットしています。ちょっと中条さんがマイペースで天然すぎる気もしますが、そこはヒロインの頑張り次第ということで。

 1巻は3話のみの収録で、以降2巻に続いていきます。個人的には同時収録の読切りの方が好みだったり。やっぱり笑いがあると読みやすいですね。


【男性へのガイド】
→笑いが読みやすさを誘うものの、作者さんの過去作との比較でいくと、若干弱め。プチコミ基準であれば読みやすい部類ではあると思いますが。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→ストーリーにはいくつか引っ掛かりを覚えるものの、コメディとしてなら十分に楽しめる水準にあると思います。読む際に何を重視するかによって変わってきそう。


作品DATA
■著者:吉原由起
■出版社:小学館
■レーベル:プチコミフラワーコミックスα
■掲載誌:プチコミ(2009年7月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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