
あのときあんたも
こんな気持ちでいてくれたのかな
抑えられないような
こんな気持ちで
向かってきてくれたのかな
■高校入学して1か月ちょっとたつ最近、やつの存在に気づいた。毎日休み時間ごとにウチのクラスに現れ、なぜか私・岡本潤を見ているらしい、隣のクラスの男子・矢倉由太郎。話したこともないのに、どうして私なんか…?後日廊下で偶然ハチ合わせたことをきっかけに、積極的にアプローチしてくる由太郎。最初はその暴走っぷりに恐れを成し、拒絶一辺倒の潤だったけど、やがて彼のピュアさや真剣さが少しずつ見えてきて、気がつけば普通に話すように。けれども恋心は…!?暴走男子のユタローは、今日も潤のもとへ突っ走る!!
直前に「彼はトモダチ」(→レビュー)を読んだせいか、もの凄く爽やかに感じてしまったこのお話。高校生の恋愛を描いた、極めてオーソドックスなストーリーではあるのですが、そこに「超絶ピュアで暴走気味の男の子」を投入することによって、他とは一味違った爽快さと軽快さを生み出しています。ヒロインは、ごくごく普通の女子高生・潤。入試の時に、体調の悪そうにしている生徒(もちろんユタロー)を気遣ったことがきっかけで、彼に好かれてしまうのですが、その彼がものすごく全力体当たりでくるような男の子だったのでした。とはいえ女慣れしていてスマートに誘えるようなタイプというワケではなく、純情の極みのシャイボーイで、相手を想う気持ちが強すぎた結果行動に出ちゃってるという感じ。そのため潤を目の前にしても「好きだ」というのが精一杯で、相手の反応なんか見ている余裕はありません。相手の都合なんかお構い無しに暴走する彼に、潤は当初戸惑いを覚えるものの、あまりにもストレートに伝わってくる彼の想いと行動に、いつしか心許すように。そして気がつけば、行動を共にすることが多くなっていくのですが…という流れ。

人の話は聞かない。というか聞く余裕なんかない。加えて常に敬語。この辺に余裕のなさを感じて、なんだかとっても微笑ましい。
暴走男子というワンアイデアで回す、豪速球青春ラブストーリー。とにかく相手役の由太郎が素敵すぎます。とにかくピュアで、一生懸命なんですよ。気持ちばかりが先走って、全然上手くいかないし、カッコ悪い。けれどそういう姿は、ものすごく素敵に映るんですよね。そんな彼の姿を見て、気がつけば心惹かれていくヒロイン。そりゃここまでされたらなびくわさ。例えばこのキャラって、少年漫画などに居がちで、野球部とかに所属してそうなんですが、決して少女漫画の相手役にはなれないようなタイプなんですよね。童貞臭が強すぎるというかなんというか。でもこれは良い童貞臭(なんじゃそりゃ)だし、こういうタイプのキャラって、絶対に需要あるはず。そんな男の子を目玉に据えてきたってことがまず嬉しいし、それだけでなく作品としてもその持ち味を存分に活かして、爽やかで軽快な物語に仕上げてきています。
ワンアイデアで、それがハマらなければお終いなのですが、いや私はこれ好きですよ。全力で愛されることの嬉しさを、存分に体感することができます。とりあえず愛されるっていいよな
【男性へのガイド】
→ロマンチックさの欠片もないけれど、青春の息吹は確かに感じることのできる恋愛もの。学園青春ラブストーリーにどういった方向性を求めるかで変わってきますが、とりあえず読み進めることを阻害する要因は皆無かと思われます。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→ワンアイデアだけで、ストーリー的にもこれ以上の広がりを見せることは無さそうだし、そこまで流行る感じでもないけれど、それでもオススメにしてしまいたくなるような魅力が、由太郎と潤にはあった。勢いだけの青春ラブコメディですが、それがやけにしっくりくるキャラ配置なのでした。
作品DATA
■著者:熊岡冬夕
■出版社:講談社
■レーベル:KC別フレ
■掲載誌:別冊フレンド(2009年7月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税
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