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Tag [新作レビュー] 2009.12.14
yamaari.jpg日下直子「ヤマありタニおり」(1)


つまり「折りたたむ」ということは
日本人の魂に根付いた文化なのである



■内気な少年・相田義経は、折り紙歴16年のスペシャリスト。折り紙と出会って以来、他のことには一切わき目もふらず、ただただ折り紙に没頭してきた。そんな彼が入学した高校は、生徒全員が何かしらの部活に所属しなくてはならない。何にも興味がないし、一体どうすれば…そう悩んでいた彼は、無意識のままに折り紙を折る。そんな彼の姿を目の当たりにし感銘を受けたのが、陸上界のヒーロー・宮本と、学年主席のクラス委員・布施。「オレ折り紙部やる」宮本の一言によって、急遽立ち上がった折り紙同好会。果たして彼らの行く先は…!?

 折り紙部の面々を描いた、前代未聞の青春ギャグコメディでございます。また突拍子もないテーマをぶち上げてきましたよ。さすが企画に定評のあるKISS。干物女は見事に流行りましたが、折り紙男子は果たして。
 
 さて主人公となるのは、人生の全てを折り紙に捧げてきた気弱な少年・相田義経。他人の目を気にして、なかなか堂々と折り紙を折れない毎日でしたが、やはり紙を前にすると手が勝手に動いてしまう。入部届を思わず折ってしまった相田くんでしたが、彼に飛んできたのは怒号でも嘲笑でもなく、賞賛の声でした。その声を上げたのは、同じクラスで元陸上界のヒーロー・宮本くん。相田くんの折り紙に感動した彼は、即座に折り紙部の設立を決定。相田くんを引き連れて、部員集めに走るのでした。しかしそうそう集まるはずもなく、賛同してくれたのは同じクラスで学年主席のクラス委員・布施くんのみ。結局部活ではなく、同好会として活動をスタートさせます。


ヤマありタニあり
「猫を折れ」という命題での、二人の完成作。とりあえずこの“間”ですよね。こういうのが好きな人は、確実にハマるはず。


 最初に説明したように、青春ギャグコメディです。例えば色ものテーマで青春を描く「ちはやふる」(→レビュー)は、かるたという日本文化を青春スポ魂ものに昇華させた作品ですが、こちらは折り紙というテーマを、シュールなギャグコメディに落とした作品。部活という枠組みと、折り紙が持つ数学的な要素を活用し、しっかりと青春ものとして機能させてはいますが、基本としたいのはギャグ・コメディっぽい印象。そういう意味では、青春モノを落としているというよりは、例えば「ピューっと吹くジャガー」であるとか、「ギャグ漫画日和」に収録されているツタンカーメン部や半開き部みたいなネタ的なものを、青春部活ものに昇華させていると捉えた方が正しいのかも。
 
 とにかくシュール。ネタがシュールというか、まず折り紙をチョイスしたということがある意味ではシュールなわけで、そのままそれを活かす形でネタにしている時点で、このマンガは勝ちなのです。真剣な部活モードと非日常なギャグモードが、微妙でありながら絶妙に絡み合うことで生まれる独特の風合いは、人によってはかなりハマるはず。そんな中少し残念だったのは、折り紙の大会を完全なネタとして描いてしまったこと。これをある程度真剣なものとして描き、かつライバル校を増やしていれば、物語にさらなる幅が生まれたろうになぁ、と。


【男性へのガイド】
→この手のギャグが好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→妙にクセになる面白さ。シュールなギャグに依存している分、ダダハマりかからっきしかって感じがするのですが、果たして。


作品DATA
■著者:日下直子
■出版社:講談社
■レーベル:KC KISS
■掲載誌:KISS
■既刊1巻
■価格:419円+税

■購入する→Amazonbk1

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