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Tag [オススメ] [新作レビュー] 2009.12.17
hasitanakutegomen.jpg石田拓実「はしたなくてごめん」(1)


………おお
MAX照れ笑い与倉
…これは あたしがさせた顔だ
………だから
あたしのだ。



■西真奈緒17歳、女子高生。早くに父を亡くし、家事が苦手な母の変わりに家事を請け負い、妹の面倒もよく見る副委員長。自分で言うのもなんだけど、それなりにいい子。そんな真奈緒のマイブームは、真面目なメガネ男子である委員長をネタに、エロい妄想をすること。実際の恋愛にはとりあえず興味はない。今は妄想だけでお腹いっぱい。ところがある日、とある事をきっかけに与倉と急接近!?よもや現実であんな事になるなんて…!?

 同じクラスの委員長をネタに、エロい妄想をして楽しむヒロイン・真奈緒。そんな彼女が、ネタにしていた委員長と現実で急接近してしまうというラブコメ。っていうか説明を見返すと、あたかも真奈緒が委員長をオカズに…みたいな表現に受け取られてしまいそうですが、そんな事はありません。委員長を主人公に、様々な相手(Ex.女教師)とカップリングしてエロシチュ妄想を楽しむという、エロ漫画家のような嗜好の持ち主。そのエロネタの元となるのは、一手に引き受ける家事の疲れを癒すために、時折家を抜け出して一服しながら公園で読む、エロい少女漫画。真面目でいい子をしている彼女には、こんな休息も必要なのです。今日も今日とてタバコ片手にエロい少女漫画を楽しんでいたところ、すぐ近くには女性ともめる委員長・与倉の姿が。「女の影など微塵も感じさせない彼が…!?」「真面目な西さんがタバコ…!?」お互いに最初は驚いたものの、後にふたりは結託。そう、秘密を共有するからこそ、芽生える友情ってのがあるものなのです。そこから妄想ではなく、現実での恋が始まる…予感?というような流れでございます。


はしたなくてごめん
ヒロイン真奈緒の考え、行動がやけにツボ。別に共感とかそういうことは全くないのですが、やけに納得してしまうというか。この自然な不自然さがいいではないですか。この時点ではなかなか余裕があるものの、やがて余裕がなくなっていくところなども見物ですよ。

 
 普段はいい子で、隠れてタバコ…なんてちょっとステレオタイプのイタい子みたいな感じですが、ヒロインの性格がかなりサバサバしているため、あまりそういった陰気だったり歪んでいたりというような印象は与えません。ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ斜に構えた女の子というか。結構いそうな感じなんですよね、こういう女の子。それなりに考えてるけど、ルールを持っているわけではないので自由に動いていて、そんな自然な姿がやけに現実臭くさせている感じ。そんな彼女の相手役となるのが、委員長の与倉くん。いわゆる少女漫画のヒーローというような男の子ではなく、地味で真面目な男の子。実は裏の顔が…みたいな事もありません。あくまで普通にいそうなライン。この組み合わせが、地味ながらいい味出していて面白い。
 
 「現実の恋にはとりあえず興味無し、妄想だけでお腹いっぱい」というヒロインが、ひょんな事から男の子と急接近し、恋に目覚めていくという初恋物語なのですが、トキメキを描こうとか美しさを出そうなんて意図は全然なし。カッコ悪く不器用な二人の姿を、淡々とコメディに落とし込んでいきます。この飾らない感じが、読みやすさに繋がるはず。華はないけど、味はあるぞ。なんてことない設定なんですが、いや、面白かったです。これは次も買いたい。


【男性へのガイド】
→男の読み手を阻む要素はかなり少ないかと。読みやすいと思いますよ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→リアルなラインに留まるわけでもなく、かといってコメディとして大袈裟に走る事もない。どっちつかずでアンバランスに見せつつも、これが絶妙なバランス感だったりする。ちょい馬鹿な、勢い系の良作青春ラブコメということで、ひとつオススメで。


作品DATA
■著者:石田拓実
■出版社:集英社
■レーベル:りぼんマスコットコミックス
■掲載誌:Cookieボックス(平成21年春号)Cookie(平成21年8月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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