
背中から聞こえる
その歌は
私の大好きな
やさしい歌
■花寺向日葵、高校1年生。5人兄弟のまん中で、唯一の女の子。6年前に他界してしまった両親に代わって、料理に末っ子のお守りに大忙し。バンドマンの長男に、お水の仕事で美しさを磨く次男、クールでしっかり者の三男に、まだまだ小さい四男。優しく、でも自由すぎる兄弟たちと一緒に、貧乏ながらも楽しく毎日過ごしてます!そんな花寺家の日常を、ちょっと覗いてみると…ほら、あったかで賑やかな時間が流れてる。
前作「キラメキ☆銀河町商店街」(→レビュー)は10巻まで刊行。めでたく完結を迎え、新たにスタートさせたのがこちらの連載になります。前作では商店街の幼なじみたちの青春群像を優しく描き出しましたが、今度は家族愛を描いていきます。主人公となるのは高校1年生の長女・向日葵。兄弟の中で紅一点である彼女は、主に料理などの家事を担当。一家の胃袋を支えています。そんな彼女たちと一緒に暮らすのが、個性的すぎる兄弟たち。やたらアツい性格の長男に、カマっぽい次男、冷静沈着すぎる三男に、まだまだ手のかかる四男。そんな兄弟たちとの触れ合いを軸に、さらにヒロイン・向日葵の高校生活も絡めて、優しさと明るさに溢れた物語を展開していきます。とりあえず学園:家族=2:8ぐらいの割合で、基本はホームコメディという感じ。

基本的にみな仲が良い。そんでもってテンションが高い。明るいから乗り越えられることがあるってことですよ。
白泉社花とゆめは、物語の導入ですでに主人公が不幸な生い立ちを背負っている事が多いのですが(Ex.「つい先日、育ての親が他界して独り身になってしまったのですが…」)、この作品は両親が健在の頃がスタートになります。この時のいわば回想シーンが、絆の強さを裏付け、後々まで響かせる機能を発揮。序盤は他の作品のような入り方でないので、若干の戸惑いを覚えつつも、こういう入りもまた良いなぁ、などと思ったり(両親死んでるので「良いなぁ」ってのは変ですけど)。正直お父さんが出てきて1コマ目で、「あ、なんかこの人死ぬ気がする…」と思ったのは秘密だ。でも白泉社で不幸がない家族ものなんてありえないもの。不幸のない中での温かい家族ものというのも見てみたかった気もしますが、そうなるとかなりの技量が要求され、大変な事に。またふじもと先生は前作で若干の話の薄さが感じられたのですが、この揺るがない悲しみの投入によって、その薄さをかき消し、長所の明るさのみを活かす事に成功しています。
1巻終了時点で、(完)とか書いてあっても違和感ないような終わり方をしているのですが、2巻以降どう展開していくのでしょうか。変わり者の家族だけでなく高校生活からも恋愛や友情に発展しそうな要素を絡めており、これからいくらでも展開できそうなので、ネタの心配は無いと思いますが、だからこそ1巻の終わり方はもったいない!だってなんの引っ掛かりもなく、キレイに終わっちゃったんだもの!この引き方はちょっと損してるなぁと思ったり。
【男性へのガイド】
→優しさに溢れた物語は、男性陣にもある程度好評なはず。いわゆる「読んでいて安心」という系統のお話だと思います。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→前作では青春にありがちな痛さや辛さみたいなものを描ききれていないような印象を受けたのですが、それが家族ものに移行した事によってそこまで気にしなくても良くなりました。ちょっと派手や辛さに欠ける部分はあるかもしれませんが、それを補ってあまりある、作者さんの魅力が存分に発揮されている作品かと。好きな人は好きだし、そもそもこれを嫌う人はほとんどいないと思うのです。
作品DATA
■著者:ふじもとゆうき
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ(平成21年9号~)
■既刊1巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon