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Tag [オススメ] 2009.12.22
07212409.jpg高尾滋「いっしょにねようよ」(1)


…お前が
どーゆー決着をつけるか興味出て来たぞ
お前の罪悪に!



■2巻発売です。
 宇佐美一子は15歳の家出少女。姉夫婦と一緒に暮らしていたが、とあることがきっかけで家を飛び出し、もう十日目。さすがに行く宛が尽き倒れそうになっていたところ、お面を被った少年に拾われ、気がつけば見知らぬ家のベッドの上に。そこには、一子を拾った少年・古白をはじめ、勝ち気な少女・春香、生真面目メガネの緒方、優しい家主の直哉と、個性的な人間たちが一緒に生活していた。そんな館に、お世話になることになった一子だったけど…!?

 高尾滋先生が贈る、同居ラブコメでございます。ヒロインは家出少女の一子。姉夫婦と同居していたものの、姉の子供をケガさせてしまったことをきっかけに家出。その後少ないあてを頼りながら数カ所を転々とするも、やがてそれも尽き、精根尽き果てようかというときに、仮面を被った謎の少年にその身を拾われます。連れて行かれたのは、個性的な面々が同居をしている館。一子を拾った少年・古白もかなり不思議な雰囲気を醸し出す個性派なのですが、同居している面々もかなりの個性派揃い。そこで手厚く保護してもらったお礼にと、料理や洗濯、酔っぱらい(家主)の介抱などをしてやったところ、「ウチで住み込みのアルバイトをしない?」と打診され、一緒に住む事になります。


いっしょにねようよ
ヒロイン同様、各々内面に問題を抱える住人たち。中でも気になるのが、元気娘の春香ですよ。このシフトチェンジの仕方がすごい。


 その後同居していた姉に居場所がバレ、同時にヒロインが抱える心の傷も露呈していくのですが、このお話はさしづめヒロインおよび同居者たちがそれぞれに抱える“問題”を解決・納得させていく様子を描いた作品と言えましょう。シチュエーションとしてはドラマ「ラストフレンズ」のような感じと言えば伝わりやすいかな。ヒロインが抱える心の闇(=病み)は、子供の姿を視ることができないというもの。そのため館の住人である緒方の子供の姿も見えないし、かつての同居者であった姉の子供も視ることができず、その結果その子供にケガをさせてしまい家出に至ったという経緯がありました。その裏には、ヒロインが姉の結婚相手の事が好きだという設定があり、その二人の愛の象徴である子供は、自分の存在を真っ向から否定するものとして彼女を追いつめるのです。そういった、自信の存在すら揺らいでしまっているような人物たちが、物語を構成し紡いでいくわけですから、明るい話一辺倒ということには当然なりません。
 
 またかなり説明を端折っているので、決して読者には優しくないです。爽快感はゼロで、合わない人には合わない。けれどもハマる人にはとことんハマる。そんな感じの作品。こういった系統の作品は、総じて長期化して鬱鬱とした展開の繰り返しになることが多いのですが、この作品に限って言えばそこまで重苦しくもならなそう。トラウマの克服も意外と早いし、何より「ラブコメ」って言ってるしね!開始5ページで話がわかるようなネタ勝負の作品が多い白泉社の作品群の中に、たまに混ざるこういった作品は、個人的に好きだったりします。


【男性へのガイド】
→好きな人は好きだと思うけども。男女差よりも、その人の物語嗜好(トラウマ的なエッセンスや、白泉社的エッセンスに耐えられるか)が重要な気がします。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→1巻で良いと思った人は、買い続ければ大正解になるはず。1巻で「普通だけど気になる」ぐらいの人も、続きを買ってみる価値あり。クセのある内容だけど、結構受け皿は広いんじゃないかと思ってみたり。


作品DATA
■著者:高尾滋
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ(平成20年第7号~連載中)
■既刊2巻
■価格:各400円+税

■購入する→Amazonbk1

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