
毒は使い方しだいでは人を生かす薬にもなるというし、いいんじゃない?
お前にはぴったりの仕事だと思うわ
■11巻発売しました。
大陸の片隅にある小国、ペアゾル王国。その国の姫・プリムラは、年頃にも関わらず剣技の鍛錬に明け暮れる毎日で、巷では「鋼の姫」と呼ばれている。そんなある日、体調に異変をきたしたプリムラ姫の元に、いつもとは違う若い薬師が呼ばれる。あらゆる毒と薬に精通し、どんな病をも治してしまう天才薬師・アルジャン。彼の登場に、プリムラ姫は少なからず驚いた様子だった。それもそのはず、二人はかつて…
秋田書店のロングヒット作品です。主人公はタイトルにもなっているように、若い凄腕薬師・アルジャン。あらゆる毒や薬に精通し、患者の様子を見れば立ち所に処方箋を取り出し、回復に向かわせる。そんな彼と知り合いなのが、王国の姫・プリムラ。「鋼の姫」などと揶揄(?)される彼女は、その呼び名が示す通りわんぱくで元気いっぱい。王が不在なのに、公務はほったらかしで到底姫などとは呼べないような女の子。そんな一見なんの接点もないような二人ですが、実は過去に繋がりがあり、この度数年ぶりに再会したのでした。その繋がりとは、かつてアルジャンがプリムラの食事の毒味役をしていたというもの。幼い頃しばらくの間毒味役をしていたのですが、彼が猛毒に当たり倒れた様子を見て、プリムラはいても立ってもいられずに彼を逃がしたのでした。それ以来の再会ですから、二人の中に走った衝撃は大きなものだったでしょう。以来何かにつけてアルジャンを呼びつけるようになったプリムラでしたが、アルジャンはあまり乗り気ではないようで…という設定。

「お前さえいれば、私は天下無敵だもの」無条件で自分を信頼してくれる相手がいる。それだけでこんなにも幸せな気持ちになれるとは。
というのもアルジャンはとある特殊な体質の持ち主で、それがプリムラと出会わせ、また二人を離す要因となっているのでした。その体質とは、彼自身が毒であり、触れるものをみな毒で侵してしまうというもの。彼は元々人間兵器として育てられ、体内に毒を有するようになったのですが、紆余曲折あり人売りに出され、そこをプリムラの父である王が、毒味役に適任(特異な体質なので毒が効きにくい)ということで買い連れられてきたのでした。この体内に毒を持っているというのが大きなポイントで、お互いに相手のことを想っている(恋愛感情かは別として)のに、触れることさえ叶わないという悲劇を演出。ヨーロッパを思わせる舞台に、薬師と姫を中心としたヒューマンドラマという、かなりオーソドックスな物語を展開するこの作品に、こういう悲劇性のある設定はおそろしいほどマッチします。言い方によっては古くさい、けれども言い方を変えれば、素朴でどこか懐かしい。往年の少女漫画や、少女漫画的なアニメなどがお好きだった方は、是非一度手に取ってみて貰いたい作品です。
ちなみに主人公が毒を持つ体質という意外は、極めて現実に即した設定となっております。薬学の知識などもしっかりしたものですし、そちらでもひとつ楽しむことができるというオマケ付き。
【男性へのガイド】
→女性の方が好みそうなキャラ・舞台・物語設定ですが、これだけ安定してれば余裕で楽しめるんじゃないかなぁ、と思います。ラブストーリー一辺倒というわけでもないし。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→秋田書店はこういう作品を送り込んでくるからやめられない。この作品を悪く言う人はまずいないと思われ。インパクトには欠けますが、そんなものいくらでも補える素敵さがこの作品には詰まってるのです。
作品DATA
■著者:山下友美
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD('04年10月号~)
■既刊11巻
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