
甘くて…痺れるような…
まさにあんたのことだな
カンタレラ
■11巻発売しました。
1475年のローマ。結婚を禁じられたロドリゴ枢機卿の息子として生を受けたチェーザレ・ボルジアは、異腹の弟・ホアン、妹のルクレツィアとともに美しく優しい未亡人ヴァノッツァ・カタネイに育てられる。弟や妹と違いなぜか父から疎まれて育った彼は、神学校へ入れられると共に、自分の中に潜む魔の気配に気づいてゆく。そんなある日、弟であるホアンから、父・ロドリゴが法王の座と引き換えに自分を悪魔に売ったことを知らされる。自分に潜む魔の気配、そして父親が自分を怖れる理由…その全てを理解したチェーザレは、生きることに絶望し死の淵をさまようが、彼の命を狙う暗殺者・ミケロットにその命を助けられ…!?
しばらく休載していましたが、この度連載再開しました。氷栗優先生が描く、史実を元にした闇の歴史ロマンでございます。お話の舞台となっているのは、ルネサンス初期のイタリア。そしてお話の主人公となっているのは、毒薬・カンタレラを駆使して政敵を次々に毒殺し、繁栄の一途を辿ったボルジア家の代表的な存在・チェーザレ・ボルジア。史実を元にしているということで、登場人物のほとんどが実在するモデルを起用。そこにファンタジックな要素を絡めることで、オリジナルの物語を描き出しています。そのオリジナルの要素とは、チェーザレの父・ロドリゴが教皇の座と引き換えに子供を悪魔に売るという契約を結んだことにより、チェーザレが呪われて生まれてきたというもの。そのことを知ったチェーザレは、生きることに絶望し、自ら命を絶とうとしますが、彼をそれまで狙っていた暗殺者・キアロの介抱と、彼を生まれながら取り巻いていた悪魔との交合のよって生き延びます。自らを飲み込もうとする魔と、溢れ出る野心、そして残り続けるやさしい心と、それをつなぎ止める存在・キアロ。血塗られた運命に解き放たれた彼の人生を、美しい絵と共に描き出していきます。

信頼感。こうしたキャラ同士の美しい繋がりを楽しむことができるのも、この作品の特徴のひとつ。
チェーザレ・ボルジアというのは歴史上の人物の中でも、物語として描かれやすい人物で、最近では惣領冬実先生が「チェーザレ 破壊の創造者」という作品がモーニングで連載されています。そうすると、当然ガチンコで質の高い骨太の物語を描くか、もしくはオリジナルの要素を用いて変化球勝負で行くしかなくなるわけですが、氷栗先生は後者を選びました。そして用いられたのが、悪魔との契約というファンタジックなものなのですが、これが宗教(キリスト教)が多大に絡む元の史実に上手くフィットしています。そのせいもあってか、余計に悲運な運命を背負った男というイメージが彼に付随することになるのですが、これはこれでプリンセス(レーベル)的ではあるな、という印象。また彼の右腕となって活躍する腹心・ミケロットは、暗殺者→寝返って腹心という岐路を辿りますが、史実では彼の幼なじみだったなんて話があります。チェーザレを飲み込もうとする悪魔の手から、不思議な力で払いのけてくれるのがミケロット。ちょっとBL的な雰囲気も含みつつおくるので、そういったエッセンスが苦手な方は、回避した方がいいかもしれません。
【男性へのガイド】
→男性は惣領先生の作品読んでればOKだと思いますよ。あくまでこのデフォルメはファンタジー好きの女性へ向けたものだという認識。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→実績のある人気作家さんらしく、自分色を出しつつしっかりとまとめあげる。ただちょっと読みにくいかも。
作品DATA
■著者:氷栗優
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセスGOLD('00年7+8月号~連載中)
■既刊11巻
■購入する→Amazon