
「行天
おまえ帰る場所がないんだろう」
「うん」
■東京南西部にある最大の街・まほろ市。その駅前に小さな軒を構え、庭掃除から引っ越しの手伝い、犬の面倒など何でも請け負う便利屋の多田は、ある日の仕事終わりに高校の同級生・行天と再会する。当時はまったく言葉を発しなかった行天。当然言葉を交わしたこともなかったが、行くあてのない行天は多田の都合などお構い無しに事務所兼自宅に転がり込む。高校の時からは想像できないような饒舌さと、時折見せる奇怪な行動、そしてふと思い出すあの時の出来事と、見え隠れする過去…。つかみどころのない行天に、振り回されつつも一緒に仕事をこなしていくが、近頃依頼の内容が何だか一癖あるような…!?
直木賞も受賞しました、三浦しをんさんの人気小説のコミカライズ。元々三浦先生はBLに強いというか、そっちの嗜好の強い方で、この「まほろ~」も陰のある男ふたりをメインに据えた、BL風味を漂わせた作品。それを人気BL作家の山田ユギ先生が描くのだから、ファンからすれば垂涎ものの一作ということに。そしてこの表紙ですよ。直木賞作のコミカライズ作品のはずなのに、妙に手を伸ばしにくいという(笑)裏表紙は至って普通ですが、基本的にはそっち系統の方々が手に取ることを想定した上で作られているのでしょう。

どこまでも食えない男・行天。彼の過去も、徐々に明らかになっていく(と思う)。
さて、内容なのですが、東京のとある街・まほろ市(確か町田市がモデル)にて便利屋を営むバツイチの男・多田が、とある依頼の帰り道にて高校時代の同級生・行天に再会。当時は全く言葉を交わさなかった二人だが、なぜか少しだけ饒舌になった行天に押し切られる形で、行くあてのない彼を預かることに。このまま放っておいても仕方ないので、とりあえず一緒に仕事をさせるようにしたが…というお話。陰を抱える二人の関係を、一つ一つの依頼を通して解き明かしていくという作品です。普通であれば簡単に済んでしまう各案件なのですが、行天がいることで話はこじれ、思わぬ状況へと話は流れていく…というふうに話を展開させます。
基本的にはこの2人が軸。便利屋での出来事はあくまでボートを漕ぐオールにすぎません。ゆえにメインキャラにハマれないと、この作品はからっきし楽しめないのではないでしょうか。まほろ市という街サイドで見るとどうしてもエピソードとして弱いので、やはりキャラから入るしか。個人的には三浦しをんという作家さんがどちらかというと苦手で、「月魚」であえなくギブアップしてしまったクチだったりするのですが、この作品(漫画)は比較的スッと読むことができました。原作の雰囲気を表しているのかどうか分かりませんが、どうなのでしょう。その辺は先生のファンとかに聞いてみてね!
【男性へのガイド】
→もともと男性はそんなに買わんと思うのですが。ただそこまで「BL風味!三浦しをん!」などと構えて読む必要はないとおもいますよ。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→読みたい人だけが読んで、楽しめる漫画なのでは。個人的には構えて読みはじめたせいか、意外と普通に読めたという感じ。
作品DATA
■著者:三浦しをん/山田ユギ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめコミックススペシャル
■掲載誌:ピアニッシモ(Vol.1~連載中)
■既刊1巻
■価格:562円+税
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