
あたしが猛くんになる
猛くんのかわりに日本一…
ううん 必ず
世界一になって見せる
■10歳の夏、あげはの目を釘付けにしたのは、同い年くらいの男の子のテニスのプレー。大人を相手に互角以上に戦う彼の姿に感動を覚え、いつか絶対テニスを始めよう!と心に誓ったのだった。そして時は流れ、あげはは高校1年に。高校でテニス部に入って、全国大会に出たら猛くんにまた会えるかな…そんな期待を膨らませていたら、なんと猛くんは同じ学校に!憧れの猛くんとの再会に浮かれるあげはだけど、猛くんは完全無視。しかも彼はテニスを嫌っているようで…!?
テニスに懸ける青春!ということで、少女漫画としては珍しいスポーツ要素を含んだラブロマンスでございます。ヒロインは、かつて見た少年のテニスプレーに魅了され、いつかテニスを始めようと心に誓った少女・あげは。高校入学を機にテニス部に入ろうと決める彼女でしたが、そこでそのときの少年・猛くんにまさかの再会。当然のように一緒にテニスをしようと持ちかけます。しかしすっかり大人っぽくなった彼は、あげはの誘いを一蹴。憎しみたっぷりに「テニスはもうやめた」と言い放ちます。実は彼、小さいときから将来を嘱望されながら、怪我によってその道を諦めざるを得なかったという状況におり、無神経にその心の傷にふれてきたあげはに、強く当たってしまったのでした。しかしそれでもめげないヒロインは「猛くんがテニスをできないのなら、自分が代わりになる」と言い放ち、さらに「だからテニスを教えて欲しい」と頼むのでした。その熱意に押された猛は、それに合意。一緒に全国を目指すことになります。

テニスのシーンはなかなか魅せる。迫力もあって、今後ヒロインの実力が向上してくればさらに白熱の描写となりそう。
くまがい先生は、陸上部を描いた作品「放課後オレンジ」で、大きくそのポジションを獲得していったわけですが、今度も部活を描いた作品と、ホームに戻る形に。前作「苺時間」(→レビュー)が中途半端に終わったので、今度こそという意気込みが強いのではないでしょうか。しかし同時に、「放課後オレンジ」を超えられるのかという所で苦しむ事にもなるわけで、ここが正念場のようにも思えます。
さて、ここでポイントになってくるのは、この作品におけるテニスの扱い。「全国に行く!」なんて意気込んで、一見スポ魂もののように見せていますが、やはりあくまでテニスは、相手役との架け橋にするための要素に過ぎないかな、と。ヒロインはテニスをやりたいと10歳のときに決めたわけですが、それから渉と再会するまで何もせず、テニスに関してはド素人。親の反対などもあったとはいえ、せめて何かできた気も。そこに加え部活が廃部で、グランド作りと部員集めから始めるというのは、部活ものとしては何ともハードルが高い要素がチラホラ。側にいるのが天才少年で、かつヒロインも彼のアドバイスをスポンジのように吸収する成長力の高さを持っているという挽回要素は持っていようとも、部活ものとして描くのであればこれはやはりちょっと厳しいかな、と。ただ逆に何もしてこなかったからこそ、変に凝り固まっていなくて成長しやすいって捉え方もありますし、何より天才型で技術に関してはとんとん拍子で進めるというのは、恋愛方面を深く描くにあたっては、余計な道草をしなくていいぶん、明らかにプラスになります。おそらくその方が少コミという土壌を考えても受け入れられるし、部活を扱った少女漫画としても正解なのでしょう。
【男性へのガイド】
→スポーツものとして捉えるならば、あまりにリアリティに欠ける。一要素として捉えた上で、恋愛を楽しもうというベクトルを持って読み始めるなら。ただ基本的には向かないように思いますけど。
【私的お薦め度:☆☆ 】
→部活と恋愛、どういったバランス感で描きたいのかが未だにはっきりしていない以上、決めつけはできないのですが、1巻時点ではまだそこまで…という感じ。2巻以降体勢が整えばいくらでも挽回しそうではありますが、果たして。
作品DATA
■著者:くまがい杏子
■出版社:小学館
■レーベル:Sho-Comiフラワーコミックス
■掲載誌:Sho-Comi('09年第18号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
■購入する→Amazon