このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [新作レビュー] 2009.12.25
areyoualice?片桐いくみ/二宮愛「Are you Alice?」(1)


トーゼンだろ
俺は不思議の国のアリスなんだからな



■夢を捨て、過去を捨て、名前を捨てた少年が迷い込んだのは「不思議の国」。過去のことをまったく覚えていない彼に与えられたのは、「アリス」という名前。何もわからぬまま、怪しげな帽子屋とチェシャ猫に導かれ、辿り着いた先はハートの女王の前。そしてとあるゲームに参加させられることになる。「白ウサギを殺すこと」目的はそれだけ。ゲームのルールとハートの女王の命令に縛られ、常識の一切通用しないイカレた物語のなかで、冷たく光る銃を手に取ったアリスの運命は…!?

 人気ドラマCDのコミカライズらしいのですが、あらまし紹介で内容わかりました?いや、たぶんわからないと思うんですよ。私は1巻読んだ時点でも、さっぱりわからないというのが正直なところ。とりあえず明白なのは、童話「不思議の国のアリス」をモチーフにした、スタイリッシュで不条理なゲームの展開を描いた作品であるということ。主人公は、なにやら暗い過去を持っていたらしい少年。そんな過去を捨て、迷い込んだのが「不思議の国」。アリスという名前が与えられたということ以外は、何もわからない。そんな彼が、怪しげな帽子屋に導かれるままに、ハートの女王の命令で参加させられることになったのが、「白ウサギを殺すゲーム」。ゲームでの“あがり”は、白ウサギを見つけ出し、殺したとき。しかしそれができるのは、「アリス」のみ。不思議の国の住人に、それぞれ役割が与えられた上で、アリスは白ウサギを探す。そこから見えてくる、彼の過去と想いとは…とかいう感じなのかな。


are you alice?
存在理由を交換条件に、アリスはこのゲームに参加する。登場人物たちはみな役割を持った駒である。


 全体像が見えないままに勝手に話は進み、いつのまにやらゲームに参加させられているという不親切さに加え、ストーリーはかなりの不条理さを含んでおり、かなり読み手を選ぶような作り。主人公は過去を捨てたという前提があり、その上で迷い込んだ「不思議の国」で、自分の存在理由と居場所を探します。結局自分の存在意義であるとか、居場所について考え苦しむみたいなところに落とされるのかな、という印象があると同時に、舞台が舞台だけにかなり壮大な広がりを持って展開される可能性も、もしかしたらありそう。たぶん十中八九前者だと思うのですが…というか、序盤でハマれる人なんてそういうところに魅力を見出してなきゃ、絶対に無理だと思うんですよね。どちらにせよ個人的にはあまり興味がないのですけれど。
 
 原作を知らない読者は果たしてどれだけついていけるのか。基本的には原作を知っていて、ある程度世界観であるとか、各キャラの役割を知っているような向けなのだと思います。原作はどうやらかなりの豪華声優陣を起用しているようですが、それが通用しないコミックという枠で、どれだけファンを獲得していけるのか興味が湧きますね。表紙でわかるかと思いますが、絵はかなりスタイリッシュ。それだけで惹き付ける力があるようにすら思えます。


【男性へのガイド】
→この独特の世界観にハマる人ももしかしたらいるのかもしれませんが、男性向け要素も薄い上に、このキャラ構成だとどうだろう、と。
【私的お薦め度:☆    】
→原作ファンもしくは絵担当の方のファンが楽しむ用かなぁ。この作りはあまりに不親切すぎる。すでに買うべき人は買っているはずですし、オススメするって性格の作品ではないかと。評価が低いってわけじゃないです、はい。


作品DATA
■著者:片桐いくみ/二宮愛
■出版社:一迅社
■レーベル:ZERO-SUMコミックス
■掲載誌:ZERO-SUM(平成21年7月~連載中)
■既刊1巻
■価格:552円+税

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「ZERO-SUM」コメント (5)トラックバック(0)TOP▲
コメント

このコメントは管理者の承認待ちです
From:  * 2010/05/09 22:01 *  * [Edit] *  top↑
ご指摘ありがとうございました!
修正させていただきましたm(_ _)m
From: いづき * 2010/05/10 23:34 * URL * [Edit] *  top↑
はじめまして!!
漫画を選ぶ際にはいつも参考にさせてもらっています。

「僕等がいた」から入った私としては、管理人様ととても親近感を感じています。
ところで私はこの「Are you alice?」に対して、管理人様が言うところの
「独特の世界観にハマる人ももしかしたらいるのかも」という1人なわけですが、
確かに「原作ファンもしくは絵担当の方のファンが楽しむ用」の漫画だと私は思います。

単行本ではなく、雑誌で第一話との一目ぼれからこの作品に興味を持ち、ドラマCDでこの物語を全て観終わったわけですが、
この作品、原作のドラマCDですら最後の最後まで物語の意図がわからないようにできています。
さらに言えばその最後の意味までも、まじめに聞いていた読者ならぬリスナーですら解説サイトを見なければ理解しがたい不親切構成となっております。

しかし終わり方だけは素晴らしいものをもっています。
最初から最後までの良いところ全てを後ろにもっていった構成となっていますので、完結すればそれなりに需要がでるのではないかと思われます。

以上、長文失礼しました。
From: ゆうき * 2011/07/12 00:30 * URL * [Edit] *  top↑
はじめまして
この作品はもともとしっていたのですがひとめぼれだっだのでないようがしれてよかったです。
個性的なキャラ達のなかでも白うさぎが可愛くて、メアリアンへの思いなど、白ウサギ
ラブです。
漫画もかいました。片桐いくみ先生、二宮愛先生も好きになりました。
管理人さんありがとうございます。
From: とがめ * 2011/12/28 13:41 * URL * [Edit] *  top↑
私的には好きなモチーフの作品と言う事もあっていつかは買いたい作品。でもブックオフでは皆無であり普通に買わないと読めないのが難点(いや古くても良いから欲しかっただけですけどね)
内容はまだ読んでいないので何とも言えないが絵柄は好きだし内容はあの一迅社だし仕方ないかもです。ファンタジー好きな会社ですからねそれにドラマCDを文章にするのって大変なのでしょう。今度は読んでからコメントします
From: 帰蝶(鏡花) * 2014/01/28 02:00 * URL * [Edit] *  top↑

管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。