安藤なつみ「ARISA」(1)


どう見ても仲のいい普通のクラス
秘密なんて
どこにあるんだ？


■３巻発売しました。
　上原つばさ、14歳。ケーキ屋さん巡りが趣味の、ごくごく平凡な女の子♡…に見せかけた、人一倍の正義感を持つ、ちょっぴり怖い女の子。ひとよんで「東中の鬼姫」。そんな彼女には、離れて暮らす双子の妹がいる。両親の離婚で母親についていった、園田ありさ。そんなありさと、手紙でのやり取りを経て、３年ぶりに再会した。前と変わらず、かわいく明るい妹との再会に、とっても楽しい時間を過ごすつばさだったけど、とあるきっかけで、妹の抱える悲しみと恐怖を知ることになる…

　予測不能の学園サスペンス、第３巻登場です。妹と久々に再会し、楽しい時間を過ごすつばさ。明るく楽しそうなありさの姿を見て、「いーよなー」と呟いたところ、ありさは「じゃあなってみる？」と返答。話はトントン拍子で進み、つばさは１日だけありさとして学校に通うことになります。カッコいい彼氏に親切な友達…これ以上ないってくらいに楽しい時間を過ごしたつばさは、大満足でそのことを報告すると、ありさは浮かない顔で反応。そのまま全てに絶望するかのように「わたしの秘密も、あの子たちの秘密も、知らないから」と言い放ち、窓の外に身を投げてしまいます。幸い命は助かったものの、意識は戻らないまま。どうやら精神的な要因が大きいらしいのですが、つばさはその全容を解明するため、原因があると思われるありさのクラスに、ありさとして潜入します。



このクラスの異常さを最大限に発揮させたコマ。一見ヘンテコに思えるが、宗教の儀式にもにた、「王様」への信仰心を端的に表した秀逸なカットだと思います。


　イジメとかいうありきたりな題材ではありません。謳われているのは「サスペンス」。秘密とは、とあるサイトの「王様」という存在。ごく普通のクラスの掲示板（裏サイト的なやつかと思われる）に、突如として現れた王様は、書き込まれた願いを全て叶えてくれるというのです。テストの答案のリークから、嫌な先生を消すことまで、なんでも。その存在にすっかり染まってしまったクラスメイトたちは、金曜４限の自習の時間を「王様タイム」と銘打って、一斉に願いを送信。その中からひとつの願いがピックアップされ、願いが叶えられるという方式。彼らの中では、王様という存在は絶対。少しでも批判するような発言をすれば、一斉に攻撃の対象になります。果たして王様の正体は一体なんなのか、その目的は何なのか、ありさに扮したつばさは、妹を救いたい一心で全容を探っていきます。
　
　学校のクラス掲示板に、みんな携帯所持しているというあたり、時代の流れを感じますね。アイデアの核になるもの自体は、他でもいくらでも出せそうですが、中学でこういうことをやるという所は斬新。中学生だからこそ、ある程度の行動力があり、同時に残酷さと純粋さを持ち合わせている。結末は思いのほか小さい所でまとまりそうな気もしますが、１巻からの怒濤の展開はかなり惹き付けられるものがあります。なかよし連載で、やっぱりどこか低年齢向けの匂いを残していますが、話の軸はしっかりしているので大人も楽しむことができます。魅せ方を心得ているというか。子供が多くテレビを観る時間帯に、ジャニーズ主演でドラマ化とかしたらかなりハマりそうですね。


【男性へのガイド】
→こういった話は少女誌のほうが断然強い。動きのある話なので、男性も楽しんで読むことが出来ると思います。
【私的お薦め度：☆☆☆☆　】
→結末に一抹の不安を覚えつつも、なんだかんだで惹き付けられます。わかりやすいし、緊張が途切れることがないのは、作者さんの腕か。


作品DATA
■著者：安藤なつみ
■出版社：講談社
■レーベル：KCなかよし
■掲載誌：なかよし（2009年２月号～連載中）
■既刊３巻
■価格：各419円＋税

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