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芦原妃名子「Piece」
芦原妃名子「Piece」(3)
どうやったら
少しでも
成海を
私のものにできるの?■3巻発売しました。
亡くなった高校の同級生、折口はるかの「彼」が描いたという絵をあずかり、そこに書いてあった「H・N」を探すことにした水帆。真っ先に思い浮かんだのは、「成海皓」。彼に会うため、3年ぶりに彼の家を訪ねる。かつてここで、毎日のように成海とキスをし、優しく触れられて、初めて「感情」が動いた。彼のことをもっともっと知りたい…もっと近づきたい…。そう思ていた水帆を、成海から遠ざけた理由は、成海の抱える衝撃の過去だった…
3巻にてもの凄い展開が。掴みどころのない性格の「成海皓」という人物が作られた理由が、ついに明らかになります。おそろしいほど正直に見えて、恐ろしいほど嘘つき。異常なほどに捻曲がってみえる、つかみどころのない彼の人格は、やはり過去のトラウマが原因となっていたのでした。それについては本編を読んでもらうとして、こんな人物を登場させる意図ってのは何なのでしょうね。彼の存在は、バトルものでいったらありえないほど強い改造人間のようなもので、ひと際異質なもののように映ります。そしてそんな彼に惹かれるヒロイン・水帆もまた、内面に何かしらの問題を抱えているのでした。そんな彼女の内面を描き出す方法として、3巻では2人の女性について描かれます。それが彼女の母と、父の浮気相手。静かに自分の幸福を委ねる女と、惨めで行き場のない感情にただただ翻弄される女。水帆はそのどちらにもなりたくないと思い、そういった生き方を拒絶するのでした。じゃあ水帆はどう生きたいの?この作品は、大枠でそんなことを描いていく作品なのだと思います。
先生曰く、この作品は超ド恋愛ものだそうです。そう、水帆の恋愛がメインなんだよ!そんな彼女のモノローグ…
感情を閉じこめて
また「私」を捜せばいい
大丈夫
閉じたままでいい
その後の…
目を開けて
感情をこじ開けて
まっすぐ前を見る
愛し方、愛され方、ひいては自分の在り方に付いて、自問自答し、そして最後の答えは相手に与えてもらう。そんなヒロインの後ろには、何かしらのトラウマや心の傷があります。それは前作の「砂時計」も同じ。しかし違うのは、相手役となるのが何も傷がなく、傷だらけの自分を救ってくれる存在であった大吾ではなく、傷だらけでときに自分よりも弱い成海であるということ。ヒロインの性質はさほど変えず、相手役を完全な真逆のキャラにすることで、全く違った物語を物語を演出。果たしてどのような過程を辿り、終幕に持っていくのか、全く目が離せません。
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