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Tag [続刊レビュー] 2009.12.30
作品紹介→芦原妃名子「Piece」



01.gif芦原妃名子「Piece」(3)


どうやったら
少しでも
成海を
私のものにできるの?



■3巻発売しました。
 亡くなった高校の同級生、折口はるかの「彼」が描いたという絵をあずかり、そこに書いてあった「H・N」を探すことにした水帆。真っ先に思い浮かんだのは、「成海皓」。彼に会うため、3年ぶりに彼の家を訪ねる。かつてここで、毎日のように成海とキスをし、優しく触れられて、初めて「感情」が動いた。彼のことをもっともっと知りたい…もっと近づきたい…。そう思ていた水帆を、成海から遠ざけた理由は、成海の抱える衝撃の過去だった…

 3巻にてもの凄い展開が。掴みどころのない性格の「成海皓」という人物が作られた理由が、ついに明らかになります。おそろしいほど正直に見えて、恐ろしいほど嘘つき。異常なほどに捻曲がってみえる、つかみどころのない彼の人格は、やはり過去のトラウマが原因となっていたのでした。それについては本編を読んでもらうとして、こんな人物を登場させる意図ってのは何なのでしょうね。彼の存在は、バトルものでいったらありえないほど強い改造人間のようなもので、ひと際異質なもののように映ります。そしてそんな彼に惹かれるヒロイン・水帆もまた、内面に何かしらの問題を抱えているのでした。そんな彼女の内面を描き出す方法として、3巻では2人の女性について描かれます。それが彼女の母と、父の浮気相手。静かに自分の幸福を委ねる女と、惨めで行き場のない感情にただただ翻弄される女。水帆はそのどちらにもなりたくないと思い、そういった生き方を拒絶するのでした。じゃあ水帆はどう生きたいの?この作品は、大枠でそんなことを描いていく作品なのだと思います。
 
 先生曰く、この作品は超ド恋愛ものだそうです。そう、水帆の恋愛がメインなんだよ!そんな彼女のモノローグ…
 
 感情を閉じこめて
 また「私」を捜せばいい
 大丈夫
 閉じたままでいい

 
 その後の…
 
 目を開けて
 感情をこじ開けて
 まっすぐ前を見る


 愛し方、愛され方、ひいては自分の在り方に付いて、自問自答し、そして最後の答えは相手に与えてもらう。そんなヒロインの後ろには、何かしらのトラウマや心の傷があります。それは前作の「砂時計」も同じ。しかし違うのは、相手役となるのが何も傷がなく、傷だらけの自分を救ってくれる存在であった大吾ではなく、傷だらけでときに自分よりも弱い成海であるということ。ヒロインの性質はさほど変えず、相手役を完全な真逆のキャラにすることで、全く違った物語を物語を演出。果たしてどのような過程を辿り、終幕に持っていくのか、全く目が離せません。


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かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。
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