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Tag [新作レビュー] 2010.01.07
uchinorochi.jpg橘裕「うちのポチの言うことには」(1)


ポチは謎の人
ちょっぴり優しくて
でもやっぱり意地悪だ



■代々城主を勤めた名門・高月家とその御庭番・戌井一族の関係は、今も続いている。城主の血を引く名門のお嬢様・高月花織は、大事に大事に育てられた箱入り娘の高校一年生。そんな彼女と同じ高校に通い、ボディーガードを務めるのが、御庭番の血を引く戌井一族の四男坊・遙。「お嬢様」「ポチ」と呼び合う二人には、とある因縁と重大な秘密があって…!?

 橘裕先生の新作でございます。守って守って守り抜く、ワガママ姫&ツンデレ御庭番の密着ボディーガードロマンス!ってこの帯の説明文、ものすごくしっくり来ますね。結構ズレた表現のヤツとかあるんですが、これはまさにという感じ。ヒロインは、代々城主を勤めた名門の家の一人娘・花織。名門家のお嬢様ということで、大事に育てられた彼女は、学校に行くにもボディーガードがつきっきり。そのボディーガードを務めるのは、代々高月家に使えてきたお庭番・戌井一族の血を引く少年・遙。出会った時に遙を「ポチ」と呼んだのがきっかけで、いらいずっと「お嬢様」「ポチ」と呼び合うふたり。ポチに対してワガママなヒロインに、必要以上に慎重に距離を保って接する遙。この二人の間には、とある秘密が…


ウチのポチの言うことには
ワガママ姫とありますが、根っからワガママというわけではなく、幼さとポチへの甘えがあるっていうだけ。その解消もこれから見られるのでしょうが、これはこれでカワイイから困る。


 秘密というのは、ヒロイン・花織に「他人の傷を自分に移す」という能力があること。これは先祖代々受け継がれている力なのですが、そのことを花織自身は知らされていません。必要以上に傷や病気を移させないために、ボディーガードを必要としているというわけ。そんなボディーガードを務める戌井家は、犬の血が混ざる獣族であり虐げられていたのですが、それを高月家の先祖が救ったという経緯があり、以降お庭番として仕えているという設定があります。遙の他にも彼女を守らんとする兄弟が登場し、話を動かしますが、基本的には花織と遙でカップルはほぼ成立しており、前作(→レビュー)のようなあらぬ迷走をみせる心配は無さそう。前作同様ナイトに守られるというシチュエーションを存分に楽しみながら、ファンタジックな設定を絡めて進行していくはず。傷を移すという設定のみでも十分回せた気もしますが、それだけだとアッサリしすぎるのですかね。とはいえ前作が前作だったので、一抹の不安が残るのは事実。

 ポチと呼びながらも守られるというシチュエーションのギャップ。男の子としても、ロリロリな女の子に犬扱いされ命令されるという、ちょっとMっぽいシチュ。他にも節々に“萌え”を喚起させるようなエッセンスが散りばめられており、そういった要素を楽しめる人はそれだけで充分おいしいです。なんてったってヒロインがかわいいのですよ!ということで、キャラに少しでも情が移るなりしてしまえば、その次点で勝ちなのですが、この手のヒロインは同性の読者から嫌われそうな気もしたり。なんてこういうヒロイン、白泉社花ゆめだと結構多いんですよね。どう転ぶかは今後の展開次第なのですが、果たして。
 
 ヒロインは年齢設定の割にやけに子供っぽく見えるのですが、単に見ためが幼いってだけでなく、箱入り娘として大事に大事に育てられた結果、俗世のことを殆ど知らない無知・無垢さを未だ持っているというところも強く影響しているように思えます。この辺は上手いなぁ。心得ている、何かを…。
 

【男性へのガイド】
→ヒロインはどう考えても男性ウケするはず。ストーリーとしても遙に感情移入してしまえばOKなので、白泉社的ラブロマンスを楽しむ用途であれば、これはうってつけかも。嗜好が合うことが前提ではありますが。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→お薦めしても良いのですが、前作の迷走の悪夢が未だ抜けきらず、ちょっとまだ不安。もう少し追いかけてみて、そのときにフォローできればしたいと思います。キャラにピンと来たら買っちゃってOKだと思いますけどね。


作品DATA
■著者:橘裕
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLaDX(平成21年3月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazon
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