
ちょうどいい
お前には前から言っておきたいことがあった
この世の宝はすべて私のものだ
■蜜柑から生まれた蜜柑次郎は、巷を騒がせる人気退治屋。その素性は謎に包まれているが、町の女子たちの噂によると…「身長187センチ」「端正な顔立ちでクールな性格」「笑顔が素敵」etc.しかしその実、端正な顔立ちではあるものの、身長わずか数センチ。正義感や使命感などそっちのけ、優先すべきは金銀財宝、お供(?)のカエルはこき使いまくりの俺様少年。そんな彼の、目下の目的とは…!?
蜜柑から生まれた蜜柑次郎の冒険譚…ではなく、財宝ハンティングコメディ。まず表紙のかわいらしさが素敵。白地にシンプルなデザインで、蜜柑色な配色と、個人的にツボな要素が入りまくりです。主人公は表紙にいる少年・蜜柑次郎。一緒に描かれている蛙はそのまんまの大きさ…ということで、蜜柑次郎がとっても小さいということがおわかりになるでしょう。なんていうか桃太郎と一寸法師の間の子みたいな。そんな彼の職業は、退治屋(という名目の財宝ハンター)。金銀財宝の匂いがする方向へカエルと一緒に赴くと共に、小さい身から大きい身になる方法、そしてついでに呪われてカエルの姿になってしまったカエルを元に戻す方法を探る日々。そんな彼らの行く先々には、何やら見たことある昔話の登場人物たちが…

かぐや姫との一件。サイズ的にはこんなものです。何より特筆したいのがカエルくんの存在。彼が突っ込み役をしてくれるから、広がりすぎても空中分解しないで形になります。そして同時に不幸を一手に受ける…。なぜか「みなみけ」のまことボイスで再生されます。なんでだろ…。
蜜柑次郎の目下のライバルは、同じ退治屋をする桃太郎。道中では一寸法師に会ったり、かぐや姫の悩みを解決したり、お供のカエルは呪いによって姿を変えられた異国の王子だったりと、一般的に広まっているおとぎ話や昔話の要素がたっぷり詰まっています。ただしそれをそのままの設定・物語展開で使用するはずもなく、しっかりとオリジナルに味付けしたお話を用意。上手いことユルめでテンポの良いコメディにフィットさせています。主人公は自由奔放に動き回り、それを貧乏くじ引きがちなカエル王子がフォローして失敗する。みたいな関係性。メインの二人はもちろんですが、どのキャラもしっかりと特徴が与えられ、物語の中でしっかりと主張をしてきます。ややウルサくなりがちですが、それがある意味では面白さに繋がるわけで。
そういえばドラえもんで、色々な昔話を混ぜちゃうみたいな話(ドラビアンナイトでしたっけ?)がありましたが、そういった発想からドタバタコメディに落とし込んだような感じ。ちょいと大味な気もしますが、これで良いと感じさせてしまう、不思議な味わいがあります。ゴツボ×リュウジ先生とか、そういう系統の自由な匂い。1巻の時点ではストーリー的な広がりはないものの、設定として蜜柑次郎の出自や、カエルの今後など、展開させうる要因は散見されるので、そちらでも期待が持てるのではないでしょうか。
【男性へのガイド】
→桃太郎や一寸法師、王子がイケメンに描かれているあたりは、やはり女性向けという感じ。それでもコメディですし、一定の読みやすさはあると思います。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→現時点ではどちらに転ぶかはわかりませんが、ストーリーが機能しても、逆になぁなぁになってしまっても、どっちでも成功な気がする。やや色モノくさいので、オススメはしづらいですが。
作品DATA
■著者:双葉よう
■出版社:マッグガーデン
■レーベル:BLADE COMIC avarus
■掲載誌:アヴァルス(2009年2月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:571円+税
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