作品紹介はこちら→小玉ユキ「坂道のアポロン」
4巻レビュー→夏の夜に、ジャズなんていかがです? 《続刊レビュー》小玉ユキ「坂道のアポロン」4巻
小玉ユキ「坂道のアポロン」(5)
ジャズのほうが好いとる
…それに
大事な相棒は
待たせとるけんな
■百合香に恋した千太郎を応援しながら、律子への想いを募らせていった薫。そして、律子が千太郎へ想いを寄せていることを知りながらも、その想いをぶつけ失恋…。けれど千太郎の生い立ちを知ったり、薫の母親を訪ねて東京へ行ったりと波瀾万丈な日々の中、二人の友情は深まる。そんな中、百合香が淳一を好きだと気づいた薫は、千太郎を彼女から離そうとするが、理由は言えず、なんだかぎくしゃく…。そんな時、松岡がロックバンドに千太郎を誘い、千太郎はまさかのOKの返事。ますます深まる二人の溝は…そして百合香と千太郎、淳一の間にも、何やら動きがあるようで…
~あんまり騒がれてないですよね~
一昨年「このマンガがすごい!」オンナ編1位を獲得したのですが、以降なんとなくひっそりとしてしまった感のある同作。面白さは全然落ちてないと思うんですけどねぇ、やっぱり1位を一気に獲得すると、その反動というのはどうしても大きくなってしまうということなのですしょうか。
~充実の5巻~
5巻はとにかく濃密な内容になっていました。まずは4巻からぎくしゃくしていた、薫と千太郎の仲。そしてもうひとつは、千太郎と百合香、そして淳一の三角関係。そして最後に、薫と律子の気になる仲。この3つの要素が、途切れること無く絡まりあい、非常に読み応えのある物語を形成。終始息をつかせぬ展開となっています。
~ベタで王道だけど、ベタじゃなかった!~
まずは友情描写なのですが、もの凄い王道を行くような展開でした。しかし面白いし、「ありきたりだな…残念」なんて微塵も感じさせない。それは話の描き方が上手いのはもちろんなのですが、同時に1966年という時代設定がそれを許しているようにも思います。今やれば、ださいしカッコ悪いでも、当時であれば、それでも成り立ってしまう。その当時でしか成立しない格好良さや切なさ、爽やかさを、見事にストーリーの中で描いている、そんな印象を、今回は強く受けたのでした。例えば友情描写以外でも、淳一の元を訪ねた百合かの煙草のくだりとか、あんなの今やったら笑い者ですよ。でもあの時代設定だからこそ、納得できてしまう。やっぱり良いなぁ。
~千太郎と薫の恋模様の違い~
さて、そんなわけで現在作中では2つの恋物語が存在しているわけですが、この対比もまた面白いな、と。二人とも報われない想いを抱えて、ビターなスタート。なんとなくジャズを感じさせると勝手に思っているのですが、それでも二人が身を置く恋模様は、まったく違った様子をみせています。まずは主人公の薫ですが、彼は同じクラスの律子と、これでもかというほどに青春丸出しの初々しい関係性を。一方の千太郎は、歳上の男女を相手に、その年齢には似つかないような大人の恋愛模様をそれぞれ見せています。初恋で、かつ自分がどうしたらよいかわからず迷走するという部分では同じなのですが、見せる印象は全く別。どちらが良いとかではなく、この二つを自然に同居させてしまう不思議な時間・空間が、この世界には広がっていて、私はその空気感にすっかりやられてしまっている、と。伝わったかな…。
■購入する→Amazon
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4巻レビュー→夏の夜に、ジャズなんていかがです? 《続刊レビュー》小玉ユキ「坂道のアポロン」4巻

ジャズのほうが好いとる
…それに
大事な相棒は
待たせとるけんな
■百合香に恋した千太郎を応援しながら、律子への想いを募らせていった薫。そして、律子が千太郎へ想いを寄せていることを知りながらも、その想いをぶつけ失恋…。けれど千太郎の生い立ちを知ったり、薫の母親を訪ねて東京へ行ったりと波瀾万丈な日々の中、二人の友情は深まる。そんな中、百合香が淳一を好きだと気づいた薫は、千太郎を彼女から離そうとするが、理由は言えず、なんだかぎくしゃく…。そんな時、松岡がロックバンドに千太郎を誘い、千太郎はまさかのOKの返事。ますます深まる二人の溝は…そして百合香と千太郎、淳一の間にも、何やら動きがあるようで…
~あんまり騒がれてないですよね~
一昨年「このマンガがすごい!」オンナ編1位を獲得したのですが、以降なんとなくひっそりとしてしまった感のある同作。面白さは全然落ちてないと思うんですけどねぇ、やっぱり1位を一気に獲得すると、その反動というのはどうしても大きくなってしまうということなのですしょうか。
~充実の5巻~
5巻はとにかく濃密な内容になっていました。まずは4巻からぎくしゃくしていた、薫と千太郎の仲。そしてもうひとつは、千太郎と百合香、そして淳一の三角関係。そして最後に、薫と律子の気になる仲。この3つの要素が、途切れること無く絡まりあい、非常に読み応えのある物語を形成。終始息をつかせぬ展開となっています。
~ベタで王道だけど、ベタじゃなかった!~
まずは友情描写なのですが、もの凄い王道を行くような展開でした。しかし面白いし、「ありきたりだな…残念」なんて微塵も感じさせない。それは話の描き方が上手いのはもちろんなのですが、同時に1966年という時代設定がそれを許しているようにも思います。今やれば、ださいしカッコ悪いでも、当時であれば、それでも成り立ってしまう。その当時でしか成立しない格好良さや切なさ、爽やかさを、見事にストーリーの中で描いている、そんな印象を、今回は強く受けたのでした。例えば友情描写以外でも、淳一の元を訪ねた百合かの煙草のくだりとか、あんなの今やったら笑い者ですよ。でもあの時代設定だからこそ、納得できてしまう。やっぱり良いなぁ。
~千太郎と薫の恋模様の違い~
さて、そんなわけで現在作中では2つの恋物語が存在しているわけですが、この対比もまた面白いな、と。二人とも報われない想いを抱えて、ビターなスタート。なんとなくジャズを感じさせると勝手に思っているのですが、それでも二人が身を置く恋模様は、まったく違った様子をみせています。まずは主人公の薫ですが、彼は同じクラスの律子と、これでもかというほどに青春丸出しの初々しい関係性を。一方の千太郎は、歳上の男女を相手に、その年齢には似つかないような大人の恋愛模様をそれぞれ見せています。初恋で、かつ自分がどうしたらよいかわからず迷走するという部分では同じなのですが、見せる印象は全く別。どちらが良いとかではなく、この二つを自然に同居させてしまう不思議な時間・空間が、この世界には広がっていて、私はその空気感にすっかりやられてしまっている、と。伝わったかな…。
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