
大事な なにかを 残せたらって 思ってる
それは とても はかないけれど
■読切りメインなので第1話をご紹介。
季節はまだ冬。少し早めに着いた「春」に「桜」が早く自分のことを咲かせてくれと頼む。何やら切羽詰まっていた感じだったので、彼のいる場所に向かってみると、そこには誰かの片腕を大事そうに抱いたまま佇む、一人の少年の姿が…。彼が大事そうに抱く腕は、そして彼が桜の下で佇む理由とは…?
ご紹介いただきましたBL作品のご紹介でございます。テクノサマタ先生が描く、「花」と「季節」の擬人化ファンタジー。擬人化ものってBLに限らず今まであまり読んだことがなく、どういった感じで話が展開されるのか興味があったのですが、なるほど。花はそれぞれに感情・性格を持ち、人のことをいつも見つめています。そんな彼らの時間を進めるのが、それぞれ持ち場が割り当てられた「季節」。「擬人化」という言葉を使わないのであれば、「精霊」なんて言葉がしっくりくるかもしれませんね。元々日本は、八百万の神という発想も持っていますから、こういう考えは意外とフィットするのかも。そんな人の姿をした花と季節が織り成す、切なくも優しい珠玉の物語たちが、かわいらしい絵柄と共に描かれていきます。

多分この感情は、愛とか恋とかっていうよりも、花を慈しみ愛でるような想いに近いのかも。
区分としてはBLですが、その要素は非常に薄いです。シリーズとしては、後半ややそういった要素が強くなった印象はありますが、それでもかなり薄い。なによりも先行してくる印象は「かわいい」で、愛だの恋だのってラインではなく、信じるとか好きだとかっていう、もっと人間の基本にあるようなイノセントな感情に基づいた物語が展開されるからそういった感想を持つのかもしれません。とはいえ背景として切なさや苦しみといった負の要素があるため、決して優しさと明るさだけに包まれた、甘く単調なテイストにはなっていないのがミソ。そういった“苦み”が効いているからこそ、優しさが心に沁みるってもんです。優しく心が温まるような物語がお好きな人は、気に入ると思いますよ。BL耐性もそれほどなくても大丈夫だと思います。
ただネックとしては、ちょっと状況がわかりにくい部分があるということ。雰囲気で進んでいく感じがあるからか、どうにも説明が不足している感じがして、最初は結構戸惑うかもしれません。草花擬人化,季節擬人化という大前提は最低限理解しておきたいし、その他にもちょいと不思議な存在や物事が起こったりするので、理解と許容のできる心を持って読みはじめてくださいな。
【男性へのガイド】
→BL基準じゃなくても、読める人は結構多いと思いますよ。かわいらしい絵柄と、優しさ溢れるお話がお好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→なんだか優しい気持ちになれるような、素敵なお話でした。1巻のみだとボリュームが少なめなので、もし読まれるならばある程度まとめてお読みになられると良いと思います。
作品DATA
■著者:テクノサマタ
■出版社:幻冬舎
■レーベル:バーズコミックスルチル
■掲載誌:ルチル
■既刊5巻
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