このエントリーをはてなブックマークに追加
Tag [オススメ] [BL] 2010.01.17
kusanokannmurihosinokannmuri.jpgテクノサマタ「草の冠星の冠」(1)


大事な なにかを 残せたらって 思ってる
それは とても はかないけれど



■読切りメインなので第1話をご紹介。
 季節はまだ冬。少し早めに着いた「春」に「桜」が早く自分のことを咲かせてくれと頼む。何やら切羽詰まっていた感じだったので、彼のいる場所に向かってみると、そこには誰かの片腕を大事そうに抱いたまま佇む、一人の少年の姿が…。彼が大事そうに抱く腕は、そして彼が桜の下で佇む理由とは…?

 ご紹介いただきましたBL作品のご紹介でございます。テクノサマタ先生が描く、「花」と「季節」の擬人化ファンタジー。擬人化ものってBLに限らず今まであまり読んだことがなく、どういった感じで話が展開されるのか興味があったのですが、なるほど。花はそれぞれに感情・性格を持ち、人のことをいつも見つめています。そんな彼らの時間を進めるのが、それぞれ持ち場が割り当てられた「季節」。「擬人化」という言葉を使わないのであれば、「精霊」なんて言葉がしっくりくるかもしれませんね。元々日本は、八百万の神という発想も持っていますから、こういう考えは意外とフィットするのかも。そんな人の姿をした花と季節が織り成す、切なくも優しい珠玉の物語たちが、かわいらしい絵柄と共に描かれていきます。


草の冠星の冠
多分この感情は、愛とか恋とかっていうよりも、花を慈しみ愛でるような想いに近いのかも。


 区分としてはBLですが、その要素は非常に薄いです。シリーズとしては、後半ややそういった要素が強くなった印象はありますが、それでもかなり薄い。なによりも先行してくる印象は「かわいい」で、愛だの恋だのってラインではなく、信じるとか好きだとかっていう、もっと人間の基本にあるようなイノセントな感情に基づいた物語が展開されるからそういった感想を持つのかもしれません。とはいえ背景として切なさや苦しみといった負の要素があるため、決して優しさと明るさだけに包まれた、甘く単調なテイストにはなっていないのがミソ。そういった“苦み”が効いているからこそ、優しさが心に沁みるってもんです。優しく心が温まるような物語がお好きな人は、気に入ると思いますよ。BL耐性もそれほどなくても大丈夫だと思います。
 
 ただネックとしては、ちょっと状況がわかりにくい部分があるということ。雰囲気で進んでいく感じがあるからか、どうにも説明が不足している感じがして、最初は結構戸惑うかもしれません。草花擬人化,季節擬人化という大前提は最低限理解しておきたいし、その他にもちょいと不思議な存在や物事が起こったりするので、理解と許容のできる心を持って読みはじめてくださいな。


【男性へのガイド】
→BL基準じゃなくても、読める人は結構多いと思いますよ。かわいらしい絵柄と、優しさ溢れるお話がお好きな方は。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→なんだか優しい気持ちになれるような、素敵なお話でした。1巻のみだとボリュームが少なめなので、もし読まれるならばある程度まとめてお読みになられると良いと思います。


作品DATA
■著者:テクノサマタ
■出版社:幻冬舎
■レーベル:バーズコミックスルチル
■掲載誌:ルチル
■既刊5巻

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ幻冬舎コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。