
ここにはわしらの知らぬもの
見たことも聞いたこともないものが山ほどある
いや知らぬものばかりぞ!
わしはもっと数多のものを知りたい
■叔母が経営する芸能事務所の手伝いをしながら、人気アイドルの繚と密かに付き合っている花。けれどある日、繚は花と事務所を裏切り去って行く。そんな中、花は発明好きの祖父と京都にいた。祖父の実験に付き合わされていたところ、なんと泊まっている旅館で火事が発生!姿の見えない祖父を助け出すため、炎の上がる旅館に飛び込んだ花だったが、そこにいたのは4人の着物を着た男たち。その後事情を聞くと、どうやら彼らは「本能寺の変」で明智光秀に滅ぼされる寸前の、織田信長、そしてその家臣の森3兄弟であることがわかり…!?
すもももも先生の新作でございます。結構わかりやすくて面白いストーリーだと思っていたのですが、あらまし紹介がカオスなことに。わかりやすく説明しますと、織田信長と森3兄弟が現代にタイムスリップしてしまったという、戦国(?)コメディでございます。ヒロインは芸能事務所の姪・花。地味な外見・性格の彼女ですが、事務所の売れっ子アイドル・繚と付き合っているというおいしい役。ところがある日、繚はさらなるステップアップを目指して大手事務所に黙って移籍してしまいます。そんな中現れたのが、織田信長初め本能寺の変で亡くなったとされる男たち4人。発明好きの祖父の実験によって連れてこられてしまった彼らですが、先の火事で装置は故障、しばらく彼らを預かることになります。初めて目にする物事に、興味津々の森3兄弟の下2人。ケガも癒え、この時代の事をもっと知っていこうと前向きに考える織田信長。そして状況の変化に戸惑う森3兄弟の一番上・乱丸。繚が去ったことに落ち込む暇もなく、花は彼らの面倒に追われますが、果たしてこの後どうなることやら…という感じ。

次々訪れる未知との遭遇に、好奇心はビンビン。ある意味お約束。けれども個人的にこういうシーン大好きです。こういうの好きな人、他にもいるでしょ?
共に裏切りを経験した者同士…なんて見方はあまり関係ないか。とりあえず1巻では、繚の裏切りと、4人のタイムスリップ、そして彼らが状況を理解し生活していくことを決意するところまでが描かれ、これから物語を展開するための状況を揃えたという感じ。まだ描写はないですが、繚の存在を考えると、行き着く先として思い浮かぶのは、森3兄弟の芸能界デビュー。新撰組と並んで女性向け漫画で描かれることの多い織田信長たち。タイムスリップもネタとしてはしばしば使われており、設定としては妙味がまったくないわけですが、芸能界デビューとなると話は違ってきます。差別化の仕方としてはかなりぶっ飛んだものですが、いろいろな細かいルールを無視した上でのこの思い切りは逆に気持ちが良く、限りなく「アリ」なのかも。いや、まだ芸能界に行くって決まったわけではないですが、ここまでフラグ立てておきながら行かないってのもね。
そのときのメインとなると思われるのは、織田信長ではなく、森3兄弟の一番歳上・乱丸(表紙になってるし)。ここでどれだけキャラの魅力を発揮できるか、楽しみですね。ちなみに乱丸は一般的には「森蘭丸」として知られていますが、正確には「乱丸」表記、さらに正確に言うならば「成利」になるらしいですね。本作では「乱丸」で統一されています。
かなりカオスな状況ではありますが、うまいことコメディとして機能されていますので、それはそれでまた面白いです。また本編に関しては軸がぶれるということはなく、しっかりと一本筋が通っているので、ストーリーは非常に分かりやすいです。同じような話の「シノビライフ」(→レビュー)が、同じプリンセスにありますが、それに比べ整理はできているし、向かう先も全く別だと思われ棲み分けはキッチリ。受け入れられる下地も充分にありそうで、ある程度の長期連載になれば更に面白くなるかもしれません。最終的にどういったところに着地するのか不安ではありますが、とりあえず今は楽しく面白い話が展開されているのでOKかな、と。
【男性へのガイド】
→タイトルから受ける印象に比べれば読みやすくはありますが、基本的には女性が読むようなものかと。現時点ではガッチガチの恋愛要素薄めなので、比較的読みやすいかも。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→さてどこまで行って、どこに辿り着くのやら。そんなことは考えないで、今を楽しみましょう。気楽な気持ちで読めば、とっても面白い作品だと思いました。
■作者他作品レビュー
すもももも「天の竜・地の桜」
作品DATA
■著者:すもももも
■出版社:秋田書店
■レーベル:プリンセスコミックス
■掲載誌:プリンセス(2009年7月号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
■購入する→Anmazon