
俺の主はあんただ
あんたが生きるために
俺を使え
■高華王国の姫・ヨナは、父王のたった一人の愛娘。父王は妃を亡くし、以降妻を娶ることはなかったため、ヨナは高華王国を背負う者として、父や護衛のハクに守られながら大切に大切に育てられた。そんな彼女も、今では自分の顔やくせ毛を気にするようなお年頃に。16歳の誕生日を控えたある日、幼なじみのスウォンが祝福に駆けつけたことに、ヨナは大喜び。それもそのはず、スウォンはヨナの想い人なのだ。この想いが通じることを願って、誕生日を迎えようとしていたヨナだったけど、思いもよらない過酷な運命に巻き込まれて…!?
昨年「NGライフ」(→レビュー)を完結させた、草凪みずほ先生の新連載になります。前作は古代ローマと現代を繫ぐラブコメディでしたが、今回の舞台は中国(かと思われる)。ヒロインは、高華という国の姫・ヨナ。ヨナの母親はヨナを生んだ後亡くなり、父王であるイルも以降妃を娶らなかったことから、王の血を引く者は彼女一人。それは大層大事に育てられました。そんな彼女の護衛役を務めるのが、ヨナの幼なじみで非常に腕のたつ青年・ハク。けれども口が悪いのがたたってか、何かと喧嘩の多い二人。そしてそんな二人の幼なじみで、ヨナの想い人であるのが、従弟のスウォン。小さい頃から一緒に過ごしていた3人は、今もなおカタチを変えながらも、変わらぬ固い絆で結ばれている…はずが、その平穏はある夜突然崩れさってしまいます。夜中、父親の元に話をしにいったヨナが見たものは、血を流し倒れている父と、その前で血に汚れた剣を持ち立っているスウォンの姿でした。

過去のことは回を追うごとに少しずつ明らかになっていく。元々はこんなにも仲が良かった3人。
スウォンの裏切り。そしてヨナはハクと共に城から逃げ出すのですが、果たしてどうなっていくのか…というお話。幼なじみ3人の絡まりあった悲しき運命と、それぞれの想いを、亡国の大河ファンタジーにのせて描いていきます。
なんとなくネタバレ分が多くなってしまった気がしますが、印象としてはまだまだ1巻では導入にすぎないという感じ。舞台を整え、これから描くべきそれぞれの想いと運命を描いていくのでしょう。心から信じていた者に裏切られたヒロインに、悲しき運命を背負って生まれたスウォン、そして平民でありながらもいつもヨナの側にいて、彼女を守り続けるハク。一筋縄ではいかないその関係の先にあるものとは。前作はラブコメでしたが、今回はガチンコのラブロマンスです。
歴史ファンタジーでラブロマンスという要素自体は、前作のポンペイの描写でもありました。それが今回ではメインになったわけですが、前作と比べるとややトーンダウンという印象が拭えないかも。というか前作の設定が本当に秀逸だったのだな、と再認識させられたというのが正しいのか。今回も余裕で及第点クラスなのですが、それでもコメディとラブロマンスを前世の記憶という部分で完璧に同居させてしまっていた前作は、やはり一味も二味も違ったわけで。
ちなみに中国っぽい舞台の歴史物、しかもお姫さまで…というシチュエーションは、結構な頻度で白泉社では登場するのですが、この作品に関してはシリアスで悲しみ成分多めと、よく見られるような作品とは一線を画すような印象。むしろ印象としては和泉かねよし先生の「女王の花」とか、そういう系統な感じ。そのあたりの味付けの上手さは健在です。これからどう落としていくのかは、スウォンの動き次第だと思うのですが、果たしてどうなるのでしょうか。イケメンだし個人的には応援したいのですが。
【男性へのガイド】
→恋愛要素強めも、部分部分では男キャラであるハク視点からの展開もあり、それなりの読みやすさは備わっていると思われます。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→前作が秀逸すぎたのですよ、しょうがないんですよ…。とはいえ大河系のラブロマンス好きにはうってつけすぎる本作。そういった話がお好きな方は、チェックしてみてくださいませ。
作品DATA
■著者:草凪みずほ
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:花とゆめ(平成21年17号~連載中)
■既刊1巻
■価格:400円+税
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