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Tag [続刊レビュー] 2010.01.21
作品紹介→ジョージ朝倉「溺れるナイフ」
関連作品レビュー→「ピース オブ ケイク」「テケテケ★ランデブー」



1102830293.jpgジョージ朝倉「溺れるナイフ」(9)


あーあ
沈めて
隠すって決めたのに
打ち上がっちゃってるって



■9巻発売です。
 キラキラと眩しくて、でも決して心を許してはいけないと思う、光。コウちゃんと付き合えて、世界を手に入れた気分だった。けれどそれは、「あの日」を境に変わってしまった。二人をこんなにも変えてしまった「あの日」に囚われながらも、大友に惹かれていく気持ちを自覚した夏芽。そんな「光」を前に、その思いを心の底にこっそりと沈めることに決めた夏芽だったが…


~大友派歓喜~
 よし、9巻で完結にしよう!というくらいに、大友大活躍。やはり彼は、そこいらの噛ませ犬とは違いましたよ。8巻で「ここあたりがピークか?」と思わせておきながら、9巻ではさらに見せ場を作ってくるあたり、大友派の私としてはたまらない展開でした。さてその辺は本編を読んでじっくり噛みしめてもらえばいいとして(そこを語ったら収集がつかなくなってしまう気がしたので今回はパス)、今回はこの作品がこの作品であるが所以についてとりとめもなく書こうかな、と思います。


~この年齢だから成立するものってのがある~
 タイトルの「溺れるナイフ」のナイフとは、10代の自意識のことを指していると作者のジョージ朝倉先生自身が語っており、10代の破裂寸前のこころと、むき出しの刃物のような青春の情景が描かれているところが大きな魅力となっています。とにかく全力で、0か100かというような、極端な心の動きが作中では見られるわけですが、それがとにかくスゴい。
例えば32話で夏芽は、「コウちゃんを無敵に戻して」と神様の奉られている場所に行き願うわけですが、そのとき…

溺れるナイフ
私の未来なんていらないから

 なんてことを思うのです。いや、私の未来なんていらないなんて、そりゃありえないんですが、でもそうなんですよ。こういった極端な発想を本気でしてしまえるのが10代の、しかも中学生ぐらいのときなんじゃないかなぁ、と。他にも夏芽は
 
「コウちゃんとつき合えて
 世界を手に入れた気分だったの」


 なんてことも言うわけですが、これも本気です、もちろん。これが歳を重ねた人間が言うと、嘘くさいか痛いかの2択になりますが、この歳だと成立するんですよね。この歳でないと成立しない物語を、有り余るほどに再現している、その凄さ。上に挙げたのなんてほんの一部の一部です。これよりもっとスゴいのが、全編にわたって転がっている。加えて田舎というある程度閉鎖された舞台設定も秀逸ですよね。10代特有のエネルギーを蓄積させ、さらに爆発させるのには、都会よりも田舎の方が向いていると思うのです。


~大友に関してもちょこっと書きますか~
 この頃は、恋人ができればそれだけでなんでもできるような気になったし、本当に世界を手に入れたかのような錯覚を覚えたりしましたし、逆に落ちるときは本当にこれ以上ないってくらい落ちるという両極端さを持ち合わせており、私自身も少なからずそういった感覚を経験した気がします。その感覚がこの話の場合、やや神格化された「コウちゃん」という存在によって誇張されているわけですが、その手前にある、より素朴な“私たちより”の感覚を伝えてくれるのが大友なのかな、と。彼はコウちゃんにくらべ、ヘタレっぽくてとても人間クサい。夏芽はそんな大友に対し「抱きてぇっ!」という感覚を覚えたり、守られるのではなく守るという発想をするのですが、この感情は相手がコウちゃんだったら出てこないような気がします。「大友だからこそできること」というものが、「あの日」以降頻繁に描かれるようになり、大友派としては嬉しい限り。「大友はちょっと…」と言ったコウちゃん派の友人たちは、きっと歯がゆい思いをしているに違いない。この大友バブルがどこまで続くかはわかりませんが、もう少し、もう少しだけ良い夢を見させてくださいな。
 
 なんかホントにまとまりのないレビューになってしまいましたね。次回はもうちょっとまとまった感じでおくれれば。。。頑張ります。 


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コメント

そうそう…そうなんですよね!
この作品の魅力、私全然うまく言い表せられないのですが、
ほんとまさにその通りだと思いました。
田舎だから、10代だからこそ成立するこの破壊力というか…

いづきさんは大友派でしたか!
私は友人の方たちと同じくコウちゃん派でした。
が…この巻でだいぶ大友に揺らぎつつ…(笑)
でも大友単体で見たらめちゃくちゃイイ男ですよねぇ。
ただあの位の年頃だとコウみたいなタイプは
すごく魅力的に映るのだろうなぁと思ったり。

それにしてもコウのあの危うげな色気は凄まじいと思いませんか?ww
お前いくつだ!とついツッコミそうに。
もういい年した私もうっかり惚れそうになりました。
From: ひろ * 2010/01/21 09:48 * URL * [Edit] *  top↑
レビュー待ってましたよ!!!
9巻良かったですね。大友派なのでにやにやしちゃいました。
花火大会の赤面はやばかった。可愛すぎです。
大友語ると止まらなくなりますね。
夏芽も大友も幸せそう。夏芽の笑顔が凄い可愛かったです。
ずっと太陽の下で笑いあっていて欲しい。でも今だけなんだろうなー。
コウちゃんの魅力が良くわかんないんで大友で良いじゃんと思ってしまいます。
コウちゃんは本音が全くみえない。何考えているか分かんないです。
カナちゃんが怖かった…
10巻も楽しみです。別フレ立ち読みしそうになりますがいつも我慢してます。
「溺れるナイフ」を読んでいる人が周りにいなくて悲しいです。






From: トラ * 2010/01/21 16:16 * URL * [Edit] *  top↑

>>ひろさん
私は大友派ですが、私の周りにいる女性は軒並みコウ派ですねー。
大友もここ数巻ではかなり男前なところを見せているんですが、やっぱりその前のコウちゃんが強烈すぎるのか、どうにも決まりきらない感じになっている気が…。まあそんな所が好きなんですけど(笑)

コウの魅力っていうのは他の誰にもないもので、しかも持って生まれたものという感じが強いんですよね。人間離れしたような色気や危うさを醸し出しており、女性たちが夢中になるのも納得です。けど男からすると、それはちょっと悔しいというか(笑)コウちゃんには努力しても近付けないですが、大友には少しは近付けそうな感覚があるんですよね。今度男友達に読ませてみて、どっち派か聞いてみたいと思います!


>>トラさん
おお、トラさんは大友派でしたか!
そう、大友はかわいいんですよね~
夏芽の「抱きたい」って気持ちがもの凄く納得出来る(笑)
大友がここまで魅力を発揮しているのは、コウちゃんがここ数巻でまったく動いていないからなのですが、さすがに次あたりからは動いてくるんじゃないでしょうかね。さすがにコウちゃん派の我慢が…

周りに読んでない人がいるなら薦めちゃえばいいんですよ!
どちら派なのか語ったりするの、結構楽しいですよヽ(*´ヮ`)ノ

From: いづき * 2010/01/21 21:43 * URL * [Edit] *  top↑

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