このエントリーをはてなブックマークに追加
2010.01.31
31730842.jpg由羅カイリ/雪乃紗衣「彩雲国物語」第1巻


秀麗どのの
お手並み拝見といこうではないか



■5巻発売しました。
 「彩雲国」の名家・紅家に生まれ育った紅秀麗は、国でも一・二を争う名家の育ちであるにも関わらず、家系は火の車で日々バイトに大奮闘。屋敷はボロボロ、家臣は静蘭一人だけと、楽しいながらも決して楽な生活ではない毎日を送っていた。そんな所に舞い込んだ、とっても美味しい仕事の話。金五百両で、“若きダメ王様”の教育係になって欲しいとのこと。家の財政難っぷりを考え、すぐさまその仕事に飛びついた秀麗だったけど、期間中は貴妃として入れと言われ…!?

 人気小説のコミカライズ作品でございます。舞台となるのは、中国を思わせる彩雲国という国。モデルは唐らしいですね。先代王の死後、跡目争いを経て後継者が決定したという時期。ヒロインとなる秀麗は、国でも一・ニを争う名家の娘でありながら、跡継ぎ争いの煽りを受けて家は困窮。今では父と家臣一人と三人で生活しており、秀麗も日々バイトに明け暮れる毎日を送っていました。そんなところに舞い込んだ、“若きダメ王様”の教育係になって欲しいという依頼。金五百両という大金を提示されたことから、秀麗はすぐに承諾するのですが、条件が一つ。それは教育係ではなく、名目上は貴妃として後宮に入って欲しいということ。それを呑みいざ後宮へ向かうのですが、王様がなかなか食えない相手。噂どおり、政治には興味がなく、男色の気ありではあるものの、それはどうやら演じているらしく、その真意は見えません。その眠ったやる気を、秀麗をはじめ周りの人間たちが動かしていくことになるのですが…というところが導入になります。


彩雲国
意志の強い真っ直ぐなヒロインであるので、個性的で優秀な男たちの中に女一人でも負けることがない。良いヒロインです。


 そこからスタートし、ゆくゆくは秀麗が官吏を目指していくというお話になっていきます。お話の開始当初は、官吏の登用試験は男性しか受験できないという決まりがあり、その道のりはなかなかに厳しいものがありますが、導入にて王様はじめ王宮の人間たちと親交を深めていることもあり、しっかりとそれが効いてきます。この辺のストーリー設計はさすがというところ。王宮が舞台ではありますが、国全体を巻き込んで…というような壮大な大河ドラマが展開されることはほとんどなく、それなりにこじんまりしているという印象。ただ地理スケール的な小ささは、内部構造をやや複雑にすることでカバー。しっかりと伏線を用意して、読み手を飽きさせません。
  
 書評を見ると、原作にかなり忠実に物語が描かれているみたいですね。原作未読の私でも、世界観を始めキャラクターの出自など、すんなり理解することができました。全体的に丁寧に描かれているので、読み手に非常に優しいと思います。ただ多数の眉目秀麗な男たちが、ヒロインを取り巻いており、ビジュアルおよび名前(中国語っぽい感じ)で区別を付けることが若干難しかったりするかもしれません(私か)。


【男性へのガイド】
→読みにくくはないでしょうが、好んで読むような類いの作品ではないかと。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→安定感は抜群。全体的に丁寧に描かれているので、非常に読みやすいですが、そのぶんインパクトには乏しいかも。ってそういうのを求める作品ではないんですけどね。


作品DATA
■著者:由羅カイリ/雪乃紗衣
■出版社:角川書店
■レーベル:ASUKA DX コミックス
■掲載誌:ビーンズエース(2005年vol.1~連載中)
■既刊5巻

■購入する→Amazonbk1

カテゴリ「ビーンズエース」コメント (0)トラックバック(0)TOP▲
コメント


管理者にだけ表示を許可する

この記事にトラックバック
検索フォーム
最新記事
カテゴリ
タグカテゴリ
月別アーカイブ
リンク
プロフィール

Author:いづき
20代男、Macユーザー。野球はヤクルト、NBAはマジックが好きです。

文章のご依頼など、大事なお話は下記メールアドレスへお願い致します。


■Twitter
@k_iduki

■Mail
k.iduki1791@gmail.com
※クリックでメール作成
RSSフィード
▽最新記事のRSSを購読

a_m.jpg
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Power Push
2012年オススメはコチラ→2012年オススメ作品集


かくかくしかじか
東村アキコ「かくかくしかじか」(1)
レビュー
東村アキコ先生が贈る、美大受験期の自伝漫画。東村アキコ作品らしい勢いの良さだけでなく、急転してのシリアスな締めなど、一冊に笑いと感動が詰め込まれた贅沢な作品。




王国の子
びっけ「王国の子」(1)
レビュー
稀代のストーリーテラー・びっけ先生が描く“影武者”もの。王位継承権を持つ王女の影武者に、町の芝居小屋で役者をしていた少年が選ばれるというストーリー。良く練られた背景を説明するために、1巻まるまる使うような、重みと読み応えのある一作。




シリウスと繭
小森羊仔「シリウスと繭」(1)
レビュー
2012年で一番の掘り出し物。独特の絵柄で描き出すのは、どこにでもあるような高校生の恋愛模様。けれどもそんなありふれた感情を、ゆっくりと丁寧に描くことで、なんともいえない味わい深さが生まれています。出会いから仲良くなる過程、そして恋を自覚し、葛藤する様子まで、その全てが瑞々しさに溢れていて、なんとも愛おしい。




トーチソング・エコロジー
いくえみ綾「トーチソング・エコロジー」(1)
レビュー
売れない役者が、役者仲間を亡くしたと思ったら、お次は隣に高校の同級生が越してきて、さらには何やら自分にしか見えない子どもの姿が見えるように…。どこかゆるさのある不思議なテイストのお話なのですが、いくえみ作品で実績のある「ある者の死と、残された者の感情」を描き出す類いの作品ということで、この先きっと面白くなってくることでしょう。




BEARBEAR
池ジュン子「BEAR BEAR」(1)
レビュー
高校生には到底見えないロリっ子ヒロインが好きになったのは、遊園地のクマの着ぐるみ。着ぐるみの中身は同じ学校の子で、結局付き合うことになるものの、その後も変わらず相手はクマの被り物をしているという、シュールな光景が繰り広げられます。なんとも奇妙な相手役、かつなんともかわいらしいヒロインの、初々しいやりとりに終始ニヤニヤ。




かみのすまうところ。
有永イネ「かみのすまうところ。」(1)
レビュー
期待の若手作家・有永イネ先生の初オリジナル連載作は、宮大工の世界をファンタジックに、そしてファンシーに描いた青春ストーリー。宮大工という伝統ある重厚な世界を、美少女な神様をはじめ、これでもかとポップに描き出します。かといってシリアスさがないわけではなく、コミカルとシリアスが丁度良いバランスで推移。まだ1巻のみですが、これから先の展開を大きく期待させてくれる作品です。