
誰かを好きになると
心が温かくなる
■高校時代、派手で目立つタイプだった絵美。しかし今は着飾ることをやめてしまった。そんな彼女とは対照的に、地味で目立たない存在だった綾花は、今では見違えるようにキレイになり、男性関係も華やかになった。同級生だったふたりの道を違えたものは、高校時代のとある事件。今もそのことが、お互いの心に暗い影を落としている。それから数年、もう会うことはないだろうと思っていた二人を再び巡り会わせたのは、ひだまりのように優しく温かい男
ちょっと帯ネタバレしすぎのような気も。ということで「おひさまのはぐ」のご紹介です。発売は昨年末なのですが、今さらながら買って読んだので、このタイミングでのレビューを。一応発売から1か月ぐらいなので、新作レビューということにしていおきます。
ヒロインは、保育園で働く女性、武岡絵美27歳。化粧っけのない彼女は当たり前にように独り身で、一人暮らしもすっかり板についたという感じ。そんな彼女の前に、ある日不思議な男が現れます。出会いは自分の家。朝っぱらから家のドアを叩く音がするので出てみると、そこにはパンツ一丁のイケメンが。話を聞くと、なにやら酔って女の子の家に行って、目覚めたら身ぐるみ全部はがされていたらしい。仕方がないのでお金と服を貸し、もうこれで会うことはないだろうと思っていたら、町でまさかの再会。イケメンで軽そうな雰囲気に加え、クレープ屋でバイトをする住職というわけの分からない肩書きの持ち主の彼・祐誠と、なんやかんやでその後も会うことになります。やがてその再会が、彼女の思わぬ心の傷を呼び覚ます契機となっていくのですが…という流れ。

クレープ屋の住職ゆえにこんなシーンも。住職と言えどまだ正式にあとを継いでいるわけではなく、フリーターのような状態。住職らしくない非常に適当な人付き合いをするが、住職らしく非常に懐は広く優しいというから困ったもの。
あらまし紹介で書いている通り、もう一人の女性がこの物語では重要な役割を果たします。それがヒロイン・絵美の高校時代の同級生・綾花。高校時代華やかな見ためでモテていたにもかかわらず、今は化粧っけゼロで男もいないヒロインとは対照的に、高校時代地味で目立たなかった彼女は、今ではすっかりキレイになり、男性関係も華やかになっていました。この二人をここまで変化させたのは、高校時代のとある事件がきっかけ。以来口をきくこともなく、離ればなれになっていた二人を、数年ぶりに祐誠が引き合わせます。描かれるのは、過去の出来事の清算。心の整理という部分が大きいのでしょうか。当事者だけでは受けとめきれない想いというものがあるわけですが、祐誠は不器用ながらも、その負担を減らしてあげられるよう努力します。
メインで描かれるのはもちろんヒロインなのですが、この作品の肝はむしろ対照的な存在として描かれる綾花のほうにあるような気もします。このストーリーでヒロインだけが描かれていたら、そこまで心惹かれることはなかったかもしれません。このいつまでも報われない、自身は悪くないのに何かにつけて損をしがちな存在が物語に登場すると、個人的にはどうしても目が行ってしまうんですよね。最近だと例えば「僕等がいた」(→レビュー)の山本さんであるとか、「潔く柔く」(→レビュー)の朝美のような。綾花の場合は明確な原因があるのですが、やはり醸し出す雰囲気は似ていて、そんな彼女へのささやかな救いが提示さたシーンはやけにジーンときてしまいました。もちろんヒロインの再生の過程も良いのですが、個人的にはこちらが好きだった。
【男性へのガイド】
→女性のためのお話かな。私も良かったと言っても断片的な共感にしかすぎないような気もするし。
【私的お薦め度:☆☆☆☆ 】
→綾花ポイントでおすすめに。この設定ならそりゃそれなりに面白い話にははるわけですが、それを考慮して「ダメ」とか言ったら元も子もないわけで。素直に良いと思いました。
作品DATA
■著者:天堂きりん
■出版社:芳文社
■レーベル:フィールコミックス
■掲載誌:フィールヤング(2008年12月号~2009年7月)
■全1巻
■価格:933円+税
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