作品紹介は→*新作レビュー*久米田夏緒「ボクラノキセキ」
久米田夏緒「ボクラノキセキ」(2)
俺の居場所
もういっこ
前世の記憶を共有できる仲間
両方手に入れるのは
無理?
■2巻発売です。
王女・ベロニカの前世の記憶を持つ皆見晴澄は、高校生活を共に過ごすクラスメイトの中に同じ時代の記憶を持つ者がいることを知る。きっかけは、晴澄の書いたノート。そのノートを目にした者たちが、次々と記憶を取り戻していく。単なる“思い出話”ではすまない記憶に振り回されながら、やがて晴澄たちは大きな混乱に包まれていく。。。
~中二病感全開。しかしだからこそ面白い~
第1巻をレビューしたのが昨年の2月ですから、ほぼ1年ぶりの新刊ということになりますね。なんとなく1巻の内容を覚えていなかったので、読み直して2巻まで通して読んだのですが、やっぱり面白いです。前世の記憶を引き継ぎながら、現世でも魔法を使い、前世の記憶と現世の意思の間で戸惑い葛藤するという様は、まさに中二病のアレ。これを読んでると、中二病ってホントにあったらもの凄く楽しいんだろうな、と。自分は特別であるという感覚と、その秘密を共有している仲間と、そして敵がいる。そんなシチュエーションに燃えない人なんて、いないですよ。
~前世の記憶を持つ者の広がりから、心理戦へ~
さて、1巻では周囲の人間が徐々に記憶を取り戻しはじめたところで切れましたが、2巻ではその記憶の回復がかなり拡大します。クラスメイトをはじめ、学校の生徒の多くが記憶を取り戻しはじめ、軽く動乱が起こるという事態に。というのも、前世の記憶を持つ人々は1国ではなく、ゼレストリアとモースヴィーグという敵対していた2国のどちらかに所属しており、お互いに怒りや敵対心を強く抱いたまま生まれかわったため、このような事態になってしまったのでした。また晴澄のように徐々に記憶を取り戻していったのではなく、急激に記憶の回復が訪れたため、そちらの感情に一気に支配される傾向が強くなってしまったのでした。そうなると危ないのが、晴澄の身。前世で王女という立場にあった彼は、当然のことながら敵から真っ先に狙われてしまいます。そのことを感知した晴澄は、恋人である高尾と、事情を知った御堂以外には自分の正体を隠し、事を穏便に解決しようと画策します。

高尾の機転により、晴澄の正体はすぐには明かさないようにする。高尾さんかわいいよ、高尾さん。この作品は、闘う女性キャラや気の強い女性キャラが多いのところが、個人的にポイント高いです。
~前世の記憶と現世の記憶~
焦点となるのは、現世の状況をいかに保持しながら、前世の想いに決着をつけるかということ。どちらも取れれば良いですが、異なる人格の記憶として刷り込まれている以上、なかなか両立するのは難しいです。ましてや晴澄意外は、急激な記憶回復によって、どちらかというと前世の記憶に強く支配されるようになっており、そうそう話が通じる状況でもありません。せっかく高尾さんと恋人になったのに、高尾さんはかつてベロニカの護衛だったこともあり、記憶を回復して以降は常に下から敬語で接するという関係に。同じ記憶を共有する仲間ができた喜びと同時に、それまでに築き上げてきたものが崩れさっていく悲しさを、晴澄は感じるのですが、果たしてどういった落としどころになるのでしょうか。ポイントとなりそうなのは、いまのところ前世の記憶は持っていない、中学からの友達・上岡さん。というか1巻からの流れ的に、晴澄は高尾さんとつき合うってのはどう考えても不自然だったわけで。じゃあ上岡さんどうするんじゃいという違和感を抱えたまま終わったわけですが、2巻ではその糸口になりそうな設定が登場。うーん、これは楽しみです。

晴澄以上に周囲の人間の戸惑いは大きい。記憶を持つ者同士が一緒にいると、どうしてもそちらの記憶に支配されがちになってしまう。
~3巻へ向けて~
2巻ではかなり風呂敷を広げてしまった感じもあるのですが、どうやってたたんでいくのでしょうか。なんて晴澄は王女なので、全てを掌握する力はあるのですけど。とはいえしばらくは正体隠しつつの頭脳戦・心理戦を楽しみたかったり。また現世より前世の記憶に支配されがちっていうのは、殺されたという死に関連する感情ってのが多分に含まれているからなのかな、と。私たちは決して持つことのない感覚を、彼らは持っているわけで、その衝撃というのはやはりとても大きいのでしょう。脇役たちが個性を発揮してきたところで、3巻へ突入と、またしても先が楽しみな終わり方。さてさて、3巻が出るのはいつになるのやら…。
■購入する→Amazon
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bk1

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前世の記憶を共有できる仲間
両方手に入れるのは
無理?
■2巻発売です。
王女・ベロニカの前世の記憶を持つ皆見晴澄は、高校生活を共に過ごすクラスメイトの中に同じ時代の記憶を持つ者がいることを知る。きっかけは、晴澄の書いたノート。そのノートを目にした者たちが、次々と記憶を取り戻していく。単なる“思い出話”ではすまない記憶に振り回されながら、やがて晴澄たちは大きな混乱に包まれていく。。。
~中二病感全開。しかしだからこそ面白い~
第1巻をレビューしたのが昨年の2月ですから、ほぼ1年ぶりの新刊ということになりますね。なんとなく1巻の内容を覚えていなかったので、読み直して2巻まで通して読んだのですが、やっぱり面白いです。前世の記憶を引き継ぎながら、現世でも魔法を使い、前世の記憶と現世の意思の間で戸惑い葛藤するという様は、まさに中二病のアレ。これを読んでると、中二病ってホントにあったらもの凄く楽しいんだろうな、と。自分は特別であるという感覚と、その秘密を共有している仲間と、そして敵がいる。そんなシチュエーションに燃えない人なんて、いないですよ。
~前世の記憶を持つ者の広がりから、心理戦へ~
さて、1巻では周囲の人間が徐々に記憶を取り戻しはじめたところで切れましたが、2巻ではその記憶の回復がかなり拡大します。クラスメイトをはじめ、学校の生徒の多くが記憶を取り戻しはじめ、軽く動乱が起こるという事態に。というのも、前世の記憶を持つ人々は1国ではなく、ゼレストリアとモースヴィーグという敵対していた2国のどちらかに所属しており、お互いに怒りや敵対心を強く抱いたまま生まれかわったため、このような事態になってしまったのでした。また晴澄のように徐々に記憶を取り戻していったのではなく、急激に記憶の回復が訪れたため、そちらの感情に一気に支配される傾向が強くなってしまったのでした。そうなると危ないのが、晴澄の身。前世で王女という立場にあった彼は、当然のことながら敵から真っ先に狙われてしまいます。そのことを感知した晴澄は、恋人である高尾と、事情を知った御堂以外には自分の正体を隠し、事を穏便に解決しようと画策します。

高尾の機転により、晴澄の正体はすぐには明かさないようにする。高尾さんかわいいよ、高尾さん。この作品は、闘う女性キャラや気の強い女性キャラが多いのところが、個人的にポイント高いです。
~前世の記憶と現世の記憶~
焦点となるのは、現世の状況をいかに保持しながら、前世の想いに決着をつけるかということ。どちらも取れれば良いですが、異なる人格の記憶として刷り込まれている以上、なかなか両立するのは難しいです。ましてや晴澄意外は、急激な記憶回復によって、どちらかというと前世の記憶に強く支配されるようになっており、そうそう話が通じる状況でもありません。せっかく高尾さんと恋人になったのに、高尾さんはかつてベロニカの護衛だったこともあり、記憶を回復して以降は常に下から敬語で接するという関係に。同じ記憶を共有する仲間ができた喜びと同時に、それまでに築き上げてきたものが崩れさっていく悲しさを、晴澄は感じるのですが、果たしてどういった落としどころになるのでしょうか。ポイントとなりそうなのは、いまのところ前世の記憶は持っていない、中学からの友達・上岡さん。というか1巻からの流れ的に、晴澄は高尾さんとつき合うってのはどう考えても不自然だったわけで。じゃあ上岡さんどうするんじゃいという違和感を抱えたまま終わったわけですが、2巻ではその糸口になりそうな設定が登場。うーん、これは楽しみです。

晴澄以上に周囲の人間の戸惑いは大きい。記憶を持つ者同士が一緒にいると、どうしてもそちらの記憶に支配されがちになってしまう。
~3巻へ向けて~
2巻ではかなり風呂敷を広げてしまった感じもあるのですが、どうやってたたんでいくのでしょうか。なんて晴澄は王女なので、全てを掌握する力はあるのですけど。とはいえしばらくは正体隠しつつの頭脳戦・心理戦を楽しみたかったり。また現世より前世の記憶に支配されがちっていうのは、殺されたという死に関連する感情ってのが多分に含まれているからなのかな、と。私たちは決して持つことのない感覚を、彼らは持っているわけで、その衝撃というのはやはりとても大きいのでしょう。脇役たちが個性を発揮してきたところで、3巻へ突入と、またしても先が楽しみな終わり方。さてさて、3巻が出るのはいつになるのやら…。
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