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Tag [新作レビュー] 2010.02.07
1102874199.jpg豊田悠「野ばらの花嫁」


誰に何と言われようと
俺は彼女を守る
そのためなら
どんな茨の道もいとわない



■山田千鶴は、警戒心のちょっと強い、ごくごく普通の女子高生…だったはずが、小説家の母が一億の借金を作ってトンズラ。一人残された千鶴が、その借金を背負うハメになってしまったのだった。取り立てに追われ人生終了の危機!!そんなピンチを救ったのが、同じクラスの目立たない男子・久世光流。学校では大人しそうにしておきながら、その実有力なヤクザ梅垣組の三代目。千鶴の負債を梅垣組が買い取る代わりに、千鶴に縁談を断る口実として許嫁になってもらいたいと言うのだった。背に腹はかえられない千鶴は、即答でOK。彼の許嫁として暮らすことになったのだけど…!?

 豊口悠先生の初コミックスだそうです。おめでとうございます。ヤクザの跡取りの元にお嫁に行かされた女子高生のお話。ヒロインは、少し警戒心が強い以外はごくごく普通の女子高生・山田千鶴。学校では、クールで仕事ができるけど可愛げがないと言われています。そんな彼女の母は、自由な性格の小説家。ある日友人の連帯保証で一億の借金を背負わされトンズラ。その借金を千鶴が全て背負うことになります。取り立てに追われ、人生終了!?という所に颯爽と現れたのは、クラスでも目立たない存在の男子・久世光流。なんと彼、有力な梅垣組の三代目で、千鶴の背負った借金を買い取ると言うのでした。なんとかピンチを脱したものの、そう美味しい話があるはずもありません。救ったからには当然見返りが必要です。光流が出した条件は、高校を卒業するまで3年間でいいから、自分の許嫁として生活して欲しいというものでした。助けられてしまった以上逃げることはできません。千鶴はその日から、極道の三代目の許嫁として、彼の家で暮らすようになります。


野ばらの花嫁
わざわざ千鶴を助けるのにはもちろん理由がある。景明はずっと千鶴のことを想っていた。


 家では光流が主導権を握っていますが、学校では千鶴の方が頼りになる存在。というのも、光流は普段は努めて地味な存在として振る舞い、極道の匂いを極力消して生活しているのでした。そんな普段と学校での、ON/OFFの切り替えを楽しめるのが一つの見所。またストーリーは、許嫁としての千鶴の存在を良く思わない周りの人間が、彼女を狙いピンチに陥るというのが定番パターン。そのピンチを光流が救い、ヒロインは身も心も救われるという。ヒロインは母親に裏切られたということから、極端に他人を信用しなくなっています。そんな彼女を、金で買いながらも優しく気遣ってくれる光流を、信用してもいいのかどうか、ヒロインの心情はその一点に集中して描かれます。
 
 コメディとロマンスがバランス良くミックスされている印象。初コミックスですが、やはり白泉社らしくもの凄くクオリティは高いですね。絵も好みです。ただ話はやや個性に欠けたような印象も。極道ものというのは結構描かれる話なのですが、この作品ならではという部分を探そうとすると、どうだろう。ヒロインは意志が強い子で、動かし方次第では結構な活躍を見せてくれそうだったのですが、いつも捕まってしまって身動きができず、受け身パターンに。その分光流のヒーローっぷりに拍車がかかっているとはいえ、どちらも動かせば輝きそうだっただけに、ちょっとこの役回りはもったいなかったような。それでもロマンスという意味ではこちらで十分なのか。個人的にはもっと違ったパターンも見てみたかったですねー。
 

【男性へのガイド】
→ラブロマンスとしての要素がやや強め。とはいえコメディもしっかりあるので、読みにくいということはないです。
【私的お薦め度:☆☆☆  】
→初コミックスですが高い安定感。絵も好みで読みやすくわかりやすいストーリーでしたが、ちょっと個性に欠けた印象も。また違った話を読んでみたいですね。


作品DATA
■著者:豊田悠
■出版社:白泉社
■レーベル:花とゆめCOMICS
■掲載誌:LaLa(平成20年増刊10月号,平成21年4月号,増刊8月号),LaLaDX(平成21年11月号)
■全1巻
■価格:400円+税

■購入する→Amazonbk1

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