
この人のことを
好きになっちゃいけないって誓ったのに
ごめんなさい
もうとっくに手遅れです
■読切り4編を収録。それでは表題作をご紹介。
家のお風呂が壊れてしまい、最近は兄と銭湯通いをしている。ナルシストな兄は、女の人より長くお風呂で、いつも私は待たされます。でも待つのはキライじゃない。その状況が、なんとなく「神田川」に似ているから。そしてもうひとつ、いつもいる、あの男の子に会えるから。名前も知らないその子とは、名前も知らないし声も交わしたこともない。けれどもちょっと気になる存在。そんな彼と、ある日学校で思わぬ再会を果たします。しかも、大事な親友の好きな人という紹介のされ方で…
タアモ先生の、ほろ苦くて切ない恋を集めた珠玉の短編集でございます。銭湯で会う男の子が気になるも、その子は大事な親友の好きな人で、思い悩む少女を描いた表題作をはじめ、甘くて苦い恋愛に特化したストーリーが4編収録されています。それぞれのストーリーを少しずつ紹介しましょう。
「きらぼしのダンス」…失恋後向かったプラネタリウムで、自分のことを慰めてきたのは学校のモテキャラの男の子。けれど話をすると、学校での様子とは全然違う、意外に純情なヘタレキャラで!?
「サンタのキス」…クリスマスケーキ売りのバイトに励む少年が出会ったのは、自分のことをサンタだと信じる箱入りのお嬢様。「サンタさん、私のことさらってください!!」との彼女の一言に、彼は…!?
「オレンジの街」…中学の時好きだった男の子から届いた、結婚式の招待状。今の彼との生活に、不満がないワケではないけれど…。
「サンタのキス」…クリスマスケーキ売りのバイトに励む少年が出会ったのは、自分のことをサンタだと信じる箱入りのお嬢様。「サンタさん、私のことさらってください!!」との彼女の一言に、彼は…!?
「オレンジの街」…中学の時好きだった男の子から届いた、結婚式の招待状。今の彼との生活に、不満がないワケではないけれど…。

溢れ出る想い。描き出すのは、私たちの中にもあるようなごくごく素朴な感情。
4編収録ということで、それぞれのお話はやや長め。よって余裕を持って話を動かすことができ、甘さだけでなく苦さや切なさもしっかり描き出すことに成功しています。そうして苦みや切なさを組み込むと、反動で甘さは余計に増しますから、タアモ先生の持ち味であるふわふわの甘さを存分に堪能することができるという。それに加え、ヒロインたちの性格も素直で曲がったところがなく(あったとしてもせいぜい「意地っ張り」で済ませられるレベル)、非常にかわいらしく、ストーリーの切なさと甘さを際立たせるのに一役買っている印象。多分他のタアモ作品のなかでも、抜けて甘いんじゃないでしょうか。
設定やストーリーはちょっと変わったものが多いですが、描き出す感情は非常に素朴なもの。そのアンバランスさを楽しめるのが、タアモ先生の良きところだと思うのですが、今作もどれも非日常的なシチュエーションの中で話が展開されます。家の外、学校の外が舞台の中心になっているんですよね。銭湯とか、プラネタリウムとか、あまり馴染みのない場所がモチーフとして使われるのですが、それがなんともいえないトクベツ感を醸し出しているように思えたり。あ、男の子視点なのは「サンタのキス」のみ。個人的には表題作と、「オレンジの街」がお気に入りです。こういう今あるものを改めて、“愛おしい”と思える気持ちって、いいですよね。甘さとは違う、ほっこり温かい気持ちになれるようなお話です。ああ、だから「いっしょにおf(ry
【男性へのガイド】
→かわいいお話がお好きな方は。甘さ際立つストーリーとなっております。どちら一方が幸せにするのではなく、一緒に幸せになる感じが丁寧に描かれているので、女の子視点でも男性が得する感はアリ。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→4つと迷ったけど、好きなので。いいじゃないか、甘さで5つでも。このぐらいの長さが、タアモ先生は丁度良いのかもしれない。
■作者他作品レビュー
タアモ「お願い、せんせい」
タアモ「初恋ロケット」
タアモ「吾輩は嫁である。」
タアモ「ライフル少女」
タアモ「あのこと ぼくのいえ」
タアモ「少女のメランコリー」
タアモ「恋月夜のひめごと」
作品DATA
■著者:タアモ
■出版社:小学館
■レーベル:ベツコミフラワーコミックス
■掲載誌:デラックスベツコミ(2006年6月5日号,10月5日号,12月5日号),ベツコミ(2006年12月号)
■全1巻
■価格:390円+税
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