
みつけてごらん
ふしぎはすぐそこに
■2巻発売、完結しました。
美しい森に囲まれたここは、クラシカルな寄宿学校。学校のある辺りは、人里離れた山の中。昔から妖精だの精霊だのの伝承が多い場所で、学校は神秘な湖に守られるように佇んでいる。ここに来て間もないトゥリに、オカルト好きのヤン、ちょっと変わった体質を持つラウム、そして落ち着き払ったカレル。少年少女はこの学校で、少し不思議なことを体験する
ちょっと前に完結していたのですが、レビューしていなかったのでご紹介。とある山奥にあるクラシカルな寄宿学校を舞台におくる、少年少女たちの不思議体験記でございます。主人公はよくわかりません。一応はちょっと変わった体質の持ち主であるラウムがそうなのかな。ここに移ってきて間もないトゥリに、オカルト好きのヤン、マイペースの変わり者カレルの、仲良し4人組を中心に、この学校で起こる少し不思議な出来事を、舞台の空気感をそのまま伝えるように、幻想的に描いていきます。

中心となる男の子4人組。変わった力を持つラウムは、そういった力を持っているがゆえにこういった物事に積極的でない。しかし基本的に巻き込まれやすい人間揃いなので、イベントはほぼ不可避。
舞台となる学校は、人里離れた山奥にあり、妖精や精霊がいるとされる湖の近くにあります。そのせいか、学校でもしばしば不思議な出来事が起こります。そんな出来事に対して、積極的に首を突っ込みたがるのが、オカルト好きのヤン。また他の3人も、何かにつけて不思議な出来事に巻き込まれていくことに。そんな中、ちょっとした力を発揮するのがラウム。彼は周りの空気や他人の想いに同調してしまい、その心の内が見えたりしてしまうという、不思議な体質の持ち主。不可思議な出来事の核心へ迫る役目は、往々にして彼が担うことになります。
不思議な出来事というのは、例えば猫が人間になったり、想いが具現化したりと、何かしらの形になって現れることが多いです。人間の形をしているから最初は気がつかないものの、あくまでそれらは「異質な存在」ですから、少しずつ「ズレ」が生じてきます。そこから主人公たちは、事の真相に迫っていくのですが、その全貌が明かされることはありません。基本的にはぶつ切りラスト。「不思議なこと」の真相のヒントはわかりやすく提示されるものの、答えが出されることはありません。これはそうすることで意図的に、物語の持つ幻想的な雰囲気を助長し、さらにラストを明確にしないことで読者の中に余韻を生むようにさせているのでしょう。感受性豊か、想像力に溢れるような人はより楽しめると言うような感じ。物語の核になる部分は、暗かったり寂しかったりする要素ではあるものの、最終的には名言はせずとも明るい形、救いを提示する形で終わるので、読み心地は非常に良いです。
【男性へのガイド】
→雰囲気系で、かつファンタジックなものがお好きな方は。男性でも基本的には大丈夫かと。
【私的お薦め度:☆☆☆ 】
→こういうスタイルは、万人には受けなくとも、しっかり支持してくれる人も確実にいそう。個人的にも、これから注目してみたい漫画家さんですね。親切な作りではないですが、雰囲気の良さが際立っていました。
作品DATA
■著者:榧世シキ
■出版社:一迅社
■レーベル:CERO-SUMコミックス
■掲載誌:WARD
■全2巻
■価格:各552円+税
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