
木とか岩とか花とか 動物
それからいろいろな神様も
私たち人間と一緒にここに存在してるのに
ときどき
そういう当たり前のことが見えなくなってしまう
それが悲しかった
■中学の時から突然、みんなには見えないものが見えるようになった立花棗。それは“神様”と言われるもので、その小さな神様たちは、神棚や古い家、祠や小物から姿を現し棗に語りかけてきた。そうなってから、気がつけば3年。新入生の棗は、高校の入学式に向かうその途中で、高校の隣にある神社の息子・藤島須佐に出会う。お互いに、神様に近いところに立っている二人は、なぜか導かれるように地域の祟りなどを調べている「地歴部」に入部することに。変わり者の部員と変わり者の神様に囲まれながら始まった、棗の高校生活やいかに!?
八百万の神様たちと、私たちをつなぐ物語。ええ、私こういう神様系統の話に極端に弱いんですよ。ということで、「ありをりはべり」のご紹介です。ヒロインは、中学になって突然神様が見えるようになった女の子・棗。そのことは祖父のみにしか伝えておらず、周囲の人には秘密にしています。そんな彼女が、高校の入学式に行く途中に、一人の男の子に出会います。藤島須佐くんという名前のその彼は、棗と同じクラスで、学校の隣にある神社の息子。過去に神様が見えていたらしい彼は、とある出来事がきっかけで神様が見えなくなり、以来そのことをずっと気にしてきたのでした。やがて導かれるように、地域の神様などについて調べる「地歴部」に入部した二人は、姿を現す神様たちのお話を聞きながら、少しずつ成長していくのでした。

神様との「対話」が大切で、そこをメインに描かれる。神という大きな存在と、擦れていないヒロインの会話は、それだけで不思議と癒されてしまうといいますか。
説明してもし足りないけれど、説明しなくても全然大丈夫な気もする、不思議な感じでございます。とりあえず、ヒロインには神様が見えて、須佐くんは神様が見たいけど見えないということはおわかりになったかと。基本的にはそんな二人の、神様を交えた日常物語なのですが、まわりの状況も説明しておきましょう。まずは活動のメインとなるのは、学校の地歴部。変わり者の部長に、礼法の先生の娘でやけに礼儀正しい普門寺先輩など、個性派揃いの地歴部の部室には、なぜか神棚があり白蛇の神様が。かつて部室があった場所に立っていた木に宿っていた神様で、行き場を失っていたところを棗と須佐に助けられたという経緯の持ち主なのですが、以来部室に作られた神棚に住み着き、棗を話し相手に任命し一緒に過ごしているのでした。また棗と須佐が地歴部に入ったきっかけも、この白蛇の神様の一件で、いってみれば3人は同期のお仲間。なんとなく「夏目友人帳」(→レビュー)の夏目とニャンコ先生みたいな感じにも見えなくもないですが、こちらのほうがよりファンシー。そこに加えて、須佐の神社に住み着く神様も登場し、話は進んでいきます。
基本的には読切りっぽく、大きなストーリーを感じさせるわけでもなく、ただただ雰囲気の良さを享受するような作品になっています。一応神様の過去や、須佐が神様見れないことでのストーリー展開はあるのですが、それでもそれ一本で引っぱれる程強いものではなく、あくまで何かと一緒に進めてこそという感じも。とりあえずは雰囲気の良さが売りなのですが、それがとにかく好き。個人的にドツボです。優しいとか、懐かしいとか、それだけじゃない、独特の空気感がたまらないんです。神様がいるという非日常感に、これとって事件の起きない日常感が不思議に混ざりあい、さらに悪意のまったくない優しく素直な感情が、それを包みこむ。これは言い過ぎかも知れませんが、ジブリ作品を見ているかのような安心感が得られたような気がしたのでした。いや、そのぶんものすごく地味なんですけどね。私地味なの好きなんで、ハイ。
【男性へのガイド】
→非日常と日常が緩く混ざりあうような作品がお好きな方は。地味耐性あるのならオススメ致します。
【私的お薦め度:☆☆☆☆☆】
→ここまでお薦めするような作品ではないのかもしれませんが、好きだったんだから良いでしょ!!と開き直り。とっても温かい気持ちになれる作品でした。表紙にピンときたら絶対に買うべし。
作品DATA
■著者:日向なつお
■出版社:講談社
■レーベル:KCKISS
■掲載誌:KISS(2009年No.13~連載中)
■既刊1巻
■価格:419円+税
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